第23話『VS〈嫌悪〉Ⅲ』
久方ぶりに2週間も開けてしまいましたとさ……
すいません……
〈嫌悪〉は、魔導師時代は秀才であった。
任務も卒なくこなす、序列も100位以内の優秀な人材として、最前線に立てるほどの実力を持っていた。
だが、ある時団長の横暴を目にして、〈嫌悪〉はそれに対して抗議した。
団長、と言っても、今の代ではなく一つ前の代の団長だ。
前団長は別に悪い人間ではないのだが、かなり苛烈な人物だった。そのために団長自身は、それを横暴だとは思っていなかった。
彼は、自身さえも戦争に勝つための駒としか考えておらず、それ故に勝利への希望になりうる天才たちには目をかけていたが、それ以外の者達には冷たかった。
前団長の横暴とは、戦いから逃げ出した魔導師がいたのだが、その魔導師に対してこう言ったのだ。
「例え死ぬとしても、実力不足で死ぬとしても、それでも戦場で死ね。逃げ帰るなど言語道断だ」
そして、自警団を辞めるか戦場で死ぬかの2択を、その魔導師に迫った。
そこに〈嫌悪〉は、待ったをかけたのだ。
いくら何でも、横暴がすぎると。
逃げ出してきた魔導師は、普段は問題なく任務を遂行している魔導師だった。決して高い序列ではないが、ちょくちょく顔を見かけるから、たまたま覚えていたのである。
そうして庇うような言葉をかける前団長は、怒りを湛えた目でじろりと〈嫌悪〉を睨んでいた。
「大した功績もないやつが口を挟むな。文句があるなら功績を上げろ、実績を残せ。それとも、腰抜けを庇うようなら貴様もやめるか?」
「巫山戯るなよ、いい加減に__」
「団長、少し待ってくれ」
頭にきた〈嫌悪〉が怒鳴り声をあげようとした時、背後から静かに声をかける男が2人を諌める。
「辞めさせる必要は無いだろう。逃げてきたとはいえ、彼も貴重な戦力だ。そしてこっちの彼も、辞めさせるには惜しい実力を持っている。それに、逃げてきたと言っても相手による。相討ちにでもできる相手ならまだあんたの言うことは分かるが、犬死になるような相手に立ち向かうのはただの馬鹿だ」
その男の話に、前団長は驚くべき事に、静かに耳を傾けていた。だが、それを容認していたかどうかはまた別の話であった。
「ならばどうする。お前が代わりに逃した敵を殲滅してくるか?」
厳しい口調で男に問う前団長。
それを一応は聞き入れながら、男は逃げ出してきた魔導師に問いかける。
「なにがあった?」
「……吸血鬼が、吸血鬼が……。貴族クラスの吸血鬼が3体出てきて、俺では太刀打ちできなかった。仲間も2人、先にやられて、どうしようもなかったんだ……!」
「そうか……」
頷くと、男は立ち上がり、前団長に向き直る。
「貴重な情報を持ち帰ってきたんだ。彼の敵前逃亡は不問にしてもいいだろう。それと、吸血鬼3体くらいならやれる。場所の特定くらいはあんたに任せるぞ、団長」
「俺に雑用をさせる気か?」
「その程度のことも出来ないのか? 逃がすわけには行かないんだろう? いくら団長といっても、大層な事を言うなら、それなりの働きは必要だ」
少し不愉快そうではあったが、言われたことも事実であると納得して、仕方がないと男に命令を下す。
