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第4話『リフレッシュ』

更新したつもりになってたら忘れてました。


我ながら何やってんだか……(-ω-)

〈表世界〉までわざわざきて、行き先が結局、将真が提案したレジャーランドはあまり人気がなく、とりあえず街をぶらつくという結果に落ち着いた。


「別にいいけど、こういう時ってもっと遊園地とかそういうところに行くもんじゃないの?」

「その時の気分っすよ」

「それにほら、人が多いだろ?」


確かに、響弥の言う通りだ。

今の時期はゴールデンウィークのせいで、そういう場所は当然のように人でごった返している。

〈裏世界〉で暮らす彼らにとっては、どこで遊ぶにしても新鮮味があるので、わざわざそんな場所へ好き好んで行くよりは、自分たちのペースで好きなように回る方が楽しめるようだった。


とはいえゲーセン程度なら〈裏世界〉にもあるので、流石にそんなことをして遊ぶ訳では無い。


「私としては、体動かすことしたいんだけどなぁ」

「わざわざ〈表世界〉きてそんな事しなくてもよくない?」

「むしろ〈表世界〉に来たから、気楽に運動を楽しめるんじゃない」


静音の疑問ももっともだったが、杏果の言うこともわからないではない。魔導師にとって、運動とは言わず、鍛錬になってしまう。

個人差はあれど、ストイックに強さを追い求めるそれは、運動とは違って楽しいと言うほどのことではない。


そうなると、やることは限られてくる。

何せ、まだプールや海にはまだ時期が早いので、そちらは無しだ。加えて、有り余った彼らの体力的に満足出来ることといえば何があるか。


「……じゃあ、あの山登る?」

『あの山?』


声をはもらせると、一同は美緒が指さした方へと目を向ける。

そこにあったのは、日本人なら誰しも知っているであろう山が映っているポスターだった。


そう、富士山である。


「……ここも人多いんじゃね?」

「でもペースは人それぞれでしょ? 私たちの体力なら、この位は多分一般人を置いてきぼりにしていけるからいいかなって」

「まあそうだな」


少し否定的だった響弥だが、すぐに納得したように頷いた。美緒の言う通りとはいえ、思考が単純であった。


杏果の個人的な意見はともかく、体を動かすというのは賛成だ。

そして楽しむことを名目に登山をしようということならば、リンの心の中のもやもやも、綺麗に晴れてくれるかもしれない。


反対意見が出なかったので、一行の行き先は富士山に決まった。




富士山の麓に到着するやいなや、美緒の予想通りとなった。

ずんずんと歩みを進める将真たちは、ペースを落とすこともなく、ほかの登山者たちを一人、また一人と追い抜いていった。


まあ将真たちとしては、そこまでペースをあげているわけでもなく、途中の景色も楽しみながら進んでいるつもりなのだが。


そうして少し目立つ将真たち一行は、ついに山頂にたどり着いた。

元々〈表世界〉で暮らしていた将真も、富士山を登った経験はない。その為、一体どんな景色が広がっているのかと、少し期待に胸を膨らませていたのだが。


「下がまるで見えない……」

「なるほど……。これはまた、凄い景色だね」


将真の隣にいた遥樹ですら驚くほどの、想像を遥かに超える絶景。

〈裏世界〉のような非現実的な世界にいても、まず見ることは無い景色が、そこには広がっていた。

天気がいい事も、景色がいいことの要因の一つになっているのだろう。


そもそも、彼らにとって、雲より高いところにいるということ自体、新鮮な経験だったりするのだが。


「流石、これだけ高いところにいるというだけあって、空気が澄んでるわね」

「そうっすねぇ」


各々が山頂の景色や空気に感動を覚えていると、将真の視界にぼんやりと立ち尽くすリンの姿が入ってくる。


「……リン、どうだ? 少し落ち着いたか?」

「……そうだね。何だか、自分の悩みが、ちっぽけに感じるよ」

「ちっぽけって事はないだろうが……、まあ、そんなに焦ることはないと思う。俺もまだまだだけど、お互い地道に頑張っていこうぜ?」

「……うん。頑張るよ。この不調を克服して、もっと、強くなる」

「その意気だよ」


スっと、リンの前に拳を突き出す。

少し驚いたような表情を見せたリンは、だがすぐにはにかむように笑みを浮かべ、将真の拳に自分の拳を合わせた。




山頂でリフレッシュも終えたところで、将真たちはのんびりと下山した。

と言っても、その速度は同じく下山している一般人に比べると速いのだが。


その後は、〈表世界〉の自警団支部でもある旅館で、今回は混浴の貸切風呂を使うことになった。

一般人にも解放している旅館なのだから、普通の温泉の方は貸切にできない時間なのである。


混浴風呂、とは言うが、当然水着を着た状態である。


「それでも目のやり場に困るんだよなぁ……」

「同感だ……」


将真と猛は、調子が狂うと言うように顔を背ける。

対照的に響弥は、平然としているが、その視線はしっかり水着姿の杏果たちを捉えていた。

遥樹は紳士的なもので、視界に入っていても、特に目を背けるわけでもなく、さりとて響弥のようにガン見したりすることも無かった。


「別に水着なんだから、気にすることないでしょ」

「それはそうかもしれないけどさぁ……」


十二人が入っても余裕のある広い風呂の中で、将真は肩まで湯に浸かり、ため息と共に、空を仰ぐように顔を上げた。


「そういや、佳奈恵。お前、体力大丈夫か?」


猛がふと疑問に思ったのも当然で、佳奈恵は同年代の学生魔導師たちと比べても体力がない。

