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甘い香りに気をつけろ  作者: ほろ苦
2/9

青山君と私と靖 2

読んで頂きありがとうございます!

「青山君、ごめんなさい。」


 数日後、私は仕事帰りに営業所の裏の駐車場でスーツ姿の青山君に呼び止められた。

 辺りは薄暗くなり青山君の表情はよくわからなかったが、返事が聞きたいと言われ私は少し考えてお断りの返事をした。


 さかのぼること、一週間前、今年の4月に入社してきた新人営業マンの青山勝あおやますぐる22歳に突然告白された。

 出会ってからたった5ヶ月、これと言って深い関わりを持った記憶もなく普通の営業マンと事務員的な関係だったと思う。

 その日、青山君に生産中止車のカタログが見たいと言われ、倉庫に案内して一緒に探し出した時

『矢野さん、付き合っている人いますか?』

 と突然質問され、いないと答えたら

『俺と付き合いませんか?』

 とあまりに唐突な告白だったので、考えさせてと言った。



 その返事を今したのだが、断られるのが予想外だったのか、青山君は驚いているようで


「な、なんでですか?」


「えっと……なんとなく?」


 基本嘘を付くのが苦手な私は、つかなくていい嘘はつかない主義だ。

 なんとなく断られるのも可哀想かもしれないが、今現在恋愛的に好きでもないのも事実である。

 そんな彼と付き合っても失礼だし、まずお友達からという気もしなかった。


「矢野さん、付き合っている人いないって言いましたよね?だったらお試しで俺と付き合ってもいいじゃないですか?」


 なんとメンタルが強いんだ青山君。

 私ならフラれても食い下がる勇気?なんてない……

 まぁ、そういう強引さ好きな女性もいるけれど、苦手な女性もいるのは知っておこう。

 ちなみに私は……苦手な方。


「ほんと、ごめん。そういうこと出来ないんだよね……」


 少し沈黙が続き、居心地が悪くなって「ほんとごめん。」ともう一度誤って帰ろうとした。

 すると、青山君は私の腕を掴み引き止める。

 日が沈み辺りが薄く暗くなって、はっきりと表情は見えないが彼の熱を帯びた鋭い眼光が私を捉えているのはわかる。

 一瞬その視線にゾクリと寒気がして動けなくなった。


「矢野。なにをしている?」


 張り詰めた空気の中、黒田マネージャーがひょっこり現れ声をかけてきた。

 その声で我に返り、青山くんは掴んでいた私の腕をそっと離すと静かに去って行く。

 私はホッと安堵して黒田マネージャーを見た。


「……なんだ、邪魔したか」


「いえ、今、帰りですか?」


 むしろ助かりましたとお礼を言うところかもしれないが、いつも嫌味を言われているのであえてお礼は言わない。


「ああ……あれは青山か?」


「はい」


「……お前もいい年なんだから若い男と遊んでないで、そろそろ結婚とか考えた方がいいんじゃないか?」


 薄暗かった空は日が沈みすっかり真っ暗になり、黒田マネージャーの表情もわからないがもの凄く呆れた顔をしているのだろう。

 この超セクハラ発言に私はゲンナリして、まともに反論する気すら起きない。


「そうですね……」


 ここでも気まずい沈黙が続くので私は早々に立ち去る事にした。


「では、お先に失礼します」


 黒田マネージャーが何か言いたそうにしていたが私は気が付かないフリをして精神的に疲れたのでとっとと帰る事にした。


 恋愛が出来ない私に結婚が出来るのだろうか……


 なんだか少し落ち込んだ私は一人暮らしのアパートに帰ると親友に電話してストレス発散をする事にした。

 メイクを落とし軽く夕食を食べてベットに転がりスマホを手に取る。


「もしもしー靖?」


「おぅ。どうした?」


 男友達の安倍靖(あべやすし)とは大学以来の付き合いで2つ年上の自他認めるイケメン美容師。

 私の自慢の髪を月に一回わざわざ連絡をしてきて手入れしているのも靖だ。

 3か月に一回ぐらいにしてくれないと私の財布が厳しいというと、料金はいらないっと言ってくれたから、お言葉に甘えていつも手入れをしてもらっている。

 かれこれ10年以上の付き合いになるので男女関係があるのでは?と疑いたくもなるだろうが、お互いここまで腹を割って話せる友人が他にいないせいか、そういう関係にならなかった。

 私は新人に告白された事や嫌味な上司に言われた事など、愚痴をこぼす。


「まぁー確かにもう三十路目の前ですが、なんで結婚のことまで言われなきゃいけないわけ?」


「はは、そうだなー上司として部下の将来が心配とか?」


「女性に対して相手がいるかいないかわからない状態でそれ言ったら失礼じゃないの!?しかもよ、私が若い男を弄んでいるみたいな言い方だったんだから!」


 ぶりぶり怒る私に電話の向こうで笑っている靖も独身だ。

 まぁ男の31歳なんて結婚してなくても問題視されないだろうが、なんで女はチクチク言われるのだろう?


「風花、そいつと付き合ってみれば良かったのに」


「うーん……なんか違う気がして……」


 怒りでテンションが上がっていたのに急にシュンっとテンションが下がった。

 そんな私の声に気が付き靖は優しく励ましてくれる。


「なんか違うか……直感って大事だろうし、お前がこの人でいいかもって思える相手が現れる日がそのうち来るさ。最悪、俺がもらってやってもいいけど?」


「結構です!靖は靖の思い人がいるんでしょ?愛のない結婚なんてお断わりよ!」


 そう、靖にはずっと思っている人がいる。

 私には誰か教えてくれないがとても大事な人らしく、その人といまどういう関係なのかも教えてくれない。

 結婚していないからその人と上手くいってないのかもしれないが、本人が言いたがらない事を深く聞くこともしなかった。


「ふっ、俺もお前と結婚するぐらいなら独身でいいと思う」


 クスリと笑い、憎まれ愚痴を叩きながらも私の事を心配してくれる靖は、やっぱり一番の親友だ。

 愚痴をこぼして少しスッキリした私は来週、靖の美容室に行く約束をして電話を切った。

安倍靖の説明をちょっと

現在、個人美容院でオーナー兼美容師

自他認めるイケメンで昔からモテモテ男

風花の2つ年上で大学の時に知り合う

(詳しくはココと風花の物語で)

風花と同じ年のインテリ系弟がいて、現在は父の会社の役員

今でも裏では陰陽師の仕事もしているが、妖怪が取り憑いたという噂がたち、行動を控えている


最後まで読んで頂きありがとうございます(*´ ˘ `*)

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