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終焉への反抗者《レジスタンス》Ⅱ  作者: 獅子王将
おてんば娘な後輩
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第11話『新たな鍛錬』

第2部初のブクマ1件いただきました、ありがとうございます!


最近、pixivでイラストも描いているので、よかったら覗いて行ってください。

将真たちの見た目が少し分かるんじゃないでしょうかね。

四月も半ばを回ったある日のこと。


将真は、姉であり、学園長でもある柚葉に呼び出しを受けていた。


直接、こうして呼び出されることはそうあるわけではなく、何かあったのか、或いは自分が何かやらかしたのかと、妙に緊張感を覚えざるを得ない。


そうして、リンと莉緒を教室に待たせて、将真は学園長室へとやってきた。


「__いいわよ、入りなさい」


扉をノックすると、直後に柚葉の声で、入室の許可が下りる。

少し緊張した面持ちのまま、将真はその扉を開いた。


するとそこには、柚葉以外にも、予想外の人物がいた。


「あれ、ふう先輩」

「私はもう卒業したんだし、先輩はよしてよ」


言葉の通り、つい先月卒業して自警団に所属した〈美空家〉の楓だった。

確かに、卒業前は学園長室にいる事が多かったが……。


「今は正式に秘書見習いって感じね。学生時代の頃は、勝手に押しかけていただけだったから」

「自警団の仕事も、任務を除けば毎日ある訳でもないしね」

「だからここにいたのか……」


楓がこの場にいる理由に、ようやく納得が言ったと、将真はぽんと手を打つ。

そして、楓の事で忘れかけていた、今回呼び出された理由がまだ分からないことを思い出した。


「それで柚姉、何のようで呼び出したんだ?」

「そうそう、面白そうな話を聞いてね。教えてあげようと思ったわけ」

「面白そうな話?」


鸚鵡返しに聞き返す将真に、柚葉は笑みを浮かべて頷く。

だが、将真はますます分からなくばかりだった。

面白い話を、わざわざ学園長室に呼出してまで聞かせようというその意図が分からなかったのだ。

しかも、呼び出しの時に、一人で来るように言われていた。

つまり、将真一人に聞かせようとしているのである。


「どういう事だよ?」

「将真は、〈武〉のウォーレンを覚えてる?」

「〈武〉のウォーレンって……、ああ、米国の」


先月起きた、〈日米魔導大戦〉。

その時に、グリシャ・ヴァーミリオンの自称最強の部下〈三銃士〉を名乗る者達がいた。

そのうちの一人が、〈武〉のウォーレンである。

日本の勝利により、グリシャやほかの魔導師共々、瑠衣の〈影の監獄〉に閉じ込められていたが、日本に協力的だったエリドと、戦うことにしか興味のなく、あえてグリシャに従う理由がないウォーレンは、条件付きで日本の魔導師として開放されたのである。


