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今日から僕は 98

「おい!アイシャ。明華とリアナの姐さんはいるんだろうな?」 

 シミュレーションルームの入り口の自販機に寄りかかりながら、ジュースを飲んで一息ついているアイシャに要は甲高い声で噛み付いた。

「あの二人は高レベルなバトルしてるから暇になっちゃってさ……ってちょっと顔貸しなさいよ!」 

 誠と眼が合うとアイシャは要の襟首をつかんで自販機の陰に消えた。

「パーラはどうしたんだ?」 

「私がどうかしたんですか?」 

 自動ドアが開いて、パイロットスーツ姿のパーラが出てきた。

『ゲルパルトの人造人間の胸って全てペッタンコじゃないんだな……』 

 不謹慎と分かっていてもカウラとパーラの胸を見比べながら誠はそんなことを考えていた。

「神前少尉!」 

 そのような所にカウラの声が響き、誠は直立不動の姿勢を取った。

 相当滑稽に見えたのかパーラや自販機の裏から出てきた要とアイシャが思わず噴出す。

「別に、そんな、何も考えていないですよ!」 

「胸見てたでしょ。カウラちゃんの……」 

「そうだよなあ。こいつ盆地胸だもんな!まあそこが菰田あたりが崇拝する対象なんだろうけどさ。いやあアタシは羨ましいねえ。アタシくらいあると邪魔でさ。もうめんどくさくってしょうがねえや。それより中入んぞ!神前!ついて来いや」 

 要は文字通り胸を張ってシミュレーションルームに入った。

 中にあるモニターに明華とリアナの戦いの模様が映し出されている。

 明華の四式がその得意とするロングレンジを保ちつつ優勢に模擬戦を進めていた。

「やっぱ場数は明華の姐御の方が踏んでるからな。戦いのコツって奴をどれだけ知ってるかの差か」 

 要は一目で現状を理解した。

「しかし、うちはずいぶん豪華な面子なんですよね。あの二人だって東和の教導隊ぐらいならすぐ勤まる腕前ですよ」 

 画面を見ながらパーラがそう言った。

「叔父貴の奴のことだ。あっちこっちで恫喝でもしたんじゃねえのか?まあアタシはアタシの居た特務隊が解散しちまったから仕方なく来たんだけどよ」 

「それで運命の男の子をゲットしようと現在奮闘中と!」 

「アイシャ!表に出ろ!すぐさま額でヤニ吸う方法教えてやるからよ!」 

「ああ!怖いわ!神前先生!助けて!」 

 要とアイシャがじゃれあっているのを苦虫を噛み潰すような表情でカウラが見つめていた。

 画面上ではまだ戦闘が続いていた。

 両者距離を保っての撃ちあい。

 一瞬手元が狂ったのか、直線的な動きをとった明華の機体を捕らえたロングレンジライフルの一撃が、四式の腰部に直撃する。

「自分が有利な態勢になっても油断しないことだ。それでは続けて我々も出るぞ」 

 カウラはそう言うと一直線にシミュレーターの方に向かっていく。

 その先のシミュレーターの一つのハッチが開き、明華が顔をのぞかせた。

「油断したー!なんだ、あんた等も来てたの。丁度いいわ、丁度そこの二人が役不足で困っていた所だから。西園寺や誠もやるんでしょ?付き合うわよ」 

「要ちゃんも来てくれたのね!明華ちゃん、それじゃあ第二小隊対私達でやりましょうか!」

 いつものひまわりのような明るい笑顔でリアナが声をかけてきた。

 要はあきらめたかのようにそのままシミュレーターの一つに飛び乗った。

 カウラはリアナの言葉に弾かれるようにしてアイシャとパーラがシミュレーターに乗り込むのを確認しながらゆっくりと手前のシミュレーターに乗り込む。

 誠も成り行きにあきらめながらその隣のシミュレーターに乗り込んだ。



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