「ならばやってみるといい。俺に対してあれだけ生意気言って、逃がしたらタダじゃ済まさんぞ、鷹虎」
その後、どうやら吸血鬼たちは逃げ出した魔導師を追っていたらしく、容易く見つけ出すことが出来た。そして鷹虎は、容易くその3体を討伐してしまった。
当時鷹虎に言われた言葉を、〈嫌悪〉は今でも覚えていた。
「心意気はいいと思うけど、団長相手に無茶はするな。命あっての物種だぞ?」
団長相手に無茶をしたのは鷹虎も同じで、彼はまだ〈嫌悪〉より若かった。
それにも拘らず、鷹虎はいとも容易く、無茶を覆した。
どれだけ努力しても届かない才能。いわゆる天才と呼ばれるような彼らを、〈嫌悪〉は嫌った。
自分がどれだけ努力しても出来ないことを容易くやってのけ、憐れむような視線を向ける彼らを。
それが、逆恨みだと分かっていても。
そして、8年前の事件で〈嫌悪〉は失望した。結局、天才ですら届かない命があるという事を知ってしまったのだから。
天才ではない自身が、届くものではないと知りながら、目の前で失われていく幾つもの命を見ながら得た確信は、彼に「無力は罪だ」と告げているようで__彼は魔導師をやめた。
非合法であろうとも。
天才にすら劣らぬ力を手にするために。
もはや、その力が誰かのためになることは、なくとも。
〈嫌悪〉は、執拗に力を求めるようになっていた。
「天才型? 何だそれ」
「別に深い意味は無い。単にお前のように、才能に溢れたやつが嫌いだというだけだ」
「そんな理不尽な怒りを向けられる覚えはないんだけどな」
「ああ、そうだな。これはただの逆恨みだ。それに、才能があったところで、お前が俺に勝つことは無い!」
空中にいるにも拘らず、彼は地面を蹴るような動きをする。
瞬間、爆発的な加速で将真に迫る〈嫌悪〉。
その攻撃に辛うじて反応した将真は、腕を交差させ受け止めようとするも、同じく空中にいたために踏ん張りが効かず、地面に叩き落とされた。
強烈な衝撃が全身に走るが、将真自身も頑丈に強化されているので、そこまで大きな問題ではない。体をゆっくりと起こしながら、理解できないというように将真はボヤく。
「くっそ……。さっきより強くなってんな、どういう事だ?」
「簡単な事だ。それが、〈嫌悪〉の称号の由来というやつだよ」
相手を嫌悪するほどに強くなる。シンプルと言えばシンプルだが、〈嫌悪〉の肉体が耐えうる限り、その強化に上限はない。
そう。〈嫌悪〉は、望んだものを手に入れたのだ。
天才すら凌駕する、理不尽な力というものを。
再び仕掛けてくる〈嫌悪〉。
今度は何とか見切って回避に成功したが、そこから休む間もなく猛攻が将真を襲う。
その度に回避行動を取るも、〈嫌悪〉の手数と攻撃速度が将真の回避力を上回っていたために少しずつダメージが蓄積されていた。
(くそ、ある意味〈嫌悪〉のお陰で強化魔法自体はやりやすくなったけど、10パーセントじゃ足りない……!)
ようやく慣れてきて、10パーセントの制御ならまだ意識していれば何とかなるようになってきたが、それ以上を使いこなすには、今後徐々に慣らしていくより他にない。
だが、今はそんな悠長なことは言っていられない。
(多少制御ミスっても、やるしかない!)
