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終焉への反抗者《レジスタンス》Ⅱ  作者: 獅子王将
おてんば娘な後輩
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プロローグ『新年度の幕開け』

終焉への反抗者レジスタンス、続編開始です!

少女は、孤独だった。


生まれ持った力故に、人類は彼女を恐れ、忌み嫌ったのだ。


彼女に興味を示した者達も、ただ彼女を兵器として扱うばかりだった。


そんな少女にも、仲間ができた。


少女は、仲間たちと共に旅を続け、その末に多くを失った。


__ああ、また一人ぼっちか。


少女は、諦観と共に呟く。


そして少女は、英雄へと至り__自身さえも、意味消滅の結末を辿った。




これは、誰にも覚えられることもなく、ただの御伽噺となった、世界を救った少女の、世界に刻まれた僅かな記録である__。




〈日本都市〉には、〈四大貴族〉と呼ばれる魔導師の名家が存在する。


卓越した才能と戦闘能力を併せ持つ、四大貴族の中でも最強と言われる〈風間家〉。


戦闘能力もそれなりだが、それ以上に魔導に特化した〈美空家〉。


四大貴族の中でも人数が多く、高水準な魔力量と、多様な魔導を使いこなし、変わった才能を持つ〈時雨家〉。


研究を主に活動しているためか、ほぼ全員が魔導師の平均値よりも少し強い程度だが、相手の精神に影響を与える特殊な魔導を使う〈花橘家〉。


だが、〈四大貴族〉以外にも、強い魔導師の一族は存在していた。

そのうちの一つ、〈星宮家〉。




「__よしっ、中々いい感じね!」


〈星宮家〉の一室。姿見の前で、腰に手を当てて、満足気な笑みを浮かべる少女。

姿見の前でくるくる回りながら、自分の制服姿を嬉しそうに見ていたのだ。

新しい制服に変わったのだから、分からなくもないが。


「やっぱり中等部の制服と違って、高等部の制服は子供っぽさもないし、凛々しい感じ」


何度も姿見の前でくるくる回っていると、部屋の扉がノックされ、少女を呼ぶ声が聞こえてきた。


『__お嬢、開けるぞ?』

「はいはい、どーぞ」


少女は特に気にした様子もなく、適当な返事で声の主を引き入れる。

現れたのは、少女と同年代の、2人の少年。

2人とも、少女とは兄妹同然の関係だった。


「ていうか、その『お嬢』って呼び方、やめてくれないって前から言ってるんだけど?」

「仕方ないだろー、せめて家の中ではな」

「別に今、私たちだけじゃん」

「うんまあ、そうなんだけどねー」

「っと、そうじゃなくて、なんの用?」


どうやら、家の中では『お嬢』という呼び方を訂正してくれないらしい2人を諦めて、思い出したように本題に入る。

すると、今のやりとりで少年たちも忘れていたようで、ハッとしていた。


「ああ、そうだよ、忘れるところだった」

「ほら、あんまりのんびりしてると遅れるよ?」

「……げ、もうこんな時間なの?」


1人の少年が、部屋の時計を指さすと、もうすぐ学校が始まる時間だった。

しかも、入学式及び進級式に、1年生が遅れるのはたいへんまずい。

しかも彼女の場合、それだけではなかった。


「1年生代表が遅刻なんて、他の生徒にも示しがつかないよ。進級組も面白く思わないだろうし、やっぱり編入組もいるみたいだからね」

「1年生代表なんて言われてまで、他の生徒に馬鹿にされたくはないだろ?」

「もー、もう少しゆっくりしたいのに」


文句を言いながらも、少女は鞄を持って部屋から飛び出す。


「__いってきます!」


家を飛び出すと同時に、3人は魔法で自身を強化し、一気に跳躍。建物の屋根に飛び移って、その上を駆ける。


そら、このままじゃ時間ギリギリかもしれないぞ?」

「そうねぇ……。じゃあ、飛ばすわよ。りくかい!」

「オッケー!」

「了解」


3人は、さらに速度をあげて、学校まで疾走して行った。




更に別の場所。宿の一室。

1人の少女が、寝癖まみれの髪を掻きながら、小さく欠伸をした。


入学式には間に合う計算だが、早く準備しないと遅れてしまうかもしれない。

少女は、早々に顔を洗い、完全に意識を覚醒させると、テキパキと身支度を済ませる。

そして、洗面台の鏡の前で、学園指定の制服に袖を通して、ポツリと呟いた。


「魔導師、ねぇ……」


その表情は、少し憂鬱そうだった。




1人の少年が、学園の前に立っていた。


他の、外から通っていた生徒達も登校を始めていたが、その生徒達も含めて学園の生徒達は、彼に見覚えがなかった。そのことから考えて、彼はおそらく、編入してくる1年生で間違いないだろう。


