今日から僕は 62
「おはようございます……」
誠は詰め所に定時少し前に顔を出した。
そしてそのまま顔面にはれぼったさを感じながらようやっと自分の椅子に座った。
「どうじゃ?ワレまた潰れよったな?」
明石が昨日あれだけ飲んだでいたというのに、平然として誠に話しかけてきた。
「本当にすいません。僕は酔うと記憶が飛んじゃうんで、何か迷惑かけましたか?」
誠のその言葉に周りが失笑した。誠は穴があったら入りたい気分だった。
「いいじゃん!面白ければ!」
要はやけ気味にそういって見せる。
「要ちゃんはああいうノリ大好きだもんね!」
「何言ってんだよ!シャム!別にこいつの裸なんか!」
要が慌てて否定する。
「また脱いだんですか?」
誠は恐る恐るカウラにたずねた。
カウラは表情も変えずに頷く。
がっくりと肩を落として誠は机に突っ伏した。
「でも、やばいんじゃねえの?昨日、介抱して部屋に放り込んだのカウラと要だろ?菰田の奴がなんか動き出してるみたいだし……」
吉田はガムを噛みながら無責任にそう言った。
「菰田先輩が何か……」
「鈍い奴だな。あいつ馬鹿だから勝手にカウラのファンクラブ結成して、そこの教祖に納まってるんだぜ。俺もタクシーで帰ろうとしたらもうお前等が誠を連れて出てっちゃった後だったからな、あいつかなり荒れてたぜ」
「ずるいよね、カウラちゃんだけにファンクラブがあるなんて!」
シャムが見当違いの切り口でそう言った。
「馬鹿!お前のもあるんだぞ」
「えっ!本当!誰が仕切ってるの?」
吉田の無責任な一言にシャムが食い付く。
「馬鹿話はこれくらいにして。今度の演習の概要。ちゃんと読んでおけ」
カウラは吉田達の与太話を無視して、厚めの冊子を誠に手渡した。
「これが初の部隊演習ですか……それにしても本当に胡州の第三演習宙域使うんですか?」
「それがどうした?」
カウラは無表情なままそうたずねる。
それを見た誠は、まったくの無表情と言うものがどんな顔だか判るような気がしてきていた。
「あそこは前の大戦で大量のデブリや機雷なんかが放置されているって話じゃないですか?そんな所でいきなり……」
「何だ誠?ビビってんのか?情けねえなあ」
要はあおるようにそう言った。
「別にそんなんじゃ……。分かりました!早速これ読みます」
「役所の文章は読みにくいからな。とは言えそれが仕事だ、今日中に頭に叩き込んでおけ」
カウラはそう言うと自分の席に戻って、書類に目を通し始めた。
誠もまた難解な語句を駆使している演習概要の冊子を読み始めた。




