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今日から僕は 71

 誠は居住区の私室に入った。

 個室である、そして広い。

 正直、彼の下士官用寮の部屋より明らかに広い。

「ずいぶん少ないわね。せっかくいろいろとグッズ見せてもらおうと思ったのに……。これは画材ね。とりあえず机においておくわ」 

 アイシャはそう言うと警備隊員が運んでおいてくれたダンボールを一つ机の上に置いた。

 誠は着替えなどをロッカーに詰め込んだ。

 それほど物はない。手間がかかるわけでもない。

 画材などは後で片付けよう。そうすると特にすることも無かった。

「誠ちゃん!居るー?」 

 部屋のドアの所にリアナが立っていた。隣にはきつい目つきの明華が居る。

 誠は思わず二人の佐官に敬礼をする。

「別にそんなに硬くなんなくてもいいわよ。それよりちょっとシミュレーションルームまで来てもらえるかしら?アイシャちゃんもお願いね!」 

「はい?」 

 どこか間抜けなリアナの言葉に誠は脱力感を感じながら作業を中断して部屋を出た。

「お姉さんどうしたんですか?アタシも連れて行くなんて」 

 画材のダンボールを弄っていたアイシャが不思議そうにリアナに語りかける。

「アイシャちゃんも一応パイロット経験者だしね。聞いたでしょ?吉田君から今回の作戦の概要」 

「一応聞きましたけど……。予備機を出すんですか?」 

 リアナの言葉は今にもスキップを始めるんじゃないかと言うくらい明るい。

「予備機はあくまで予備よ。一応、積んではあるけど可動状態に持ち込むのには少し時間がかかるわね。しかもそんな予算も無いし」 

 淡々と明華が答える。

 隊長と並ぶ大佐と言う肩書きだけあり、その一言に誠もアイシャも答える言葉が無かった。

 再びエレベーターでブリッジ下の階まで行き、無人のトレーニングルームの隣の部屋に連れ込まれる。

 シミュレーションルーム。仕事を終えた整備員達が遊びでアサルト・モジュールのシミュレーションシステムを使っていた。

「ちょっと何してるの!島田曹長!シミュレーターは玩具じゃないんだから!とっとと下に行って食堂でお茶でもすすってなさい!それともトレーニングルームで基礎体力訓練でもする?」 

 明華がそう大声を張り上げると、島田、キムの両曹長をはじめとする整備員達は、一度、直立不動の姿勢で敬礼をすると、蜘蛛の子を散らすように全力疾走でエレベーターの方へ消えた。

「ああ!我が部下ながらウチの隊には規律と言うものが無いのかしら?まあ隊長があの駄目人間一号だからしょうがないけど」 

「明華ちゃん。それは言い過ぎなんじゃ……」 

 高飛車に隊長を切り捨てる明華にリアナがフォローを入れる。

「神前少尉。とりあえず東和軍のパイロット候補がどの程度の腕か確かめさせてもらうわよ」

 そう言うと明華は6台あるシミュレーターの一つに乗り込んだ。

「ごめんね、誠ちゃん。明華ちゃんは言い出したら聞かないから。一応私が僚機でやってあげるから。アイシャちゃんも、お手柔らかにね!」 

 リアナもシミュレーターに乗り込む。

「あのー、僕は……」 

「いいんじゃないの?とりあえず気楽に行きましょ!」 

 アイシャがウィンクしながらシミュレーターに乗り込む。

 誠も置いてけぼりを食わないようにシミュレーターに乗り込んだ。



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