今日から僕は 74
突然アラームが鳴り、ロックオンされたことを示す表示がモニターに示される。
「何処だ!」
操縦桿を握る手に力を込め、デブリの中で自機をランダムに振り回す。
前衛のアイシャ機がデブリの中を掃射する。
多くはデブリを打ち抜くが、何発かが誠の機体をかすめた。
デブリの外れで機体を立て直すと、ようやくアラームが切れた。
しかし、そこで誠は自分が致命的なミスをしていることを悟った。
デブリの散らばっている範囲が狭いのだ。
ここから出ればほぼ確実に明華の狙撃に逢う。
かと言ってそう広くない範囲を動き回っていれば、ほぼ特定された場所の周りを飛んでいるアイシャの襲撃にあう。
『とりあえず、囮なんだ。時間さえ、時間さえ稼げれば!』
そう言いきかせるものの、体は次第に緊張のあまり硬直を始める。
とりあえずアイシャ機が突入をしてこない所から見て、まだこちらの正確な位置は確認されてはいないのが唯一の救いだった。
『リアナさん!早くしてください!これじゃあ支えきれません!』
誠は心の中でそんなことを思いながらデブリ帯の中心で機体を安定させる。
呼吸はかなり乱れている。
心拍数が上がる。
額からの汗もかなりの量だ。
再びロックオンされたことを示す警報が鳴る。
機体を振り回しにかかった時、あることに気がついた。
東和軍本部で05式のシュミレーターをやったときに比べて、明らかに機体の動きがいいのだ。
実際ここまで狭い範囲に追い詰められたら白旗を揚げるところだが、機体をランダムに動かしているだけでロックオンされても脱出できた。
『この機体……。いけるかもしれない!』
誠はそう思うとデブリの入り口でワザとゆっくりと機体を前進させてみた。
アイシャは乗ってきた。
警報が鳴るが、誠にはかわせる自信があった。
レールガンの連射速度はそれほど速くない。
デブリに機体を沈めるだけで、すぐにアイシャの射界から脱出できる。
消えた誠機を探すべく、アイシャが機体の速度を緩めた。
『今なら!』
誠がデブリから飛び出したとたん、アイシャとは別の方向からロックオンされた警報が鳴った。
「許大佐か!」
誠が一瞬自分の未熟さを後悔するが、回避行動に移りかけた瞬間にアイシャ機が背中からの狙撃を受けて撃墜された。
「リアナさんが間に合ったのか!」
誠はすぐさま明華の待機地点と思われる戦艦の残骸の後ろからやってくる友軍機を見つけた。