決断すると、将真は〈魔王〉の力も抑える。
その代わりに、右手には異様な気配を放つ剣が握られていた。
「……その剣は何だ?」
「わざわざ説明するようなもんじゃないさ。それより、油断して足下掬われないように気をつけろよ__!」
そう言って、将真が地面を蹴った瞬間。
〈嫌悪〉の目の前に、相当な勢いで迫る将真の両膝があった。
「は__!?」
唐突な攻撃に対処しきれない〈嫌悪〉は、直撃を受けて大きく吹き飛ばされる。
間違いなく攻撃が入った感触に、だが将真は浮かない表情だ。
それもそのはず。予想の範囲内とはいえ、求めていた結果は得られなかったのだから。
「ちっ、やっぱまだ20パーセントは制御しきれないか……」
本来であれば、空中で体制を整え、斬りつけるつもりだったのだが、制御できない事を悔やむ暇はない。
意識を切り替え将真は、〈嫌悪〉が吹っ飛んでいった方へと再び仕掛けていく。
すると、立ち上る砂煙の中から、〈嫌悪〉が凄まじい勢いで飛び出してきた。
当たり前と言われれば納得するより無いのだが、先の攻撃は大したダメージには至らなかったようだ。
相手を嫌悪するほどに強くなる、という由来を持つ称号は伊達ではない。
そして再び衝突するかに思えたが、接触する瞬間に、将真は紙一重で攻撃を回避し、逆に攻撃を叩き込んだ。
柚葉から譲り受けた、神器〈魔神剣〉で、強烈な魔属性の斬撃を。
「なっ……!?」
元より、魔族に普通の属性魔力は若干通りにくい。加えて、〈嫌悪〉ほどの強さとなれば、基礎魔術などは鬱陶しいだけで擦り傷程度のダメージも与えられるか怪しいところだ。
無論、強力であれば普通にダメージを与えることは可能だ。
だが、魔力に耐性のある魔族にも、有効な属性が2つ存在する。
〈魔属性〉と〈聖属性〉だ。
つまり、将真の斬撃はまともに通るのだ。
そして全力とは言わないまでも、強力な攻撃を受けた〈嫌悪〉はタダでは済まない。
袈裟懸けに切られ、傷から血飛沫が飛び上がる。
だがこれが、将真にとって良くなかった。
視界が悪くなったことが一つ。そして寸前、価値を確信したことがもう一つだ。
一瞬気を抜いた将真に、強烈な拳が飛んでくる。
本来ならば、反応することすらできないタイミングだった。
それを将真は、偶発的な超人的反射神経によって、奇跡的に反応することが出来た。
更にそれを、自身の体を滑らせるようにして回避したために、直撃は受けたが威力を殺すことに成功した。
実質、ダメージなしである。
回避されたことに驚きながらも、構わず2発目を放ってくる〈嫌悪〉。
それを将真は、咄嗟に空いている手に生成した魔力の剣で受け止めようとする。
それは容易く砕かれてしまったが、将真の狙いはそこにあった。
砕かれると同時、あまりに不自然に、その欠片が四方八方に飛び散り、〈嫌悪〉にダメージを与えながら視界も遮る。
その隙をついて、将真は〈嫌悪〉の懐で腰を深く屈めて、拳を握った。
神器〈魔神剣〉は、手に持っていない。
「う、おおっ!」
「ぐぅっ!?」
攻撃を視界に収めた〈嫌悪〉。だから、容易く回避出来ると踏んだのだろう。
だが、結果は直撃を受けて吹き飛んでいた。
(バカな……!? 俺の強化速度を遥かに上回るだと!?)
それだけではない。咄嗟の作戦にしては、柔軟かつ効果的。あの一瞬の危機を回避しただけでここまで急激に強くなるものか。
〈嫌悪〉の疑問は当然のものであったが、立て直しを図る刹那の間に、いつの間にか横に立つ将真を見て、確信を得た。
向けられるその殺意にも似た、ひりつくような感覚を、体験したことがあったからだ。
(この歳で〈極限集中領域〉に入るか……。これだから__)
「__天才は嫌いだ!」
「ぐっ!?」
すぐ側まで接近して、既に攻撃を仕掛けようとしていた将真は、放たれた魔力の波動に押しのけられ、無理やり後退させられた。
そうして、将真の視界に映るのは、ビキビキと身体中の血管が浮き出て、ところどころ血が吹き出している〈嫌悪〉の姿だった。
将真から受けた斬撃の傷は、既に止血されたようだったが、結果的に再び血が滲み始めていた。
「まだ続ける気かよ!」
「愚問だな。お前を殺して、お前の仲間たちも殺す。邪魔者を殺すのは、俺の今回の仕事のひとつだ」
「ああ、そうかよ!」
再び、将真は飛び出して仕掛けていく。
迷いの無い単調な攻撃に、〈嫌悪〉は冷静に対処しようと構えるが、その速さが予想以上で余裕を持てない。
(また、追いつかない! こいつ、一体どこまで強化して……!?)
