プロローグ3
俺は愛花と他愛もない会話をしながら横断歩道の信号を待っていた。
その日はいつもより登校時間が遅いせいか、学校に近づくにつれて同じ制服の生徒がかなり集まってきていた。
「あー、今日は1限目から体育があるよー.....」
「そういえば、愛花は体育苦手だったっけ」
「そうなんだよねー、あー憂鬱だー.....」
「まあ頑張れ、ほら信号変わったからさっさと行こ.....愛花!!!!」
俊平がそれに気づいたのは全くの偶然であった。
荷台に大きな荷物を積んだトラックが真っ直ぐにこちらに向かってくる。
現在信号は赤く光っているが減速する様子は一向に見られない。
このまま突っ込んでくれば間違いなく俊介達に直撃コースである。
そう直感した俊介は咄嗟に愛花を突き飛ばした。
だが、そのせいか自分が回避するチャンスを無くしてしまった。
凄まじい衝撃音が響きわたる。
トラックは近くのコンクリートの壁に衝突してようやくその動きを止めた。
あたりには粉々になったコンクリートの残骸が散らばり、粉塵がもくもくと立ち込めている。
「俊君!!」
愛花は事故の衝撃から立ち直るとすぐに彼の姿を探す。
周りに野次馬が集まってくる中、愛花は彼がコンクリートの残骸の中に埋もれているのを発見した。
あたりには彼の血により大きな血溜まりが出来上がっていた。
致命傷である。
「すいません!!どなたか救急車を呼んで!!手の空いてる人は彼を救助を!!」
周りの野次馬は愛花の指示を受けて戸惑いながらもすぐに俊介の救出作業を開始する。
愛花はコンクリートの残骸を除けながら彼に懸命に話しかける。
「俊君!!まだ死んじゃだめ!!お願い生きて!!
私はまだあなたに自分の本当の気持ちを伝えてないの!!
私は君のことがずっと好きだったの!!
ずっとずっと前から君が好きだったの!!
本当は今の彼氏なんてどうでもいいの!!
ただあなたに嫉妬して欲しかっただけなの!!
あなたがいつまで経っても私に振り向いてくれないから!!
ずっと私たちが同じ学校だったのも偶然じゃないの!!
私があなたのそばにいたかったからついて行っただけなの!!
私にはあなたが必要なの!!あなたがいない世界なんて嫌!!
だから、お願い生きて!!」
そんな愛花の声を聞きながら俺の意識は少しずつ薄れていく。
こんなに血を流しているのに不思議と痛みは感じなかった。
ただ、頭がボーとしていてとてつもなく眠い。
だが、不思議と愛花の声ははっきりと聞こえた。
そうか、俺の幸せはこんな近くにあったのか。
俺は今までなんて馬鹿だったのだろう。
こんなに近くにずっと探し求めていた幸福があったのに。
少し勇気を出して手を伸ばせば届いていたのに。
そんな後悔が朦朧とした頭に広がっていく。
せめて、せめて俺の気持ちだけでも彼女に伝えたい。
そんな強い思いから俺は最後の力を込めて声を捻り出した。
「あ...い...か.....す...き...だ.....」
俺の言葉が伝わったのか愛花は涙を流しながら答える。
「うん...うん...私もあなたを愛してる...だから...だから...お願い...生きて...」
愛花の言葉を聞きながら俺の意識は深い深い闇へと沈んでいった。
これでやっとプロローグは終わりです。
ここまで引っ張ってしまい申し訳ないです.....
次からやっと本編スタートなのでお楽しみに!!