今日から僕は 99
誠は早速コンソールとモニターを見た。
『法術管制システム』
操縦桿の根元の実に目立たない所にそれらしいスイッチを見つけてそれを操作した。
画面が一瞬消え、次の瞬間に右端にサーベルの状態を示す画面と、よく分からない星マークの状態を示す画面が映った。
「これかな?」
「おい!新入り!とぼけたこと言ってねえでさっさと始めんぞ!カウラ!起動とチェック終わったか?」
キンキンとした甲高い要の声がシミュレーター内部に響く。
「もう終わった。とりあえず……」
「新米隊長さんの御託なんざ聞きたくねえよ!誠!テメエは突っ込んでアチラさんの誰かと刺し違えろ。アタシとカウラで残りを叩く!」
「西園寺!それは作戦とは……」
「いいんだよ!どうせシミュレーターだ!こう言うのは落とされて学ぶことが多いんだよ!誠!多少は05式のお勉強が出来たろうから、その成果とやら見届けてやんよ!」
「確かに一理あるな。神前少尉!とりあえず貴様が前衛で囮になれ。私と要で釣られてくるアイシャとパーラを叩く!」
「そんなベルガー大尉まで……」
上司二人はもう完全に自分が落とされることを前提に話を進めている。
誠は要にそう言われることは予想していたが、カウラにまでそんなことを言われるとはと思いながらとりあえず先頭に立って状況開始を待った。
「カウラ!そっちの作戦はできた?」
冷静な明華は淡々とそうたずねてくる。
「準備万端ですよ!姐さん!たまには勝たせてもらいますよ!」
「吹くじゃないの要ちゃん」
要が切れた。
『ちゃん』付けで呼ばれた途端、モニターの要の額に血管がういたような気がした。
「第二小隊、状況開始!」
カウラのその言葉で突入をしようとした誠の横を要の機体がすり抜けていく。
「西園寺!」
「西園寺中尉!」
叫ぶ言葉は届かない。
西園寺の機体は明華とリアナの長距離砲の弾幕の中に消えた。
「三番機!西園寺のことは忘れろ。アイシャとパーラが突っ込んでくるぞ!」
カウラは素手に気持ちを切り替えていた。
「しかし西園寺さんは……」
「落とされて少しは勉強しろと言うことだ。早速来たぞ第一小隊4番機、パーラだ。簡単には落ちてくれるなよ!少尉!」
逆上した要の突撃に不安を感じながら、誠は確認したパーラの機体に正面装甲を向けて正対する。
「回り込まれないようにして距離をつめる!」
誠はパルススラスターに火を入れた。
対Gコックピットのなせる業である急加速をして一気に距離をつめた。
「ここで上昇!」
パーラがライフルを構える前に急制動をかけ、脚部のスラスターに出力をうつして上昇する。
4番機の放つ弾幕が紙一重の所を掠めた。
「今だ!」
サーベルを抜き、パーラの機体の頭部に向けて振り下ろした。




