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今日から僕は 81

「吉田!いいところに来たな。まあなんかアイシャが盛り付けといてくれたから一緒にやろうや」 

 嵯峨は頭をかきながら、ハンガーへ入ってきた吉田に声をかける。

 いつの間にか周りには明華、リアナ、明石、マリア、それにカウラとアイシャと言う部長クラスの人間に囲まれていた。

 誠は席をはずそうとするものの、嵯峨ににらまれてそれをあきらめた。

「サムおじさんの様子はどうだい?」 

 とぼけた調子で嵯峨が切り出した。

「アメリカは高みの見物を決め込むつもりでしょう。さっきまではホワイトハウスで大統領が国務長官や軍、司法、外交の実務担当者が会議してましたよ。なんなら議事録でも拾いましょうか?」 

「やめとけ、やめとけ。そんなの枝葉がついたら面倒になるだけだ。どうせ事が済んだらサムおじさん主催の仲直りのパーティーでもやるつもりなんだろ。まあどうしてもと言うなら酒は俺が見繕ってやるとでも答えとけばいい。他の外野はどう動いてる?」 

 アイシャから注いでもらった燗酒をすすりながら、嵯峨は続きを聞こうとした。

「今回の件に絡みたがっている連中は数えるのが嫌になるくらいいますよ。アラブ連盟などは嫌がる西モスレムのケツを蹴っ飛ばして何でも良いから乱入しろって矢の催促ですわ」 

「やっぱりシンを外しといて正解だったわけだ。あいつは軍籍が西モスレムだからな。事が済んだ後そこを突っ込まれて痛くもない腹を探られるのは願い下げだ」 

「フランスは現在遼南首相府に大使が出頭してなにやら探ろうとしていますよ。まあ直接行動に出る口実でも探しているんでしょう。外惑星所属艦隊が秘匿任務でうろちょろしてます」 

 吉田はそこまで言ってアイシャから差し出された鮭と野菜炒めの乗った皿を受け取った。

「他にこの件で動くのは……ドイツとロシアはどう動いてる?」 

 ワインのグラスを手にしたマリアが口を開く。 

「ドイツはゲルパルトの駐留部隊がいつでも出動できるように準備していますが、ゲルパルトは同盟加盟国への介入禁止法を理由に出撃を固辞してますね、それにロシアですが……。やっぱりこの鮭旨いですねえ。油が乗ってて」 

「そうだろ?今の時期の沖取りの鮭は産卵前で一番油が乗ってるからな」 

 嵯峨が得意げにそう言う。

 しかし、明華からの突き刺すような視線を浴びると少しは自重したようで、眼で続きを話せと吉田にせがんだ。

「表面上は平静を装ってますが、裏では手を回してますね。これは未確認の情報ですがαチームを胡州の帝都に展開させているという情報もあります」 

 αチームと聞いてマリアは顔をこわばらせた。

「物騒な連中がでてきたねえ。まあ同盟公安部の連中には連絡するつもりだよ」 

「その必要は無いですね。これは同盟特務公安からの情報ですから」 

「なんだ。じゃあ安城のおばちゃんはそっちにお出かけしてるわけだ」 

「一応、後でおばちゃんて言ってたことは報告しときますわ」 

 マリアがそう言うと嵯峨は明華とリアナを見上げた。

 二人とも冷たい目線で嵯峨を見ているので、皿の上の野菜炒めをかきこんでその場をごまかそうとする。

「それじゃあ肝心の同盟最高会議はどう動くんだ?」 

 箸を止め、まじめな調子で嵯峨が吉田を見上げた。



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