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今日から僕は 29

「邪魔するぜ」 

 嵯峨はそう言うと、男を連れて扉の中に入った。

 中では派手な背広を着た、どう見ても堅気とは見えない男が二人、夏だと言うのに気障な紺色の三つ揃えに黒いネクタイの男からの指示を仰いでいる最中だった。

 嵯峨は素早く抜刀した。ダンビラが宙に舞った次の瞬間には、二人の男の胴体は首を失って倒れこんでいた。鮮血が部屋に飛び散り首から噴き上げる血が壁や机に飛び散った。

 気障なネクタイの男は、さすがに鉄火場を踏んで来たらしく、すぐさま拳銃を抜いて嵯峨に狙いを定めようとしたがその手を嵯峨を導いてきた若い男の手に握られた拳銃の弾が貫通した。気障なネクタイの男の手の拳銃は床に転がり、思わず傷を押さえたまま地に伏せてじっと嵯峨のほうを見上げる。

 嵯峨の制服と部隊章がその男の目の中にはいってきた。それを確認するとあきらめたように一度床に視線を落とした後、ようやく合点がいったかのように作り笑いを浮かべる。

「これは遼南上皇ラスコー陛下……。先の泉州公、嵯峨惟基特務大佐殿とお呼びした方がいいですかね?今日はどんな用事ですか?血を見るにはずいぶんと早い時間のご訪問じゃないですか」

 男はそう言うと刀の刃先を確認している嵯峨を見上げた。そこに覚悟の色のようなものを見つけた嵯峨は、安心したように左手に持った刀を担ぐとそのまま床に膝をついている男の前に立った。 

「さすがだ。『皆殺しのカルヴィーノ』と呼ばれただけの事は有るねえ。地獄の超特急に乗るのが決まったと言うのに俺をにらみつけるとはその度胸はたいしたもんだ。用って分かってんだろ?オメエさんがウチの馬鹿を一匹拉致った件に決まってるじゃねえか」 

 カルヴィーノは悪党らしくニヤリと笑った。そしてそのままよたよたと立ち上がると血が流れている右手で乱れたネクタイを締めなおした。

「何を根拠にそんな……」 

 その言葉に嵯峨はカルヴィーノの座っていた机を蹴飛ばした。

「舐めんじゃねえぞ糞餓鬼!テメエの所の台所はウチが下部組織を四つ潰して、火の車だってことは分かってるんだ。どうせこのまま行ったら次の旦那衆の会合次第で、そこに飾ってある家族ともども地中海で魚の餌になることくらいお見通しなんだよ!」

 カルヴィーノの肩が震えていた。

「そこで博打に出たわけだが……相手が悪かったな」 

 嵯峨はそう言い終わると懐からタバコを取り出した。

「この部屋は禁煙ですよ。大佐殿」 

 青ざめた顔をしながらも東都のイタリアンマフィアを統べるボスとしてのプライドから、カルヴィーノは引きつった笑みを浮かべながらそう言った。。

「オメエもタバコやらねえんだったよな。まったくこの業界で禁煙主義なんてつまんねえ人生送ったな?」 

 嵯峨はカルヴィーノの言葉を無視してタバコに火をつける。

 カルヴィーノは肩を落として嵯峨の姿をただ見つめていた。

「それはそうと何か言い残すことはねえか?」 

 嵯峨は低い声でそう言った。カルヴィーノは特に取り乱した風でもなくもう一度ネクタイの緩みを直すと軽く首を振った。そして両手を挙げて静かに目を閉じる。

「それじゃあ、先に地獄で待っててくれや」 

 嵯峨の剣の切っ先が、カルヴィーノの喉下に突き刺さった。鮮血がタラタラ嵯峨の手にある兼光の刃をを伝って滴り落ちる。カルヴィーノは安心したような笑みを浮かべると膝から崩れ落ちて嵯峨の剣に吊り下げられるように床に膝を突いた。

 それを確認するようにして、嵯峨はカルヴィーノの喉から剣を抜いた。力を失ったカルヴィーノの上体がそのまま床に倒れこむ。

「ったく。どいつもこいつも俺に無駄な仕事させやがるな……」 

 じっとカルヴィーノの死体を眺めながら嵯峨はそう呟いた。嵯峨はそう言うと兼光に着いたカルヴィーノ達の血を右の袖で拭った。嵯峨の後ろにいた男は静かに手を合わせてカルヴィーノを弔う姿を見せた。



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