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今日から僕は 128

「第一小隊は明石中佐は、現在特命で帝都で任務中。吉田少佐とシャムちゃんは隊長と別任務に就くって話らしいわよ」 

 アイシャはそう言うと少しだけ、ほんの少しだけ笑った。いつもの笑顔に比べるとどこか不器用な笑顔だった。

『この人でも緊張するんだな』 

 誠は当たり前のことに感心している自分が少し滑稽に見えて口元を緩めた。

「更衣室の場所知ってる?とりあえずそこまで行きましょう」 

 そう言うとアイシャは紺色の髪をなびかせて歩き始めた。

「僕のシミュレーションに付き合ってくれたのって、このためだったんですね」 

 誠はとりあえずそう言ってみた。

「まあね。お姉さんから訓練メニュー渡された時からこうなる予想はついていたけど」 

 下降するエレベータのボタンを押すとすぐに扉が開いたので、二人は誰も乗っていない箱の中に入った。

「勝てるんでしょうか?敵は50機近くいるんですよね。こっちは七機……」 

 ひっそりと口を出した誠をこれまでに見たことのない、鋭い視線でアイシャが見つめてくる。

「勝てるか?じゃないわよ。勝つのよ」 

 技術部の庭と言えるハンガーにつながる階で扉が開く。

 ここは別世界だ。

 急ぎ足で指示書片手に行きかう技術部員達。

 何人かはアイシャに気づき、敬礼をする。

「火器整備班の倉庫の裏側が更衣室よ。それじゃあ」 

 アイシャが不意に誠の顔に唇を近づけ、その額にキスをした。

「よくあるおまじないよ。効果は保障するわ」 

 そのままアイシャはハンガーの方へ向かった。

 何が起きたのかわからず、呆然と立ち尽くす誠。

「いいもの見せてもらったよ」 

 話しかけてきたのはキムだった。

「いえ、その、いっ今のは……その」 

「わかってるって。ベルガー大尉と西園寺中尉には黙ってるよ。それよりこれ。一応、お前の場合拳銃だけじゃあかわいそうだから」 

 そう言うとキムは一丁のショットガンを銃身の下にぶら下げたライフル銃とマガジンが三本入ったポーチを差し出した。

「なんですか?これは」 

 誠は奇妙なアサルトライフルを受け取ると眺め回す。

「M635マスターキーカスタム。20世紀末に使われたアメちゃんのサブマシンガン。ストーナーライフルAR15のシステムを9mmパラベラム弾に流用した改造銃だ。まあバレルは下にイサカM37ソウドオフショットガンをアドオンするために別途注文してこの前組み終わった奴だ。ダットサイトのゼロインも済んでるからすぐ使えるぞ」 

 誇らしげに言い切るキム。

 誠は特にすることもなく銃とマガジンを持て余していた。

「まあ俺としては使われないことを祈るよ。パイロットスーツに着替えるんだろ?何ならうちの兵隊に運ばせるぜ?」 

「じゃあお願いします」 

 そう言うとキムは銃を受け取った。

「飯塚兵長!こいつを第二小隊三号機に持って行け!じゃあがんばれよ!新人君」 

 キムの声を背中に受けて誠は更衣室に入った。



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