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今日から僕は 123

 要の方を見ながら島田は顔をわざと緊張させて話し始めた。

「まあ見た目はああだし、言動は神前の見たとおりだけど意外と慎重派なんだぜ西園寺中尉は。初の実戦にしては今回の出動は危険すぎると言う中尉の気持ちもわからないわけじゃないけどな。どう転んでも近藤の旦那の部隊とかち合うことになるのはしょうがない」 

 島田がしんみりとした口調で話す。

「結局、第六艦隊の本間提督の出頭を督促した小型艇は拿捕されたらしいしね」 

「通信士はよく知ってるのね。サラ、他に何か情報無いの?」 

 青い目を光らせてパーラがたずねる。

「しきりと外惑星軌道上に展開している艦隊に通信送ってるわよ。たぶん吉田少佐なら暗号電文解析して内容もつかんでると思うけど。誠ちゃん、ちょっと湯のみお願い」 

 新入りらしくあごで使われる誠。

 四人とも現状の話になると顔色は暗くなる。

「この状況を利用しようと考えてる国があるってことよね」 

「隊長のこれまでの戦闘記録は調べたけど。あのオッサン、ああ見えて無茶結構やってるからな。今回も平然としてられるのは正直すごいと思うよ。神前!一つじゃなくて人数分もってこいよ!気の利かない奴だねえ」 

 島田にそう言われて、誠は慌てて部屋の片隅に置かれた湯のみの山から四つの湯のみを取ろうとした。

「神前!五つ持って来い!」 

 そう言うと天ぷら定食を持った要が誠の席の隣に陣取った。

「近藤中佐か。あのオッサンの人脈があるのは、ゲルパルトのネオナチがらみだから。ブラジルとアルゼンチン、チリあたりの南米諸国が危ねえだろうな。それとシリア、リビア、アルジェリア、パキスタン。アラブ連盟の非主流派の諸国も動くかもしれねえ。場合によってはこれにフランスの一線級艦隊がお出ましになるってとこか?」 

 誠から湯のみを受け取りながら、要はまるで他人事のようにそう言った。

「それじゃあ勝ち目無いじゃない!第三艦隊は不測の事態に備えて胡州の帝都から動けないのよ。それに第一、第四、第五艦隊は今はちょうど遼州太陽の裏で警戒任務中。第二艦隊は大半の艦はドック入り。第七艦隊は遼南艦隊と合同演習中よ。とてもじゃないけど間に合わないわ!」 

 叫ぶパーラ。

 周りの整備員や警備部の隊員が思わず彼女の言葉に聞き入り、それぞれに不安げに耳打ちをしている。

「びびったのか?そう言う状況だから今の状況が起きたんだ。だが近藤一派も後が無いのには変わりが無い。地球の反主流派の連中も馬鹿じゃないさ。パーラが思っているような状況が起こりうるにはアタシ等が近藤直下の連中にボコにされてこの艦が沈んだ時だけだ。それまではどの国も事を起こすほど迂闊じゃない。誰だって火中の栗は拾いたくないわな」 

 一切表情を変えず、要は淡々と天汁に薬味を入れてかき回した。

「場合によっては『高雄』をぶつけての白兵戦だ。そのために姐さんがいるんだろ?」 

 隣まで来たマリアに要は向かいに座るように合図する。

「シュバー……いえマリアさん。本当ですか?」 

 マリアは親子丼をパーラの隣の席に置くとゆっくりと箸を割り、ささくれをとり始めた。

「別に私がいるからといって白兵戦闘に持ち込むかどうかは隊長の胸三寸だな。我々は与えられたミッションをこなし、そして最大の戦果を得る。それだけだ」 

 マリアはそう言うとゆっくりとどんぶりを口に持っていく。

「予定では三時間後に予定宙域に到達する。その頃にはすべてがわかるだろう」 

 三時間。

 誠は息を呑みながら福神漬けを口に放り込んだ。



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