加えて、ここにいるメンバーは、軒並み体力おばけばかりなので、そのペースに合わせていたとあれば、かなり疲弊していてもおかしくはない。

だが、その佳奈恵はというと、そこまで辛そうな表情ではなかった。


「みんなだって全力出して登ってたわけじゃないんだし、これでも私、少し鍛えてるんだよ?」

「鍛えてる、ねぇ……」


美緒が、佳奈恵の体をジト目で見る。

その肢体は、あまり鍛えられているような感じがしない、筋肉があまりついてない少女らしいものだった。

美緒は無言のまま、すすす……と泳いで近づくと、佳奈恵の腕や脇腹をつまんでみた。


「ひぁっ!?」

「……こんなぷにぷにな体で、ほんとに鍛えてる?」

「鍛えてるよぉ! それよりみんな見てるんだからやめてってばっ!」


佳奈恵が恥じらいながら全力で抵抗する。

勿論、将真と猛は顔を背けたが、その顔は赤くなっていた。そして珍しく響弥も顔を背けたが、顔を抑えているあたり、興奮して鼻血でも出そうになったのかもしれない。


唯一、遥樹だけは平然としている……かと思いきや、微笑を浮かべた口元が、少しひきつって見えた。

前回はまだ別々だったから、会話が聞こえただけでまだよかったものを、今回は目の前でじゃれつかれては、流石に平常心は保てまい。


「いい加減にしなさい」

「ぴっ」


まあそのじゃれ合いも、杏果が美緒の頭を鷲掴みにする事で終わりを迎えたが。


「……逆上せそうだから、俺そろそろ上がっていい?」

「俺も上がるぞ」

「あー、二人とも、ストップっす」

『……何?』


出ようとする将真と猛を呼び止める莉緒。

二人は嫌そうに莉緒の方を振り返る。

嫌な予感は的中。莉緒の表情は、「いいこと思いついた」と言わんばかりの笑みを浮かべていた。


「せっかく混浴してるんすよ? 背中流しますって」

「さっき体洗ったろ!」

「俺は遠慮しとく……、づっ!?」


構わず出ようとする二人の手首を、いつの間にか莉緒が掴んでいた。


「まあまあ、そう言わずに」

「お、おいちょっとまてって……」

「ふ、ざっけんなぁぁぁっ!」


抵抗虚しく確保された将真と猛は、響弥や遥樹、残りの女子メンバーも同様に、莉緒の思いつきに付き合わされることになるのだった。




将真たちが体を休めている間にも、〈大賢者〉たちの準備は着実に進んでいた。

既に作戦第一段階における部隊は集まっていて、それぞれその日に備えている。

作戦が成功した場合決行される第二段階の部隊も、既にその大半が集まり、頭数だけならば十分に集まっていた。


後は、〈大賢者〉が準備していた、とある魔導具が必要になってくるのだが……


「__これが、そのアイテムか?」


『そうですよォ』


〈大賢者〉の使い魔を通して、声が届いてくる。その使い魔が持ってきたアイテムを見て、リーダーは訝しげな表情を浮かべていた。

確かに特殊で、強力な魔導具なのだろう。それは何となく触れてみてわかった。

だが、その見た目は、半透明の黒い玉だったのだ。大きさは直径十センチメートル程の、大きくはない、そんな玉。


「そんな大層な物には見えないんだがな」


『それも重要な点ですよォ』


危険なアイテムだと思われれば、相手に警戒されてしまう。それ以前に、得体の知れないものなのだから、味方ですら触りたくもないだろう。

だが、見た目がこの程度のものであれば、味方もそこまで危険を感じることもないだろう。そして敵の警戒心も薄れるという作戦らしい。


「単純な話だな。そう上手くいくか?」


『シンプルである事も、大切だと思いますよォ? 起動方法も簡単でしてね__』


リーダーは、〈大賢者〉による魔導具の説明を受けると、静かに頷いた。


「それならば、確かに誰であれ、起動できそうだな」


『そうでしょう? そしてこれを念の為__』


〈大賢者〉がそう言うと、リーダーの目の前に黒い玉が二つ、転送されてきた。


『余分に二つ、作っておきました。計三つですねぇ』


「何でもありだな」


『これくらい、どうということもないんですがねぇ』


少し呆れたようなリーダーの口調に、〈大賢者〉は不服そうだ。

ともあれ、これでまた、魔王復活に一歩近づくわけである。


『嬉しそうですねぇ。意外ですよォ、ホント』


「ダメ出しばかりしているから分からないかもしれないが、これでもお前には期待しているよ。未だに得体はしれんが実績は確かだしな。ここで上手く行けば、今度こそは……」


『まぁ、魔王様と同じ時を共にした、今では数少ない古参のあなたからしてみれば、魔王復活と人類滅亡は悲願なのでしょうがねぇ』


そう。魔王と共に、人類を滅ぼす。

そこには、魔王を除けば二人、ただの殺戮としてではない〈悲願〉が存在していた。

その協力をしているのが〈大賢者〉なのだから、その内容は知っていよう。


詳しく話す義理もないが。


『そろそろ、作戦決行してもいい頃合ですかねぇ』


「……そうだな。では三日後だ」


リーダーは、椅子に深くかけていた腰を上げる。


「作戦決行は三日後。魔王を一刻も早く目覚めさせるために、頑張ってくれ」


『もちろんですともぉ』


それでは、と〈大賢者〉は通信を切る。

残されたのは、〈大賢者〉から送られてきた三つの黒い球体。


これがどう魔王復活に影響してくるのか、〈大賢者〉が言っていたことはいまいち分かりにくいのだが。


「まあ、乗るだけ乗るとしようか」


リーダーもまた、球体を持ち部屋を後にして、準備に取り掛かるのだった。

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