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今日から僕は 73

 誠は各種センサーの動きを見ながら、とりあえずデブリの濃い宙域の入り口で機体を安定させた。

 センサーに反応は無い。

「どうせ囮だ。見つかるのは覚悟のうえで……」 

 パッシブセンサーの出力を上げる。

 しかしデブリの中である。

 05式のステルス性能は今の所、主要国で主力機として配備されているアサルト・モジュールでも屈指だ。

「見つかるわけが……」 

 センサーに一瞬、高速で移動する影がうつった。

「来たな!」 

 05式の腰に下げられたサーベルを抜き、全周囲型モニターでセンサーに影がうつったあたりを目視する。

 ちらり、ちらり。

 確かに何かが接近してきているように感じた。

『アイシャさんのメイン装備は120mmレールガン。そして、許大佐のメイン装備は250mm重力波ライフル。おそらく前衛はアイシャさん!懐まで飛びこめなければ勝ち目は無い』

 操縦桿を握る手が、ぬるりとすべるほど汗ばんでいる。

 こめかみの辺りが痛い。

 意識しなくても心音が聞こえる。

 学生野球の試合、東方大学との3部入れ替え戦、一点を勝ち越した直後の九回の裏二死満塁の場面を思い出した。

「あの時はインコースに投げたカーブがすっぽ抜けて押し出しの死球だったんだな」 

 なぜそんなネガティブなことばかり思い出すのだろう。

 誠は自分にもっとプラスになるような暗示をかけようとするが、そうすればするほど呼吸が荒くなっていくのが分かる。

 その時、警戒していた宙域に明らかに何か動くものを見つけた。

「来るか?」 

 操縦桿を握る手が重い。

 まるで他人の手だ。

 誠はいったん操縦桿から手を離し、ゆっくりと深呼吸をした。

 もう一度操縦桿を握る。

 少しは腕も動くようになった。

 誠は頭部の望遠モニターで影がちらついている宙域を拡大する。

 予想通りだ。

 アイシャはリアナの重力波ライフルでの狙撃に備えて、波動パルスエンジンの特性を生かしたジグザグの線を描きながらこちらに向かってきている。

 周りにはいくつかの大き目のデブリ。

 おそらくはそのどれかの裏で、長いライフルの銃身を固定し索敵している明華の機体があるだろう。

 試しに少しだけ機体を前進させる。

 撃ってこない。

 だがこちらが確認されていないという保障は無い。

 まだ前衛に当たるアイシャが到着していないためにこちらの位置が把握済みでも自重している可能性がある。

 さらにデブリの中を移動しているリアナ機のことを考えれば、自分を確実に倒せる状況であり、なおかつ何処から飛び出るか分からないリアナに備えることが出来る状況を待っていると考えた方が自然だ。

 考えがまとまると、誠はまた少し機体を後退させた。



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