そして肝心の、〈武〉のウォーレンの強さだが。

どうも魔術や魔法を使いこなしているという感じではないようだ。

先の大戦でも、武器を振り回すばかりで、これといって目立つような、危険性のある魔導の行使はなかったと記録にある。


その強さは、確かに常軌を逸したものであるにも拘らず。


「で、それがどうしたんだよ?」

「うん。その〈武〉のウォーレンの、強さの秘訣が分かったのよ」

「秘訣ねぇ……」


勿論、将真も生身でそこまで強かったとは思っていない。

とりあえず、目立たなかったということは、魔術は考えづらい。だが、何かしらの魔法は使っていた可能性は十分にある。

とはいえ、思い当たる〈肉体強化魔法〉や〈肉体活性魔法〉にしては、やたらと強すぎるのだ。

だから、予想がつかずにいた。

いたのだが。


「それがなんとびっくり、〈肉体強化魔法〉と〈肉体活性魔法〉だったのよ」

「……はぁ?」

「まあそういう反応よね」


事の真実を聞かされた将真の反応に、予想通りとため息をつく柚葉。

だが、その可能性は低いと言われていたのだから、実はそれがそうでした、などと言われたところで容易く納得出来るはずもない。


「言っとくけど、ただの魔法じゃないわよ。でも、その気で頑張れば、誰でも出来る……とはいえ、推奨できる魔導師が限られているのよね」

「まさか俺を呼び出した理由って……」

「察しが良くて助かるわ」


柚葉が将真を呼び出した理由。それは、〈武〉のウォーレンが編み出した、強さの秘訣とやらを伝授するためだったのだ。

そして莉緒やリンを連れずに一人で、という事は、二人は推奨できる魔導師の枠にあらず、逆に将真は推奨できる魔導師というわけであった。


「まあ、別に聞かれて困る話でもないのだけれど、無茶されるのは困るからね」

「まあ、な……」


特に柚葉の立場上、そう思うのは仕方が無いだろう。

将真としても、特にリンには無茶をして欲しくはなかった。タダでさえ、不調が続いているのだから。


「時に将真、あなた、普段の〈肉体強化魔法〉、大体どれくらいに自身を強化してる?」

「んー……、普段は五十パーセント、最大で、七十パーセントくらい?」

「それじゃあ、〈肉体活性魔法〉は?」

「……精々三十パーセントくらいか? なぁ、柚姉、この問答になんの意味が……」

「じゃあ__同時に使っては?」

「ど、同時……!?」


将真は目を見開きながらも考える。

〈肉体強化魔法〉と〈肉体活性魔法〉は、単体ではそれほど難易度の高い魔法ではない。

だが、真価を発揮するのは、同時に発動した時である。

〈肉体強化魔法〉は、身体能力と頑丈さを向上させる魔法で、〈肉体活性魔法〉は、反射神経と治癒能力を向上させる魔法だ。


ゲーム風に言うと、攻撃力、防御力を上げる魔法と、敏捷力の向上と自動回復の付与をする魔法である。


特に、将真たちのような近接戦闘型の魔導師にはなくてはならないものであり、その中でも〈肉体強化魔法〉は、最大効果とはいえ七十パーセント。これは、学生魔導師としてはトップクラスと言える。

〈肉体活性魔法〉は、慣れが必要なために習得が困難な場合もあり、基礎魔法とは言い難いが、それでもそこまで難易度が高い魔法ではない。

将真の場合、こちらの効果が低いのは、まだ慣れていないから、という理由があった。


そして、同時に発動した時に真価を発揮する反面、それは非常に難易度が高かった。


だが、どちらか片方しか使えない場合、近接戦闘においてはあまり使いものにならない。

何故なら、どうしても〈肉体強化魔法〉を使うことばかりに意識を集中してしまうからだ。

そしていざ、〈肉体活性魔法〉に切り替えねばならない時が来た時、それに気づいてからではもう手遅れ、というパターンになる事がざらである。

接近戦の攻守の入れ替わる速度は相当速い。


「……どっちも、十パーセント行けばいい方、だと思う」

「持続時間は?」

「予測だけど、十分持てばいい方だと思う」

「それより効率を落とすことは?」

「わからない」


最後の柚葉の質問に、将真は首を横に振る。

後でわかることだが、話をしていた柚葉も、その隣で聞いていた楓も、一応同時に発動は出来るらしい。

ただ、同じ発動したところで、将真同様、そうそうレベルの高いものではない。

そうは言っても、楓ですら将真と同じくらいの同時発動の効果で、数時間の持続が可能らしく、柚葉に至っては、同時発動における〈肉体強化魔法〉が七十パーセント、〈肉体活性魔法〉が五十パーセントで数時間もたせられるというのだから、やはりレベルが違うのだが。


