今日から僕は 72
シミュレーターの中。
ハッチを閉めると自動的にマシンは起動し、コンソールが光り始める。
「05式と配置は同じか。場所は宇宙空間。自機の状況は……!」
誠は残弾を示すゲージを見つめて固まった。
「どうしたの?なにか不思議なことでもあったの?」
通信ウィンドウが開き、リアナが声をかけてくる。
「あのー、残弾がゼロなんですけど、これって間違いですよね?」
「ああそれね!要とカウラが『あいつには飛び道具は使わせないでくれ!』って言うから神前少尉の機体はレールガンやミサイルの装備は無いのよ」
「手ぶらで何しろって言うんですか!」
無情に答える明華に向かい、思わず誠は叫んでいた。
「ちゃんと格闘用のサーベルがあるでしょ?それに一応この中では撃墜スコアーの多いリアナがついていてくれるんだから。ハンデよ!ハンデ」
誠はどうにも釈然としなかった。
これから向かう宙域はかなりの危険度を伴っているはずだ。
「サーベル一丁で何をしろって言うんですか?」
「まあいいじゃない。実戦でも要ちゃんとカウラちゃんが守ってくれるわよ!」
能天気にリアナがそう言ってくれる。
誠はあきらめて他の計器を確認する作業に入った。
素手にサーベルのみだが、それ以外の障害は何も無い。
「ルールは簡単よ。相手を全滅させた方の勝ち。それでいいわね?リアナ」
「ええいいわよ。じゃあ誠ちゃん、お願いね」
青いリアナの味方機と、赤い明華とアイシャの機体を確認すると誠は操縦桿を握り締めた。
「誠ちゃん」
リアナが味方機向けの秘匿回線を開いてきた。
「明華ちゃんのことだからたぶん私から先に倒す作戦で来るわね。だから囮になってくれないかしら?」
「囮ですか?」
確かにリアナが落とされてサーベル一丁しか装備していない自分が残されれば、袋叩きにされるのは実戦経験が無くても分かる。
それにリアナは上官である。気の弱い誠が逆らえるわけも無い。
「分かりました。鈴木中佐はどう動くんですか?」
「お姉さんでいいわよ。とりあえずこのデブリの多い宙域での戦闘。誠ちゃんに相手を引きつけてもらってる間に迂回して後方を突く作戦で行きましょう」
「了解しました!じゃあデブリ帯の奥に下がり……」
「あんまり中に入ったらおとりの意味が無いわ。とりあえずデブリの際でチョコチョコ動き回って相手をひきつけるのよ」
誠は実戦経験者であるリアナの指示に従うべく頷いた。
「リアナ!そっちの作戦は決まった?」
通信ウィンドウが開き、明華の甲高い声が響く。
「いいわよ、じゃあ始め!」
リアナの一声で模擬戦が始まった。




