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世界情勢



「やあ、『化物』。『2周目』、楽しんでくれているかい?」


情報と異なる洞窟の中に彼女は存在した。そしてそう言ったのだ。


「なにを…言ってる…?」


とりあえず、私は白を切ることにした。動揺を上手く殺し切れているのかどうか甚だ疑問ではあるが、向こうがどういうつもりでその台詞を言ったのか分からない以上、下手に肯定するのは危険だと判断したのだ。


「おやおやおやおや、知らないふりが下手くそだぜ?ハルカ・ブライト君。表情筋がいつもより2%ほど緊張している」


「お前は私の名前を知らないはずだし、私の表情筋の普段の強張りを把握していないはずだ!!」


「私は君の普段の表情筋の強張りを把握しているし、名前に至るところから、髪の毛の本数まで全てを把握しているよ」


「変態以外の何者でもねえよ!!」


彼女との会話のキャッチボールは心地が良かった。打てば響く、とでも言えば良いのか。自然と心を許してしまう。そんな風にさえ感じてしまったのだ。


まあ、こんな異常は流石に見過ごせないが。


「で、どうして私を知っている?加えてなにが目的だ?」


単刀直入に私はそう聞いた。


私は彼女に誤魔化されのだろうなと、てっきり思っていたのだが、迷わずにこう言い放ったのだ。


「私の目的は世界平和だよ。それ以上もそれ以下も望んではいないさ」


◇◇◇◇◇


この世界の話をしよう。極端な話、世界は今、平和であるのか?


答えはNOだ。


この世界では戦争が絶えない、様々な国や機関が日々、争いを続けている。規模の小さなものから大きなものまでそれぞれだ。


まず私と私の家族が属している「アズガルド王国」。王国は第98代アズガルド王が治めていて、基本的に治安の良い国だ。獣人への差別はほとんどなく、皆が共存している。王国の強みはやはり結束力。有事になった際に、王国軍とギルドが協力する。加えて人間と獣人が手を取り合って立ち向かうのだ。とても良い国だと私も思う。ただ挙げられる問題としては98代目のアズガルド王が床に伏していること、だろう。実際、王国の内情がどうなっているのかは王国宮殿内しか把握出来ていないだろう。


次に帝国の存在だ。「ローレライ帝国」。帝国の歴史は長く、今の王が何代目か把握しているものはいない。さらに帝国は差別が激しく、貴族と市民間での争いも絶えない。獣人は当然のように奴隷扱いである。そして、帝国には機械兵器がある。帝国が独自で開発したとされる様々な機械兵器の前に屈してきた小国は数知れない。


次に教会の存在。「聖教徒教会」。ここも王国と同じで差別はある意味では少ない。差別の有無は神を信じるか否かで決まるのだ。神への信仰高いほど、位は高く、低いほど、扱いは酷くなる。教会の戦力は「聖騎士」と呼ばれる圧倒的な強さを誇る騎士と得体の知れない方法で生み出された異形の生物だ。教会は神を顕現させようと努力しているらしいが、そのなり損ないが異形の生物になるらしい。


そして最後に魔族の存在である。当然のようにこの世界には魔物が存在する。大抵、魔物は群れをなさないのだが、群れをなす者もいる。それは魔王が存在しているからである。前世と同じく、魔王は存在している。しかし異なる点として、魔王は10人存在することだ。魔王は各地の領域を治めていて、魔王同士で凌ぎを削りあっている。魔王は眷属である魔族を使い、戦争を行う。魔族である魔人の戦闘力は尋常ではなく、人間や獣人の国はいくつも滅ぼされている。その魔人を率いる魔王の戦闘力は最早想像もつかないほどらしい。


これが基本的な勢力図になるはずだ。あとは小さな小国がいくつか点在している。


さて…それでは話に戻るが。


「世界平和ってどういうことだ?この世界から争いを無くす、と捉えていいのか?」


「そうだよ。私はこの世界の争いを無くすために来たんだ」


ふむん、まあ、世界平和と言うからにはそうなのだろう。しかし。


「どういう方向で争いを無くすつもりだ?圧倒的な戦力でねじ伏せるのか?」


ここが問題だ。争いを無くす、という意味でなら様々な方法がある。各国が手を取り合って、共存するのか、はたまた一つの国が全てを制圧するのか…。だが、実際、共存など不可能に近い。魔族は人間を忌み嫌っているし、それは人間も同じだからである。一体どうするつもりなのか。


だが、彼女はまたしても迷わずに言い放った。


「言っただろう。世界平和だぜ?みんなが笑えるハッピーエンドだ。人間、獣人、魔族の共存だよ」



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