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1話 やってしまった

バシっっっ!


思わず手が出てしまってから脳みそが覚醒しました。

やってしまった…。

いや、私が悪いのでしょうか?

我慢するべきだったかしら。


完全にキレてるわよね、ハゲオヤジ。


「シーラ、私にこんなことをしてわかってるんだろうな?」


…わかっておりますとも。けど無理ですわあ。

脂ぎった頭と何段かわからないお腹。

そして、我慢して受け入れたとしても、嫉妬に狂った奥様から結局は追い出されるのですから。


ここは腹をくくってしまうしかありませんわね。


「申し訳ありませんでした」

深々と頭を下げて謝ってしまおう。

ついでに生活魔法を駆使して、音を立てずにドアを開けてみる。


「大人しく言うことを聞くなら、水に流してやってもいいんだぞ」


「あら、何を水に流してさせあげるのかしら」


ありゃ、ドアの近くに誰かいる気配がすると思ったら奥様でしたか。

こりゃどっちにしても追放コースかな。


「い、イヤ。そ、そうだ。シーラが私に媚びを売って迷惑しておったところだ。い、いいところにきたなマリーや」

「まあ!旦那様を誘惑ですって!」

「そうなのだ。大変迷惑しておったのだ」

「わかりましたわ。そんな女狐を置いておくわけにはいきませんわね」

どうしてやりましょう。ふふふふふ。


奥様、怖いですわね。罰則によっては、もう陽の目は見られないかもしれません。




そして、やってきました。

ハゲオヤジの兄がいるらしいお屋敷の前まで。


話には聞いていたけど、見事なまでの寂れた感ですわね。

お屋敷の周りはツタが生い茂り、立派だったであろう外観は見る影もこざいません。


ハゲ弟と争った結果跡目争いに負け、この屋敷に引っ込んでいるとか。

次々に送られてくる使用人が耐えられずに辞めて行くらしく、体のいい離職しろ宣言ですわね。


まあ、いいですわ。

トントン、コンコン。


覚悟を決めてドアをノックする。

反応なしですか。

確か、メイド長さんも勝手に出入りするように言ってましたもんね。

「お邪魔しま〜す」

そ〜っとドアを開けて中に入る。


蜘蛛の巣だらけですね。

ホコリまみれですわね。


「本当にこんなところに誰かが住んでいるのかしら」

「こんなところに住んでいて悪かったな」

「うぎゃあああわあああ!」

「びっくりするだろ!」

「びっくりしたのはこっちですよ!」

気配感じなかったですよ!


振り返ると髪もヒゲも伸び放題の…ベアモンかな?


「え〜と、今言葉を発せられたのはベアモンさんでしょうか?」


「お前には俺がベアモンに見えるのか?」

「ベアモンじゃないとしたら…まあ!最近のゴブリンって髪の毛が生えるんですのね」

「お〜ま〜え〜、ワザと言ってるだろ!こんなにしゃべる動物が人間以外にいるか!」


まあ、ボロでも服を着てる段階で人間だとは思ってましたけどね。


「こちらにお住まいのナメージコ家のご嫡男、リード様のお世話を申しつかりました、シーラともうします。本日よりお世話になります」

「そうか、勝手にやるように」

「リード様はどちらに?ご挨拶したいのですけど」

「…この屋敷には今1人しかいない」

「で、どちらかしら」

「だから、1人しかいないって言ってるだろ」


「まさか…リード様ですか?」

「状況的にどう見ても俺がリードだろ」

「はあ、リード様って人間らしくないから、レッセイ様に追い出されたのでしょうか?」

なかなかレッセイ様もオツムの弱い方でしたのに、あの方に負けるなんてよっぽどの出来損ないだと思ってましたけど。

人の形してなければ勝負になりませんわね。


「心の声は相手に聞こえないようにするように」

あら、聞こえてました?ほほほほ、失礼。

「俺は適当に2.3日遊んでくるから、好きにしろ。違う職場に異動したかったら斡旋してやる」

「わかりました。お屋敷を好きにいじって構わないのですね」

「ああ」

言質はとりましたわよ。

「行ってらっしゃいませ」

リード様を見送るとお屋敷の中を見学することにする。


流石に部屋数はたくさんありますわね。

こちらがリード様のお部屋のようです。

最初はリード様のお部屋がある、南側の掃除からしましょうか。

リード様のお部屋は蜘蛛の巣はありませんが、ホコリまみれではあります。


シーツを全部剥がして、枕とクッションも洗って干したいですね。

…ついでに私が寝る用のお部屋も片付けたいですわね。

これだけ大きなお屋敷なのですから、洗濯用のお部屋がありそうですけど。

ウロウロと歩いて行くと、ありました。洗濯用のジェリーボックスが。中のスライムは生きているかしら?

「こんにちは」

『こんにちは〜』

「あら、良かったわ。スライムちゃん、生きているのね」

『お腹空いてるよ〜』

じゃあまずは私の魔力から食べるかしら?


『なんか懐かしい味がする〜』

「元気になったらお洗濯を手伝って欲しいのだけど」

『は〜い』


生活魔法を使ってシーツをまとめて洗う。

うん、さっぱり。

「じゃあ、洗ったシーツから順番に漂白お願いね」


さて、蜘蛛の巣とホコリはお屋敷の外に出してしまいたいわね。

魔法で窓を開けていく。

風を起こしてホコリを外に追い出す。

おお、すごいわ〜。火事の煙みたいだわ〜。

けど、これだけの魔法を使ったのはじめてだから、疲れたわね。

ふあああ、ちょっとだけ寝ちゃおうかしら。

おやすみなさい。









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