「魔法が存在する世界、か。……こっちは退屈せずに済みそうだな!」


そう言うと、少年は校内へと足を踏み入れる。

その顔には、嬉々とした表情が浮かべられていた。




その頃、学園では。


「……おっかしいなぁ、あいつらまだ来てないの?」

「どうかしたのかい、杏果?」

「あら、遥樹じゃない」


キョロキョロと誰かを探す杏果を見つけて、遥樹は声をかけていた。


「リンたちが見当たらないんだけど、知らない?」

「莉緒小隊かい? それなら確か、任務から帰っているところだって学園長に聞いたけど」

「……は?」


杏果は、思わず気の抜けた声を出す。

それもそのはずで、確かに任務に出ていることは聞いていた。三日ほど前に。だが、杏果もその場にいたから聞いていたのだが、学園長が「学校始まるまでには終わるから」と言っていたはずだ。

なのに、まだ戻ってきていない、と。


「……ありがとう、ちょっと連絡入れてみるわ」

「程々にね」


ゆらりと立ち去る杏果の後ろ姿を見て、遥樹は思わず苦笑を浮かべていた。




そして、学園の別の場所では。


「__お兄ちゃん!」

「あ」

「真尋ちゃんだ」

「ちゃんと遅れずきたみたいだな」


美緒小隊の3人の元に駆け寄ってくる真尋の姿を見て、兄である猛は、少しホッとしたような表情を浮かべた。

それは一瞬のことであったが、美緒も佳奈恵も、その様子をちゃんと見ていたので、思わず顔を見合わせて少し笑ってしまう。


「おいこらお前ら、何笑ってんだ」

「え? いや、その……」

「微笑ましくてつい」

「やかましいわ」


悪態をつく猛の言葉には、以前と比べると棘が少なく思える。本当に丸くなったものだと、美緒は感慨深く思っていた。


「制服、よく似合ってるよ」

「えへへー、佳奈恵さんありがと!」

「ほら、『お兄ちゃん』は何も言ってあげなくていいの?」

「う、うるせぇ」


美緒に煽られるも、視線を逸らしてそっぽを向く。

だが、それでも暫く沈黙が続き、恐る恐る視線を戻すと、期待の眼差しで真尋が何かを待っている。

何か、デジャブのようなものを感じながら、猛は諦めたように小さくため息をつく。


「……ちゃんと似合ってるよ。だからそんな目で、あんまりこっち見んな」

「むぅ、それだけなの?」

「……ちゃんと可愛いから」

「やった、お兄ちゃんに褒められた!」


(完全に言わせだろーが……!)


