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今日から僕は 52

 着替えが終わって、誠はロッカールームから出るとそこには明石が立っていた。

「どうじゃ?練習初日は」 

 いかにも嬉しそうに、明石は誠の目を見つめてつぶやいた。

「野球の動きが戻ってないですね。球のキレも球速もイマイチでしたから。肩壊してからこんなに投げ込んだのは初めてですから」 

「ほうか?そいじゃあワシの奢りで島田や菰田、キムあたりを誘ってあまさき屋で飲むか?」

 いつものサングラスに悪趣味な背広姿の明石の口元に笑顔が浮かぶ。

「本当っすか!途中で無しなんか……」 

 遅れて出てきた島田がそう叫ぶのをゆっくり頷きながら明石は聞いていた。

「島田の!じゃあワレが菰田とキム連れてこいや。ワシは誠と……」 

 笑顔だった明石の顔が一瞬凍りついた。

「当然、私達もいいんでしょ?」 

 その視線の先には着替えを終えた白いワンピース姿のアイシャがそう尋ねる。

 その後ろには全てを使い果たしたというような表情のサラとパーラがよたよたとついてきていた。

「うわあ、ワレは本当にタイミングよく来るもんじゃのう。ワシも男じゃ!一度口から吐いた言葉は呑まん!」 

 明らかに虚勢と判りながらも誠と島田はそう言い放つ明石に同情の視線を送る。

「へえー、タコ隊長の奢りかよ!どうするカウラ」 

 さらに現れた要がカウラにそう尋ねた。

 カウラは誠のほうにちょっと目を走らせた後、ゆっくりと頷いた。

「じゃあアタシも行くー!」 

 フライトジャケットにジーパン、手には皮手袋と言う宇宙刑事モノの登場人物をミニマムにしたようなシャムが駆け寄ってそう叫んだ。

 自分の安易な一言が招いた事態に明石の頬が少し引きつっている。

「分かった、分かった!とりあえずあまさき屋の前に集合じゃ!全てワシのおごりじゃ!」 

「やったね!」 

 シャムは突然、廊下の窓の向こうから飛び込んできた吉田とハイタッチをしながらそう答えた。

「良いんですか?明石中佐」 

 誠はこんなはずではなかったというように立ち尽くしている明石に声をかけた。

「ワシのことなら気にするな。シャムや隊長みたいに金銭感覚が狂うとるわけじゃないけ」 

 そう言いながら、明石の顔が紅潮しているのが誠にも分かった。

『悪いことをしたな……』 

 誠はそう思いながら、駐車場へ向かう明石のあとをつけていった。



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