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終焉への反抗者《レジスタンス》Ⅱ  作者: 獅子王将
おてんば娘な後輩
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第20話『駆け上がれ』

久しぶりに場面の勢いで書いた気がする……。

第5階層では、何故か〈ブレイン〉が現れることは無かった。

遺跡の機能は、停止した訳では無いのに。

だが、将真たちはこれをチャンスと捉えた。

ここから先、敵がクローン吸血鬼たちだけならば、対処可能だと分かっていたからだ。


そうして到着した第6階層。

そのまま駆け抜けて、上の階層へと向かうつもりだった彼らの前に現れたのは__。


「さっき〈ブレイン〉出てこなかったのに、なんでファフニールが出るんすか!?」

「知るかぁ!」

「ちょっとぉ、文句言ってる場合じゃないよぉぉぉ!」


そう。第6階層に陣取る番人、〈ファフニール〉であった。

本物でないとわかっていても、その危険性と迫力は、十分脅威に値する。


絶叫しながら、予想を上回る凶暴性を見せる〈ファフニール〉の攻撃を躱し、或いは何とか迎撃する最中、空が声を張り上げる。


「私たちが倒せなかったことって関係ありますかぁ!」

「いや、それは関係ないんじゃ」

「いや、ちょっと待つっす! さっき第5階層で〈ブレイン〉が出なかったのってもしかして、攻略済みの空さんがいたからじゃないっすか!?」

「だから〈ブレイン〉は出てこなかったのにファフニールは出てきたのか!」


莉緒の回答に納得しながらも、それを理解しただけではどうしようもない。

厄介ではあるが、倒さなければ先には進めないのだ。

それも、可能な限り迅速でなければならない。モタモタしていては、陸と海の命が危ういのだ。


「どうするっすか、将真さん」

「俺? 俺に聞く? 戦術とか戦略とか苦手なんだけど……」

「でも、リンさんは空さんを守っててもらった方がいいですし、申し訳ないっすけど、今のリンさんでは足手纏いになりかねないっすからね」


つまるところ、莉緒と将真だけなのである。今ここで、この怪物と戦える力を持っているのは。

このまま足止めを食っていても時間が過ぎていくだけだ。とりあえず反撃に出ようとした時に、空の口から意外な情報が伝えられる。


「鬼嶋先輩! あのファフニール、魔導核で動いています!」

「魔導核ってことは……、魔力体っすか!?」

「何だそれ、なんかまずいのか!?」

「いや、むしろチャンスっすよ!」


本物ではないとわかっていたが、魔導核によって魔力で肉体を構築したとあれば、その核は人間でいう心臓に等しい。

つまり、わかりやすい弱点だ。


「あのファフニール、見た目は勿論強さも相当やばいっすけど、言ってしまえばスライムと同じっす」

「あっ、見た事ないけどいるんだなスライム」

「そりゃ勿論いるっすよ。で、核さえ潰せば簡単に倒せるんすけど、多分体の中心付近じゃないっすかね。将真さん、何とかしてぶち抜けないっすか?」

「それなら俺よりリンの方が適任じゃね?」

「あんまり無理させられないっすよ」


それもそうか、と思いながら、将真は頭の中で思い描く。

細剣のような、鋭い刀身を。

すると、〈武器生成魔法〉で作り出した剣が、その形を変えていく。但しその刀身は、細剣と呼べるものではなかった。

それよりは、突撃槍の方が近い。


「……これなら、ぶち抜けるか?」

「行けそうっすね」

「よっしゃ」


莉緒に確認をとると、将真は一瞬体勢を低くして、地面を蹴り疾走する。

今も変わらず暴れ続けるファフニールが、自身へと向かう将真に爪を振りかざす。


「げっ、将真さんちゃんと見て! ヤバいっすよ!」

「片桐先輩やっぱ馬鹿なんですね!? 爪が降ってきてますよ!?」


