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今日から僕は 162

 飛び出そうとするリアナを制して明華が立ち上がる。

 島田、要、サラ、パーラはさすがに身の危険を感じたのか人影にまぎれて逃げ出す。

「大丈夫ですか、アイシャさん」 

 さすがにふらついているアイシャに誠が声をかけた。

「らいろうふ、らいろうふなのら!」 

 今度は本物の酔っ払いである。いつもなら白いはずの肌が真っ赤に染まっている。

 呂律の回らなさは、いつも自分が一番に潰れるのでよくわからないが、典型的な酔っ払いのそれと思えた。

「まころらん!まころらんね。あらしはれ!」 

 アイシャはネクタイを緩めた。

「苦しいんですか?」 

「りらうろら!ぬるのら!」 

 さらに襟のボタンまで取ろうとしているので、思わず誠は手を出して止めた。

「あらあら。久しぶりねえ、アイシャちゃんてば!」 

「どうせ島田と西園寺のアホが仕組んだんでしょ」 

 そう言うと明華は人垣に隠れようとした島田を見つけて、周りの整備員に合図を送った。取り押さえられる島田。

 続いてサラ、パーラが捕まって引き出されてくる。三人を見て事態を悟った西だが、あっという間に捕まりこれも明華の前に突き出された。

「西園寺の馬鹿は後でお仕置きね」 

 そう言うと明華は引き立てられてきた四人を見下ろして、誠がこれまで見た事が無いような恐ろしい表情を浮かべていた。

「ぎりゅるぶろうろの!あらしのいれんはれすれ!」 

 アイシャが手足をばたばたさせて叫ぶので、竹刀を技術部員から受け取ったまま立ち尽くす明華はアイシャのほうを向いた。

「アイシャ。あんたはしゃべらなくてもいいから」 

「そうれはらいのれす!わらしは酒のりかられ!」 

 そう言うとアイシャは誠に抱きついてきた。

「なにすんだこの馬鹿は!」 

 天井から要が降ってきて、アイシャを誠から振り解こうとする。しかし、運悪くそこに明華の振り下ろした竹刀があった。

「痛てえ!姐御、酷いじゃねえか!」 

「主犯が何を言ってるの!隊長。こいつ等どうしますか?」 

 要に竹刀を突きつけて、後ろで騒動を眺めていた嵯峨に尋ねる明華。

「俺に聞くなよ。まあ一週間便所掃除でいいんじゃないの?」 

 嵯峨はそう言うと何時ものようにタバコを吸い始める。

「じゃあそう言う訳で。誠はアイシャを送って……」 

「姐御!そんなことしたらこいつがどうなるか!」 

 要が叫んだのはアイシャが誠に抱きつくどころか手足を絡めて、そのまま押し倒そうとしていたのを見つけたからだ。

「サラ、パーラ。あんた等アイシャを取り押さえて連れて行きなさい」 

 誠はアイシャから引き剥がされてようやく一息ついた。

「大変だったわねえ」 

 リアナが自分が飲んでいたサイダーを誠に渡す。

「まあ、そうですかね」 

 技術部員の痛い視線を浴びながら、誠は大きく肩で息をした。

「俺は楽しめたからいいけどな」 

 誠の肩を叩き去っていく吉田。自分が大変なところに来てしまったと実感する誠だった。



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