今日から僕は 88
「これ、やっぱり気になるよな。一応ナンバルゲニア中尉の銃だ」
呆れたような調子でキムがそう言った。
「あんなの撃てるんですか?シャムさんは?」
「撃てるからそこにあるんだよ。まあ熊狩りとかするときに使ってるって話だぞ。しかし、なんて言うか、S&W、M500。人類が使用可能な最大のハンドガンとか言うけど、どう見たってアホ銃にしか見えんよな?まあラバーグリップは中尉の手でも持てるよう細いのに換えてあるけど」
「おいキムの。ワシのチャカはどうした?」
いつの間にか後ろに立っていた明石がそう尋ねる。
「中佐。これです。そう言えば中佐ならナンバルゲニア中尉の銃、似合うんじゃないですか?」
「あんな連射出来んようなチャカは持たん。第一、手が痛うてかなわんわ。ワシはこいつがおうとる」
これも誠から見て巨大な銃だった。
確かに巨体の持ち主の明石が持てば別にどうと言うことはない銃だが、それにしても巨大である。
「なんじゃ、神前の。こいつが気になるのか?」
明石はそう言うとホルスターから銃を抜いてカウンターに置く。
「これって45口径ですよね」
「よう知っとるのう。MK23ピストル。隊長の家の蔵に眠っとったそうじゃ。まあうちじゃあ閉所制圧作戦がメインじゃけ、こんな相手をどつきまわせるような銃がええんじゃ」
明石の銃、シャムの銃を見た後、誠は情けないような気持ちで自分の銃を見た。
「そないな顔せんでええじゃろが。今回はワレ等には白兵戦任務はないけ」
「やはり隊長は白兵戦闘を予定しているんですね」
これまで自分の装備に眼をやっていたカウラが、明石の漏らした言葉に食い付く。
「まあ近藤中佐の首が今回の作戦目標じゃ。要らん殺生はしないのがおやっさんの趣味じゃけのう」
明石はそう言い残すとエレベーターに向かっていった。
その向こうからシャムと吉田がじゃれあいながら歩いてくる。
「シャムちゃんの銃!取りに来たよ!」
相変わらずハイテンションにシャムはそう切り出した。
先ほどまで話題になっていた超大型リボルバーと、ライフル用かと勘違いさせるほどの大きさの弾薬ケースが誠の前を通過していった。
「シャムさん。それ本当に撃てるんですか?」
まじめな顔をして誠はそうたずねた。
吉田にはその言葉がつぼに入ったようで、渡された自分の銃を置き去りにしながら、腹を抱えて笑い始めた。
「酷いなー俊平ちゃん。アタシはこれで……」
「四頭の猪をしとめたんだろ?」
シャムの言葉をカウラが続けた。
「確かに熊とかには最適だろうな。熊とかには」
ようやく笑いが収まった吉田が、自分のフルオート射撃が可能なグロック18Cピストルのロングマガジン付の銃をチェックしながら話す。
「こいつの場合、ただの重りだからな」
「俊平!ひどいんだー!アタシだって!」
頬を膨らませるシャムの言葉を無視して吉田は続けた。
「心配しなさんな。今の所、第二小隊が白兵戦に借り出されることは無いだろうから」
そう言い残すと吉田はそのまま立ち去っていく。シャムはその後にくっついていく。
「もう隊長の頭の中では作戦要綱は出来ているようだな。吉田少佐が言い切る以上、我々はアサルト・モジュールでの戦闘がメインになるだろう。神前、先にシミュレーションルームに行ってこい。少しでも錬度を上げておくのが生き残るコツだ」
カウラの言葉で誠はこの場を去ることにした。




