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今日から僕は 51

 誠は入力を終えても興奮が冷めやらずにいる自分を感じていた。

『専用機か……』 

 感慨深いものがあった。

 特機パイロット候補を志願したものの、シミュレーターでの成績がギリギリでパイロットとしてなら輸送機部隊以外に引き取り手が無いと言われていた。大学の先輩で同じく幹部候補生上がりの佐官には彼の装備開発研究部門に誘われたこともあった。そんな自分に、最新式アサルト・モジュールのパイロットの役割が回ってくるとは思ってもいなかった。

 しかも乗るのは特殊な精神感応システムを搭載していると言う触れ込みの最新鋭機で自分の専用機。

「神前君。ちょっと顔、ニヤケてるわよ」 

 明華のそんな声で急に我に返った。

 各種設定の終了を示すランプがモニター上に点灯していた。

「とりあえず今日はこんな所ね。ご苦労様」 

 その言葉に押されるようにして、前部装甲とハッチを開いて、カウラと要が言い争っている間に入り込んだ。

「なんだ?新入り。もう終わったのかよ」 

 要がいかにも不満そうに、カウラの襟首をつかんでいた手を離す。

 周りでキャットファイトを期待して集まっていた整備員達が一斉に散っていく。

「二人とも何をそんなに揉めていたんですか?」 

 誠はエレベータから降りるとようやくつかみ合いを止めて離れた二人に話しかける。

「別に良いだろ?」 

 そう言ってグラウンドに向かおうとする要。

「神前少尉にも関係が有るんだ。実は……」 

「カウラは黙ってろ!」 

 振り返って戻ってくる要。殺伐とした空気が二人の間に流れている。

 誠はただ何も出来ずに二人の上官たちが口を開くのを待っていた。

「かなめー!カウラー!」 

 ハンガーの入り口から大声が響いた。

 アイシャが野球部のユニフォーム姿でこちらに手を振っている。

「うっせえな!この腐女子!こっちは取り込んでんだよ!」 

 今にも食って掛かりそうな調子で要が噛み付いた。

「明石中佐がもう一段落ついたころだろうから、呼んで来いって!」 

 アイシャは悪びれることなくそう言った。

「分かった!すぐ準備するから待っててくれ!」 

 カウラはぶつぶつ一人愚痴っている要を無視するように言った。

「喧嘩はとりあえず中断だな」 

 要はそう言うとハンガーの奥に歩き始めた。

「そう言えば西園寺さんは何をするんですか?」

 不思議そうに尋ねる誠に要は呆れたようにたれ目でにらみつける。 

「とりあえずアタシは監督だからな。ノックとか連係プレーの指導とかいろいろやることはあるんだ。まあタコ中に言わせるといざ乱闘になった時の要員でアタシがいるんだと」

「それ事実じゃないの」 

 要の肩に手をかけて笑顔を浮かべるアイシャ。要はその手を振りほどいて頭を掻いた。

「それにピッチングマシンを買う予算が無いから打撃練習ではアタシが投げることもあるんだ。それじゃあアタシも着替えるわ」

 そう言って奥の野球部の備品置き場兼ロッカーとなっている物置に向かう要。 

「西園寺じゃあ火に油を注ぐようなことしか出来そうにないがな」 

 カウラはきつい口調で去っていく要にそう言い放った。

「今度の演習じゃあ背中に気をつけろよ」

 要が聞きつけて振り返ってカウラを指差す。カウラはそんな要の声を無視するように入り口で立ち止まってアイシャから渡されたスパイクを履いていた。

「新入り!とりあえず後でノック百本やるからな!」 

 誠を指差していかにも腹立たしげにそういうと要はそのまま階段の奥の通路へと消えた。

「分かりました!」 

 誠はそれだけ言って急いでブーツを脱ぎ捨ててスパイクを履こうとして、転んだ。



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