〈嫌悪〉の体は、とうに限界を迎えていた。無理矢理強化されていく負担に耐えきれないのだ。
それをいうなら、将真も似たような状態であるはずだが、将真の動きは、そうは思えないようなものだった。
実際は、〈魔王〉の力に比べて安全で負担が軽く、〈エクス・ブラスター〉と合わせることで〈魔王〉の力を使っている時に等しい力を発揮できる。
とはいえ、神器〈魔神剣〉は使用者に相応の負荷が生じる。今の将真では、この状態でまだ長く戦うのは厳しい。
〈魔王〉の力よりもあらゆる面でマシではあるが、早期決着をつけたいところだった。
「お、おおっ!」
「ぐっ!」
限界を迎えていることも構わずに、〈嫌悪〉は更に己の体を無理矢理強化して、将真に迫る。
その速度は、ようやく今の将真にも匹敵するもので、将真はその攻撃を躱さずに受け止めた。
勿論、受けきれるはずもなくダメージを受けはしたが、至近距離で〈嫌悪〉を足止めすることが将真の目的だった。
そして、左手でガッチリと〈嫌悪〉の右手を掴むと、剣を握った右手を振り下ろす。
当然ながら、この状態では〈嫌悪〉も攻撃を躱せない。
強烈な斬撃をいくつもその身に受けて、その度に血飛沫が舞う。
立て続けに、将真は今一度剣を振り上げ、今度は剣の腹で〈嫌悪〉の頭部を強打する。
朦朧としていた意識が一瞬、だが確かに飛んで、その間に将真の強烈な蹴りが〈嫌悪〉の腹に突き刺さる。
「がハッ……!」
「ふっ……、飛べぇ!」
将真の叫びと同時に、足に込められた力を解き放ち、〈嫌悪〉は竜巻に巻かれる木の葉のように吹き飛んで墜落した。
瓦礫が吹き飛び、重力に従って落ちていくと、周りがまたも砂煙で立ちこめていた。
「ぐぅ……、くそが……、ぐぁっ!?」
体を起こそうとした〈嫌悪〉だが、その四肢に激痛を覚えて再び地面に倒れ込む。
限界が来たのか。そう思ったが、そうではなかった。
否、それも理由の一つだったのだろうが、直接的な原因はまた別にあった。
手脚を貫いていたのだ。禍々しい魔力を放つ、杭のようなものが。まあ、杭にしては少し細いが。
「これは……」
「俺の魔術だよ、〈嫌悪〉」
「くっ……」
いつの間にかすぐ目の前に立っていた将真。彼は刀身を、〈嫌悪〉の首筋に当てている。
不用意に動けば斬る、とでも言うように。
「……完全に侮っていたよ、ここまで強いとはな。〈魔王〉の宿主というものは」
「別に〈魔王〉のおかげって訳じゃねーよ」
「恵まれていることには変わらん。……どうした?」
「何がだよ?」
不思議そうな顔を浮かべ問いかけてくる〈嫌悪〉の意図が読めず、将真は鸚鵡返しに聞き返す。
すると、驚いたように目を見開いて、次いで〈嫌悪〉の目が鋭く細められた。
「……敵同士、そしてお前は勝者だろう? ならば、お前が俺を討つのは普通に当たり前だと思うが」
「……何でそんな、死にたがるんだよ。元々日本の魔導師だったんだろ?」
「そうだな」
「だったら、死ぬよりまだ投降した方がマシだろ。そりゃ捕まるかもしれないけど、悪いように扱われはしないだろうし……」
将真がそう言うと、〈嫌悪〉は盛大に鼻で笑い、そのまま普通に笑い声をあげ始めた。
「ハッ、ハハハ、フハハハハハハハッ!」
「な、何がおかしいんだよ!」
「甘い、甘過ぎる!」
そう言うと、〈嫌悪〉は体を無理矢理起こした。拘束を、力ずくで引き抜いたのだ。
そして驚く将真の胸ぐらを掴む。
そのタイミングでようやく、莉緒の応急処置を終えたリンたちが駆け寄ってきた。
「将真くん!」
