表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/167

今日から僕は 79

「ちゃん!ちゃん!ちゃーんの、すったか、たったったー!飲んでー飲めない酒はなしー!じゃあ島田正人曹長!日本酒、中ジョッキ一気!行かせていただきます!」 

「技術部の根性見せたれー!」 

「整備班副長の実力思い知れー!」 

 ハンガーは完全に出来上がった技術部、運用部、警備部の連中に仕切られていた。

「ほれ!はれ!はれ!ほれ!ひれ!はれ!飲めや!はい!一気!一気!一気!」 

 誠から見ても間違ったベクトルで動き出す保安隊員。

 しかし、誠の目には別の存在が映っていた。

 一気騒ぎで盛り上がっている集団の隙を突いて、シャムと要が鮭が一匹丸ごと置かれているバーベキューセットを三つ占領している。

 要は得意げに遅れてきた誠に自分の戦果を見せようとして、誠がある光景に眼を奪われていることに気づいた。

「おい新入り!何見てんだ?」 

 呆然と立ち尽くしている誠に要はいぶかしげに尋ねた。

「あれ……と言うか、あの人何をしているんでしょう?」 

 誠が指差す先には、簀巻きにされて天井からクレーンで吊るされている技術兵がいた。

「あれか?やっぱ珍しいか?」 

「そりゃそうですよ!誰も助けないんですか?」 

「何言ってるの?彼は今回の宇宙のたびの生贄に自ら志願した奇特な人よ!みんなでちゃんと成仏させてあげましょう!」 

 誠の大声に気づいたのか、アイシャが抱きついてくる。

「なんですか?アイシャさん!それより、あの人助けないと……って、あの人、誰です?」 

「なに?知らずに命乞いしてたの?あれは鎗田司郎曹長。女の敵よ!」 

「は?」 

 猿轡を噛まされて吊るされている鎗田が、必死に事情を知らない誠に向かって全身でアピールする。

「アイシャの。いい加減許してやらんのか?あの馬鹿」 

「いいえ!パーラの純情をもてあそんだ罪は決して消えません!パーラが許すと言うまで……」 

「アタシは別にもうどうだって良いんだけど……」 

「分かっているわよ、パーラ。あなたはそう言いながら、かつての思いから立ち直ろうとしているのね!でもそんなあなたの暗い過去を、明るい未来へと昇華させるためには生贄が必要なのよ!」 

「アイシャ。アタシをからかってんじゃないの?」 

「ああ!友情を守るためならアタシは鬼にだってなるわ!」 

「いいから人の話を聞け!」 

 一人で盛り上がっているアイシャを、パーラは思わず怒鳴りつける。

「酷いわ!パーラちゃん!せっかくの私の友情を……」 

「もう良いわ。いい加減降ろしなさいよ、あれっ……て、要とシャム!クレーンぶん回すの止めなさいよ!」

 いつの間にかクレーンの操作盤で哀れな生贄をぶん回している要とシャムに、パーラは思わず声を上げていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