莉緒のヤジに加え、空の誹謗中傷も飛んでいくが、当の将真は気にしていない。

勿論、ファフニールの攻撃には気がついている。

それをしっかり確認して__自身の攻撃軌道をずらさないように、紙一重で避けた。

そして、ファフニールの懐まで潜り込むと、今度は跳躍して、利き手で持った剣を突き出す。


「〈黒槍〉!」


ファフニールの体に突き立てられた剣は、一瞬でその体に大穴を開けた。

そのダメージに、ファフニールは大きくよろめいたが、それでもまだ動いている。

魔導核を破壊するには至らなかったのだ。だがそれは、魔導核が固すぎるのではなく、位置がずれただけであった。

それが、空いた大穴のおかげで確認できた。

魔導核が、一部を覗かせていたのだ。


「莉緒っ!」

「了解っす!」


言うが早いか、莉緒の体を魔力が包み込み、瞬きの瞬間、莉緒の姿はそこになかった。


「〈日輪舞踏〉__“五輪華”」


速攻で動いた莉緒の一撃により、魔導核は容易く砕かれた。

直後、ファフニールの動きが止まり、その肉体がボロボロと崩れ始める。


「……勝ったな」

「まあそうなんすけど、感傷に浸ってる時間はないっすよ。せっかく速攻撃破できたんすから走る!」


莉緒がいち早く駆け始めると、それに続くように走り出すリンと空。


「分かってるよ!」


そして将真も、文句を言いながらその後に続いた。




第7階層。ここは、結局空たちもたどり着けなかったために情報がない。……つまり、未踏の地だ。


ここで将真たちの行く道を塞ぐのは、巨大な骸骨だった。いわゆる〈餓者髑髏〉と呼ばれる怪物だった。

巨体でありながら、その動きは素早く、そして攻撃は重い。

かなり厄介な戦いになると、将真は予想していた。

だが、この怪物の処理は、ものの数秒で完了してしまった。

それは、魔力体である以上、無理もなかったのだが。


「__いくら頑丈で強くても、コアが丸見えなんて、倒してくださいって言ってるもんっすよ」

「いやでも番人瞬殺とか普通ないわ」


そう。丸見えだった魔導核を、莉緒が一瞬で、神技で潰して倒したのだ。

確かに、いくら強くとも、半端な防御力と速さでは、莉緒の圧倒的なスピードの前では無力に等しい訳だが。


とにかく、予定よりも早く攻略できた将真たちは、いち早く上層へと駆け上がる。


余談だが、柚葉が予想していた最大階層の第7階層には、遺跡の心臓は無かった。

つまり、更にまだ上があったのだ。

そのことに関して、後で文句を言ってやろうと思う将真であった。


階段を駆け上がること数十秒。

聞こえてきたのは激しい戦闘音だった。

将真たちは、さらに速度をあげていく。

そうして登りきる前、既に目に入ってきた光景は、2人の少年が、必死にクローン吸血鬼の猛攻に抵抗する姿だった。


そしてその奥に__見えた。

おそらく今回の現況と思われる、称号を持つ〈マッド〉が。

確かにその姿は、将真たちが知る〈外道〉のそれではなかった。

そしてその表情は、少し歪んでいた。


「あれが……」

「〈マッド〉の、未確認称号持ち〈嫌悪〉っすね」

「2人とも少し開けて!」


相手の姿を確認していると、将真と莉緒の背後からリンの声が響く。

振り向くと、リンの手には、長槍が構えられていた。

今のリンにこの一撃を__神技を放つ余裕はないはずだ。そして本当なら、将真たちはそれを止めなければいけなかった。

だが、2人はリンの覇気に、思わず場所を開けた。既に強大な魔力が込められていることも、理由の一つではあったが。


両の瞳を真っ赤に灯したリンが、力強く足を1歩踏み出す。そしてその足を軸に、握っていた槍を勢いよく投げ飛ばした。

リンの神技〈魔槍ゲイボルグ〉。突く、投げるの2種の攻撃方法が存在し、強力な魔力を待とう刺突攻撃は、凄まじい殺傷能力を秘めていた。


