7話 みちゃいやん
今日は朝から草むしりをしています。
リード様が
「何か手伝おう。…暇だし」
と、何やら可哀想なことを呟いていましたから、一緒にできることを考えてみました。
「お屋敷に張り付いているツタを片付けてしまいたいですわよね」
そのためにはまず、茎を切ってこれ以上伸びないようにしないといけません。
生活魔法でもできますけど、他にもやりたいことはたくさんあります。魔力温存のためにリード様にがんばっていただこうと思います。
で、私はお野菜を育てようかしら。
本来なら花などでお屋敷を飾らないといけないのでしょうけど、別に誰も訪ねて来ませんし。
私、庭師ではありませんし。
食べられるもの、でいいですわよね。
それでも、可愛らしいお花が咲くものを選びます。
こちらには、コッション、ユーズド、バーニーラ、トーカライを植えましょう。
種を蒔いて、大きくなあれ!
にょきにょき〜
いい感じの生垣になりました。香辛料生垣完成です。
きっと明日には収穫できますわ。
こちらのコーナーにはゴリン、カンミーネ、チェリソー、ブドウジョーを植えましょう。
種を蒔いて、大きくなあれ!
ボコン、にょき〜。
あら、もうキレイなお花が咲いてますわ。
ふんふふん、ふ〜ん。
「あ〜、シーラ、今そこの木がみるみる大きくなったようだが」
「リード様!」
相変わらず気配を感じさせずにあらわれます。
「急に声をかけられると、びっくりしてドキドキしますわ」
「俺も今、目の前の光景にドキドキしてるんだが…」
「まあ、何のことでしょう?」
ドキドキするようなこと、ありましたかしら?
「い、いや別にいい。南棟だけツタの茎を切ったが、次はどうしたらいいかと」
「それでしたら、1度やってみたいことがあるのです」
ツタの端を持って一気に引っ張ります!
えい!
あ、あれ?中々剝がせないものなんですね。
えい!
むう、ちょっと本気を出しましょう。
ツタの先を引き剥がすイメージをして、じわじわとツタに魔力を流し込みます。
えい!
グイっ、バリっ、ドスン!
力いっぱい引っ張ったら、ベリベリっと剥がれました。
あ〜楽しかったです。すっきりです。
「シ、シーラ」
リード様が顔を覆っています。
「どうされました?」
「…見えてる」
「何がです?」
「だから、丸見えだ。サッサと隠せ!」
あら、スカートが捲れあがってましたわね、オホホ。
リード様、顔が真っ赤です。
「私、こんな姿をリード様に見られて…お嫁にいけません」
スカートを直しながら泣き真似をしてみました。
「そ、それは、あ〜、だな。申し訳ないというか」
リード様狼狽えてますわね。
面白いです。
「まあ、冗談です」
大丈夫ですよ、こんなことでお嫁にいけなくなるわけがありません。
さ〜て、次のツタを毟っちゃいますか!
バリバリと引き剥がしていると、何やら考えこんでいたリード様が、私の手を握りしめて言いました。
「責任は取ろう。どのみち、俺は平民みたいなもんだしな。問題ない」
って。
あ、あれ?冗談ですわよ?伝わってますわよね?
「え〜と、ごめんなさい?」
…が〜ん。
リード様、動かなくなってしまいました。
え〜と、こういう場合はどうするとよかったって、メイド長言ってたかしら?
聞いた記憶がありませんわね…困りました。