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今日から僕は 59

「離れろ!アイシャ!」 

 思わずカウラと要が二人で叫んだ。

 アイシャは要の反応は予想していたが、カウラからそんな言葉を聞くとは思っていないとでも言うように誠から手を離した。

「へえー。カウラもようやく自分の気持ちに素直になれるようになったのね!嬉しい」 

 アイシャはワザと大げさにそう言った。

 カウラはその言葉で、自分が何を言ったのか理解したとでも言うように誠の視線から目を逸らした。

「そのー、あれだ。私の部下なのだから、それなりに……」

 小声で恥ずかしそうに下を向くカウラ。

「もう!ピュアなんだから!」 

 そう言ってけたたましい声で笑うとアイシャは誠の飲みかけのジョッキを取り上げて煽った。 

「じゃああれを何とかしろ!アイシャ!」 

 要が指差した所にサラと島田がこちらの喧騒をよそに、仲良く烏賊玉を突いていた。

 全員の視線を浴びて戸惑う島田。そしてそれを無視して烏賊玉を食べているサラ。

「島田!テメエ!」 

「男の仁義を知らんのか!」 

 菰田とキムがそう叫ぶ。

 ようやく全員が何故自分を見ているかわかった島田はおずおずと手を引くが、サラがいかにもおいしそうに島田が焼いた烏賊玉を食べていた。

「サラ!あんたって人は!」 

 アイシャが立ち上がろうとするところを、明石が重い腰を上げて止めた。

「なあクラウゼの。ここは押さえてくれや。せっかく楽しくやっとるんじゃ。野暮はいかんよ。まあ一杯やれや」 

 明石はそう言ってアイシャの開いたグラスに日本酒を注いだ。

 アイシャはもうかなり出来上がっているらしく、気にせずそれを一息で飲むとひっくり返った。

「タコ中。潰れちゃったぜ」 

 要はもうすでに寝息を立てているアイシャを指してそう言った。

「奴も飲めないたちだからな。戦うためだけに作られたからこんな席には向いちゃいないんじゃろ。カウラ後で送って行ってやれや」 

「分かりました。パーラと同じマンションだったな?」 

 カウラはそう言うと烏龍茶を飲んだ。

「そうね。とりあえず放り込んでおけばなんとかするでしょ」 

 パーラはそう言うと一口ビールを飲んだ。

「確かにあの部屋は凄いからな、誰かさんの部屋みたいに」

 カウラが楽しげに語る。そんな彼女の言葉に誠は寝ているアイシャを見つめた。

「僕の部屋ってそんな凄かったですか?」 

 その誠の言葉にカウラとパーラが凍りついた。

「まあな、オメエの部屋アニメのヒロインのポスターだらけだったじゃねえか」 

 要は呆れながらそう言うと、胸のポケットからタバコを取り出した。

「禁煙だよ!ここは!」 

 吉田に豚玉を焼かせながらじっとこの騒ぎを見ていたシャムがそう突っ込みを入れた。

「叔父貴がいるときだけ喫煙可って……くわえてるだけだっての!ったくお子ちゃまはこれだから……」 

 目を細めてタバコをしまう要。

「お子ちゃまじゃないもん!中尉さんだい!」 

 シャムは頬を膨らまして抗議する。

 誠は展開についていけず黙ってたこ焼きを突いていた。



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