当然の如く、陸と海を襲っていたクローン吸血鬼たちのうち、リンの攻撃の軌道上にいた者達が瞬時に絶命させられていく。


「……、な、何っ!?」


そして目の前に染まる凶器を見て、遅まきながら〈嫌悪〉が反応する。

槍を右手で弾くように薙ぐが、〈魔槍〉の方が遥かに強力だったようで、その右腕ごと容易く吹き飛ばした。


「くっ、そ……!」

「陸、海!」


〈嫌悪〉が悪態をついて動きを止めている間に、空は陸と海の元へ駆け寄る。

2人の体はかなりボロボロで、魔力も枯渇していた。その上で無茶を通したのだ。見た目以上のダメージに違いない。

それにも拘らず、2人は気丈に笑みを浮かべて見せた。


「おう、随分早かったな……」

「あいつら、こっちを監視できたみたいだからね。丁度その装置を、壊してやったところだよ……」

『装置?』


海が指を指した先には、遺跡の心臓になっている核があった。〈嫌悪〉がそれを守るようにして立っていたにも拘らず、それは粉々になっていたが。


(もしかして莉緒が〈餓者髑髏〉あんな簡単に倒せたのって、タイミングよく遺跡の機能が死んだからなんじゃ……)


「油断していたぞ……」


すると、丁度海が指を指した場所から〈嫌悪〉がゆらりと立ち上がる。


「よもや探知も忘れてお前達相手の余興にうつつを抜かすとは、我ながら呆れる。おかげで魔導師の接近は愚か、先制攻撃にすら気づくのが遅れるなんてな」

「あのダメージで……」

「大して気にも止めてないな……」


莉緒と将真が、先頭に立つ。その〈マッド〉とは思えない常軌を逸した気配に、2人は生唾を飲み込むが、不敵な笑みを浮かべてみる。

まあそれは、引きつった笑みにも見えただろうが。


「行くぜ、莉緒」

「勿論っすよ。そんなわけで、神器使うなんて無茶したばかりのリンさんは、空さんと一緒にそこのお2人を守って下さいっす」


そういって、莉緒はリンに何かを投げ渡した。

それは、魔力増強の効果を持つ魔導薬剤マジカルドラッグである。多少の副作用はあれど、今かなり危険な状態にある陸と海には、必要なものだ。


本当なら参戦したいリンだったが、確かに莉緒の言う通り、今の状態ではかなりの無茶をしたという自覚がある。

その証拠に、全身に千切れるような嫌な痛みを感じていた。


(たかが、なんていうつもりは無いけど、いくら何でも神技一回使っただけでここまで負荷がかかるなんて……)


もう何度も感じていた事だが、今回のより明確に過ぎる自身の弱体化に、リンは大きなショックを受けていた。

だが、それを自覚しているからこそ、今は莉緒の言うことに、素直に従おうと思えるのだろう。

それに、リンにも〈嫌悪〉の強さは、何となく測れていた。


(今のボクじゃ、足手纏いだ……)


邪魔をして、余計な危険を招くわけには行かないのである。

リンは、2人が集中して戦えるように、自分ができることをしようと決意した。


「さあ、行くっすよ__!」

「むっ……!」


莉緒が声を上げると共に、その装いを少し変えていく。

制服の上から、高密度の魔力で生成された真紅の羽織を身につける。

最初からクライマックス。全力全開。初っ端からの〈神話憑依〉であった。


そして焚き付けられたように、将真もまた、魔王の力を顕現させる。

一瞬、魔に飲まれそうになるが、強い意志で持ちこたえる。

長時間泥沼の戦いをするよりも、2人は速攻で勝負を決めに行くつもりでいるのだ。


「一気に」

「決めるっすよ!」


2人揃って、刃を〈嫌悪〉に向ける。

片手を失った相手に対して、フェアとはいえないかもしれない。だが、この全力全開という判断が正しかったのだと、すぐに分かることになる。


落ち着きを取り戻した〈嫌悪〉は、自身の腕の止血をして、表情を消した。


「そう焦るなよ。……少し、遊んでいこうぜ」

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