「で、〈武〉のウォーレンの恐ろしいところがここでね。同時発動でなんと、どっちも百パーセント……」

「はぁ、マジで!?」

「……何だけど、続きがあるから聞きなさい」


驚きのあまり、途中で話を切ってしまう将真。窘められて、とりあえずは驚きを引っ込めて口を噤んだが、続く言葉に、将真の理解は限界を超えた。


「今から説明使用としてる特訓の成果で、実質二百パーセント強化されてるみたい」

「…………」

「……将真ー、聞こえてるー?」

「……聞いてるよ」


ちなみに強化とは言うが、百パーセントが二倍の力、という訳では無い。

もしそうならば、接近戦が苦手な遠距離タイプの魔導師ですら、百パーセントの強化が可能だっただろう。


「それで、その特殊な特訓はどんな内容なんだ?」

「言葉にするとすごい簡単なんだけどね。普段から、強化している状態に体を慣らしておくんだよ」

「……それってつまり、難易度の高い同時発動を、常にってことか?」

「少しずつ、時間と強度は伸ばしていけばいいと思うけど。そうね、いずれは〈武〉のウォーレンのように、常に百パーセントの強化を体に慣らしておくの。そうすると、あえて強化するまでもなく、体が慣れてるから、百パーセント強化されているのと同じような状態になるわ」

「そんな単純な問題なのか?」

「それが単純なのよ。魔導師の体は、一般人とは違うから」


体に作用するのはもちろんだが、どうやら魔力回路に対して大きく作用するらしい。

魔導師に限らず、魔力を持つすべての生物の体内に、血管のように張り巡らされた、文字通り魔力が全身を回るための道である。


(難易度は確かに高いし、すぐに出来るとは思わない。けど、常に強化状態に身を置く。そうして得られる効果が大きいっていうのは、聞いているだけでもわかる)


苦労の結果、得られる強さ(メリット)を考えると、実際のところ、悩むことでもなかった。

将真は、迷いなく首を縦に降る。


「柚姉。俺、やるよ。〈肉体強化魔法〉と〈肉体活性魔法〉の常時同時発動、物にして、更に強くなる!」

「そういうと思ってたわ」


そう言うと、柚葉は椅子から立ち上がり、ゆっくり椅子を迂回する。


「それじゃあ、まずは試しにやってみなさい」

「おう」


将真は頷き、すぐに〈肉体強化・肉体活性魔法〉を使用する。勿論、はじめから無茶をするつもりは無い。

維持が可能な範囲でいいのだから。

そうして出来たのは、精々が五パーセントくらいだった。


「うぐぐ……」

「まあ、そんなものでしょう。じゃあ……」

「……は」


机を迂回しているところを、間違いなく目で見て確認出来ていた。

それにも拘らず、柚葉は突然、将真の目の前まで迫ってきて、額には、デコピンの構えをした柚葉の指が触れていた。

そのデコピンに、そこそこ魔力が込められていることが感じ取れ、喰らえば壁まで吹っ飛ばされることは間違いないだろうと思われた。

だが、何とか反応できた将真は、回避しようと足に力を入れ__直後、強化のコントロールを誤った将真の足が、学園長室の床を踏み抜いた。


「うごっ!?」

「やっぱり、そう簡単じゃないわね」


将真の様子を見るなり、納得したように柚葉は頷く。実験台にされた将真は勿論、少し不機嫌だ。だが、柚葉はお構い無しに話を続ける。


「同時発動の訓練を続ければ、間違いなく強くなれるわ。ただ、今みたいに少しちょっかい出しただけで力加減ミスるんだから、他人の迷惑にならない範囲で頑張りなさい」

「分かってるよそんなこと……」


不愉快そうな表情丸出しのまま、用事が済んだ将真は学園長室を出ていく。


そう。

分かっているのだ。

分かっていたのだ、そんな事は。


そして、そんな気はしていたのだ。


「…………」

「……リン、さん」


珍しく不機嫌そうに、冷ややかな目で見てくるリンを見上げて、将真は冷や汗を流していた。


「ま、マジですいませんでしたァ!」


勢いよく土下座する将真。


そう。わかっていたからと言って、絶対に大丈夫だということは無いのであった。

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