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161/167

今日から僕は 161

「じゃあ失礼して。いただきます」 

 誠は肉を拾いポン酢につけて口に入れる。独特の獣臭さの後、濃い肉の味が口に広がる。そして次々と肉を放り込むとさらにその味が口に滞留して気分が晴れるような感覚に襲われた。しかし、その後ろでは西を呼びつけた島田と要とサラ、パーラがなにやらひそひそ話を始めていた。

 とりあえず要が怒るだろうと読んで、誠は知らぬふりで鍋に明らかに入れすぎの豆腐をつまんでいた。

「ちょっとしたショーが見れるかもな」 

 同じくなぜか豆腐を突いている吉田がそう誠に呟きかけた。

「ショーですか?」 

 誠がぼんやりと繰り返す。

 アイシャはと言えばシャムの猫耳を取り外して自分につけたりして遊んでいる。

「クラウゼ大尉。よろしいですか?」 

 西が日本酒の瓶を持ってアイシャに話しかける。

「西キュン!なあに?お姉さんに質問か何か?」 

 上機嫌にアイシャが答える。

 誠は何が企まれているか分かった。

 カウラが真似ていたアイシャの飲みすぎた姿。それを再現させようと言うのだろう。

 島田と要はラム酒を飲みながら、サラとパーラはビールを飲みながらじろじろとアイシャを観察している。

「今回の活躍凄いですね。三機撃墜ですか。保安隊の誇りですよ」 

「褒めたって何にもでないわよ。第一、ここに七機撃墜の初出撃撃破記録ホルダーがいるのに」 

 そう言うとアイシャは空いたコップを西に突き出した。西が日本酒を注ぐ。

「そんなに飲めないわよ!」 

 そうアイシャが言うのを聞きながらも、わざとらしくコップに8分ほど日本酒を注いだ。

「おい、西。何してんだ?」 

 わざとらしく島田が近づいてくる。上官である彼に西が直立不動の姿勢で敬礼する。

「なるほど、上司にお酌とは気が利いてるじゃないか。じゃあ一本行きますか!総員注目!」

 島田が大声を上げる 彼の部下である技術部整備班員が大多数を占める宴会場が一気に盛り上がる。

「なんとここで、今回の功労者クラウゼ大尉殿が一気を披露したいと仰っておられる!手拍子にて、この場を盛り上げるべく見届けるのが隊の伝統である!では!」 

 アイシャが目を点にして島田を見つめる。

 してやったりと言うように島田が笑っている。

 さらにアイシャはサラ、パーラ、そして要を見渡す。

『はめられた』 

 アイシャの顔がそんな表情を見せた。全員の視線がアイシャに注ぐ。引けないことに気づいたアイシャが自棄になって叫ぶ。

「運用部副長!アイシャ・クラウゼ!日本酒一気!行きます!」 

 どっと沸くギャラリー。

 島田の口三味線に合わせて一気をするアイシャ。

「おい!今回はオメエがんばったよ。アタシからの礼だ。受け取れ」 

 そう言うと今度は要がアイシャの空けたばかりのコップに西から奪い取った日本酒を注いだ。

 もう流れに任せるしかない。

 そう観念したように注がれていくコップの中の日本酒をアイシャは呪いながら眺めていた。



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