はしゃぐ真尋を横目に、猛は負けたような気分で溜息をついた。

だが、別に後悔もなにも感じてはいなかった。

なぜなら、


「……心にもないことを言ったわけじゃないでしょ?」

「心読むんじゃねぇよ」

「いたっ」


耳打ちしてきた美緒の頭をチョップで黙らせる。

ただの身内贔屓だろうが、真尋の制服姿は、猛にはよく似合っているように見えた。

制服姿、という事自体が、かつては想像もできなかった事だから、この光景が見られただけでも、猛にとっては大きな意味がある。

まあ、妹に気をかけすぎで、周囲からはどうしてもシスコンに見える訳だが。


「それより、もう式が始まるだろ。遅れないうちにいけよ」

「……うん、それ何だけど、お兄ちゃん」


時間が迫っていたので、早く行くよう促す猛だったが、真尋の問いかけに少し首をかしげて答える。


「どうかしたか?」

「えっとね。……私、今からどこに行けばいいの?」

「ん"っ!?」

「ぶっ……」

「あら」


真尋の惚けたような物言いに、思わず調子を崩される美緒小隊であった。




そして__。


「__だあぁ、ちくしょう、何でこうなった!?」

「まあそれは……、想定外の魔物の群れがとしかいいようがないっすねぇ」

「安全第一で帰ってたら、夜営になっちゃったしね……」


将真が文句垂れると、莉緒とリンが思わず引き攣った表情で答える。


今日は入学式と始業式がある。そしてその事を、莉緒小隊はちゃんと分かっていた。

だからこそ、学園長から受けた任務には、初めは疑問を抱いていた。

だが、遅くても始業式前日には帰還できる計算だから、と言われ、それを信じて数日かけての魔物の調査と討伐を任されたのだ。


任務自体は、滞りなく終わったのだ。むしろ、スムーズ過ぎて怖いくらいに。

だが、任務が終わり、帰還の最中にそれは起きた。

魔物の大量発生だ。

今回の任務は、これが調査対象であり、討伐対象だったのだが、どうやら指定された場所がズレていたらしい。

おかげで、任務を終えてから改めて任務を遂行するという無駄な時間をかけてしまったのだ。


結局、任務は八割がた終えたものの、このままでは本格的に始業式に間に合わないと帰り始めたのだ。

その後、安全を考慮して夜営をしたせいで、こんな時間になってしまってはいるが。


「まあ、命の危険よりは怒られる方がまだマシかな?」

「怒られもしないのがベストなんだけどな」

「これはもう、仕方ないっすね」


などと話していると、不意にリンの通信端末に通信が入る。

3人は足を止めて、リンの通信端末ウィンドウに移された名前を見る。


『柊杏果』


「……えっと、これは」

「リン、別に無理に出る必要は無いと思うぞ」

「てか、間違いなく怒られるっすよね」

「あっ、切れた」


うだうだと相談しているうちに、通信がプツッと切れた。電話のようなものなので、一定の時間放置していたら切れるのも当然だ。

だが、切れてすぐに、再び通信が入る。

将真たちは、ビクッと肩を揺らして顔を見合わせる。


「……で、出た方がいいよねこれ」

「いま無視したからな……。一体どれだけ怒ってるか」

「怒り心頭な気がするんすけど」


意を決して、杏果からの通信に応じる。


「も、もしもし杏果ちゃ__」


『こんの、馬鹿共がぁぁぁっ!』


『ひいっ、すいませんでしたァ!』


速攻、怒鳴り声を上げる杏果に、ビビりながら謝罪を口にする将真たちであった。


『何やってんのよ、もう始業式始まるんだけど。始まるんだけど!?』


「ちょ、ちょっと任務の内容に間違いがあったみたいで、遅くなっちゃって……」


『それを想定して、ちゃんと間に合うように帰ってこれるはずだったんでしょ?』


「まあ、その……、話すと長くなるから」


場を濁すような物言いになっていたが、リンの言う通り、話せば長くなることではあった。どの道、いまはあまり油を売っている余裕はない。

その雰囲気が伝わったのか、杏果は割と早めに折れて、深々とため息をついた。


『……はぁ、まあいいわよ。学園長がわかってるならとりあえず問題はなさそうだし。ただ、私たち今年から2年生だからね? 体裁とか考えなさいよ?』


「おう……」

「わ、わかってるよ……」


『大丈夫だとは思うけど、ちゃんと無事に帰ってきなさいよ』


「うん」

「……なんだかんだ言って、杏果さんって甘いっすよね」

「……そうだな」


『ああ、そうそう』


一安心して、油断した将真たちに、思い出したように杏果がにっこりと笑う。


『帰ってきたら、こってり絞ってやるから』


『うげっ……』


前言撤回。問答無用という鬼畜であった。

そしてこの後、まさかの学園長も杏果に説教を受けることになるとは、誰も知る由がなかった。

前作最終話の更新から約一週間? くらいでの更新となりました。とりあえずは、今までと同じように、週一更新を目指して頑張ります!

勿論、ストックが貯められそうなら頑張って、後後更新速度を挙げられるようにはしたいですが……。


そういえば、前作のアクセス数が、今までにないくらい伸びてました。読者の皆様、感謝です!

当然の事ながら、人気作には遠く及びませんが、これでも僕としては大きな進歩です。

今後もこの調子でやっていきたいと思います。


それでは次回もお願いします!

評価等は受け付けているので、良ければぜひ、お願いしますねー。(・ω・)ノシ

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