「ダメだ、来るな!」
こちらまで来ようとするリンたちを静止する将真。
その目の前で、〈嫌悪〉は怨嗟の声を漏らす。
「負けた上で生かされるなど屈辱以外に何も無い。まして裏切り者が、生かしてもらえるはずもない。ここで俺が逃げ仰せて、新たな被害を生み出したら、それはお前が被害を産んだのと同じ事だ」
「それは……、わかってるよ」
「ならば殺せ。今までだって、何度も魔族を殺してきただろう?」
〈嫌悪〉が、胸ぐらを掴む手を緩め、地面に仰向けに倒れ込む。そもそも、抵抗する体力も残っていないのにあんな動きをしたのだから、いよいよ身動きが取れなくなったのだ。
だが、それでも将真は躊躇していた。
そしてそれは、甘さなどという可愛らしいものではないのだ。
今まで殺してきた魔族は、いかにも魔族といった体の者、或いは自信が暴走している時に戦っていた者。そうでなければ魔物や魔獣と言ったものたちだ。
冷静に、自分の意思を持って、人を殺す。それはまだ、将真にとって経験のないことであった。
だが、同時に理解もしていた。
(この先戦っていくなら、乗り越えなくちゃいけない事だ……!)
そもそも、あれだけの苦難を乗り越えてきたにも拘らず、この経験がなかったということ自体が珍しい例なのだ。
そして今後、決して珍しくもない、このシチュエーション。そうなった時、悩んでいる余裕はないのだ。
腹は括った、と言わんばかりの据わった目に、思わずリンたちは身震いする。
おそらく意識的なものではないが、将真が放つ、静かな殺気を感じたのだ。
将真は、ゆらりと剣を振りかぶり、吸った息を吐き出すと共に振り下ろす。
「フッ__!」
〈嫌悪〉の心臓に突き立てるようにして振り下ろされた剣は__だが、〈嫌悪〉の身体を貫くことなく、地面に突き刺さり、叩き割った。
「……は?」
「えっ?」
「どういう事……?」
将真だけでなく、傍から見ていたリンたちにも、状況が理解出来なかったらしい。
ただ1人、それに気がついた莉緒が、朦朧とした意識で、リンに耳打ちする。
「……う、えっす……、リン、さ、ん……」
「え? 上……?」
その誘導に従い空を見上げると、確かにそこには〈嫌悪〉がいた。ぐったりとして動ける様子はなく、抱えあげている者がいたのだ。
だが、それは傍から見ればアンバランスにすぎる光景だった。
何せ、図体の大きい〈嫌悪〉に対し、その者は小柄で、しかも見た目だけならリンくらいの少女だったのだから。
「ふぅ、危ないところだったねー」
「……あんたか。わざわざ手を煩わせて済まないな」
「うん、まあこういう事もあるよ。ぶっちゃけ〈大賢者〉が何したかったのか、よくわかんなかったし、様子見に来て正解だったよ」
とてもこの緊迫した場に相応しいとは言えない緩い会話。リンたちは訝しげに彼らを眺めていたが、戦力的に1番彼らに近いであろう将真だけは気がついていた。
その戦力差に。
(なんだあいつ!? バケモン過ぎるぞこの感覚……!)
将真は思わず、風間優と遭遇した時のことを思い出していた。
思い出していたが__少女の強さは、あの時に感じた差と比べても比較にならないような、段違いなものだった。
少女は将真たちを見下ろすと、ニコッと笑みを浮かべて仰々しく一礼をする。
「初めましてだね、日本の魔導師諸君」
黙り込む将真たちに向かって、少女は自身を名乗る。
「私は〈マッド〉と対をなすもの、〈ウィッチ〉です。出会って早々申し訳ないけれど、それじゃあ諸君__さようなら」




