1話 神の専属代理人
はじめまして!Å(オングストローム)です!
あらすじの通り、捻くれ者の私は、「なんで異世界に行ってチートを使っている人は決まって『ニート』とか、『ひきこもり』とか、『努力不足』とかなんだ?」と思ったところから書き始めて、初めて投稿してみました!
神の専属代理人という新しい主人公のジャンルを楽しんでいただければ幸いです!
「これはどういうことですか?!」
青年は、思わず不満の声を上げる。その先には黒い椅子に深く腰掛けた老人の姿があった。辺りはどこまでも白く、床も壁も天井もないような白い空間であった。青年の背格好は大きめといったところであり、髪は黒いエアリーヘアで、目つきはどちらかと言えば鋭い。どちらかと言えばであって細くはない。顔のパーツは整っている方であり、顎のラインは特に綺麗であった。
「そんなに声を荒げんでもよいじゃろう...。どうもこうもそのまんまじゃ」
青年の視線の先にいる老人は机に置いてある紙を指差し、しゃがれた声で言った。老人は、いわゆる老人で、頭の毛髪は消え去り、豊満な髭は真っ白であった。眉毛も勿論白く目を隠す程に生えていた。
「で、ですが....。私は前世あれだけ努力したというのに...」
「おぬしは....日本人じゃな?地方交付税交付金のことは知っておろう?」
青年は首を傾げる。地方交付税交付金は義務教育でも習うような内容で、自分がその知識について見落としている点は無いはずと思いながら。
「ええ。ですが、今の話との接点が....ってもしや!」
「気づいたようじゃの。前世で才能があったり、努力したりしていた人間は異世界でも大丈夫じゃろうっちゅうことでステータスは前世と変わらんレベルじゃし、能力もつかないことがほとんどじゃ」
「その逆はラノベ作品の通りだと」
老人はいかにもと頷き、紙に「承認」の印鑑を押そうとしたところを青年に阻まれる。
「長年の謎が解けましたが、納得はできません!そんなのあんまりだ」
「神であるわしがそんなこと気にするとでも?いくら天使が沢山いるからって仕事は年々増えていくばかりじゃ」
神はやれやれと溜め息を吐き、青年に向き直る。青年は指を眉間にあてて、何か思い当たる節を探っているようだった。
「わしは忙しいんじゃ。わかってくれるかの」
「...ならば、国庫支出金はいかがでしょうか?」
疑問の表情を浮かべる神に対して青年は続けて訴える。
「神様は御忙しいのでしょう?私はこれから赴く異世界にてあなたの仕事の一部を肩代わりして差し上げましょう。その代わり、それが遂行できるレベルの特殊能力とステータスにして頂きたい」
「ほう....。わしの専属代理人になるというのじゃな?」
「仰る通りでございます」
神は暫しの間黙考し、そしてニヤリと笑った。
「面白い。良かろう。その要求を呑むとしようかの」
「ありがとうございます」
神は机の上の紙に訂正を加えていく。そして告げる。
「橘 薫君。おぬしを我が専属代理人としてここに任命する」
「はい!」
薫は紙を受け取り、深々と頭を下げる。その姿勢はしゃんと伸びており誠意が伝わる物であった。
「能力等の説明は現地でわしの配下の者に聞くと良い。準備は良いかの?」
「いいですとも!」
そういうと光に包まれ、その光と共に異世界へと消えていった。
「....良いのですか?」
何もない空間から突然姿を現した女性の背中には大きな四枚の翼があった。
「良いじゃろう?あれしきのこと。それに奴はかなり有能な人材じゃ。こちらにリスクがない以上、打たない手はない」
「しかし...」
「ミカエル。おぬしもわかっておろうに。最近、冥界の動きが芳しくないのじゃぞ?」
その言葉を聞き、ミカエルと呼ばれたその女性は黙り込む。
「まあ、見ちょれ。わしの思い違いでなければ、あの男は近いうちにも功績をあげるぞ?」
「御身がそう仰られるのであれば、私はそれ以上は何も言いませんが、警告だけはさせて頂きました」
そう言うとミカエルは、再び空間に消えていった。誰もいなくなった空間でポツリと神が呟く。
「....さて、見せてもらおうかの。橘 薫とやら」
読んでいただきありがとうございました!如何でしたでしょうか?感想や評価も時間があればやっていただければと思う次第でございます!
初めてでまだまだ拙い部分も多くあるとは思いますが、どうかこの私めをよろしくお願いします!!