プロローグ
久しぶりの新作の投稿です。
以前と違い毎日投稿できませんがよろしくです
ある高校の通学路、そこをある一人の男が暗い顔をしながら歩いていた。
彼の名前は、『五味楠雄』といい15歳の高校一年生だ。なぜ彼が暗い顔をして歩いているかというと、彼はいじめられているからだ。
五味楠雄…、彼は全てのことに関してまるで才能が無い。勉強は毎日予習復習をしているが、テストでは平均点ぐらいしか取れない。いくら勉強しても、基礎は解けるが応用問題がいくら頑張っても解けないのだ。
また、スポーツも全滅だ。野球、サッカー、バスケなど色々なスポーツを試したが全く上手くならない。それこそ、後から始めた人達にも簡単に抜かれるほどだ。
格闘技も習った事もあるが、これもダメだった。いくらやっても、初心者に毛が生えた程度にしかならない。挙句には、師範からはお前がこれ以上やると危険だから辞めろと匙を投げられるほどだ。
もはや、この才能の無さは呪いと言ってもいいほどだった。
そんな才能がまるでない五味が学校に行けばどうなるか?当然イジメの対象になる。中学に入る頃には、クラス中の者に馬鹿にされ暴力を振るうのは日常茶飯事だ。それは、中学を卒業して高校に入学してからも変わらない。
いや、むしろひどくなっていった。殴る蹴るは当たり前、酷い時などは石を投げられたりもしていた。
そんな風にイジメられているのだから、暗い顔をして登校するのは当たり前と言えた。いや、むしろ登校してきているだけ凄いことなのかもしれない。
ここまでイジメられたら、普通は登校拒否になってもおかしくない。それをしないだけでも、彼は心が強いとも言えた。
楠雄は、いつもどおりため息を吐きながら始業時間ギリギリに学校に登校した。
そうしないと、いつも必ず誰かがイジメてくるからだ。
楠雄が、教室に入ると複数の者が目をニヤニヤさせながら楠雄を見てきていた。楠雄は、それを極力気にしないようにしながら自分の席につこうとした。
しかし、無事に席に着くことはできず楠雄の前に立ち塞がるように立つ者がいた。
「よう、ゴミクズ!また今日もギリギリの登校かよ。もっと早く登校して来いよ、お前がなかなか来ないから、寂しかったんだ・・・ぜ!」
ボゴ!!
「うぐ!」
寂しかったと言いながら、楠雄の腹を殴ったのは『佐藤正』という。楠雄をイジメている者の中の主犯格で、身長は180cmと大柄で体もガッシリとしている。しかも空手部に所属していて、才能も豊かで将来を期待されている人物だ。
しかし、性格は最悪で弱いものイジメが大好きという小物臭漂う人間だ。
そんな正にとって、才能がまるでない楠雄は格好の獲物に見えるのだろう。入学してから毎日のように楠雄を殴ったり蹴ったりと、好き放題にしている。
「そうだぜゴミクズ!なに、正さんを待たせているんだよ!」
ガッ!
「ギャッ!」
正に殴られ、蹲っている楠雄の頭を踏んづけたのは『近藤信哉』という。この男も、楠雄をよくイジメていて強い者に媚へつらい、弱いものには強くなるという正と同じ、いや正以下の小物である。
ちなみに、正の友達というよりは子分みたいなポジションにいる。
「キャハハハ。二人共やりすぎたらダメよ。こんなゴミクズでも、もし死んだら正空手部クビになっちゃうわよ」
この馬鹿な笑い声を発している女は『鈴木恵美』といい、一応は正の彼女と言うことになっている。
一応とはどういう事かと言うと、この女毎日のように援助交際をしてお金を稼いでいることで有名なのだ。
その為、そのことを知っている者たちは本当にこいつら付き合っているのか?と疑惑の目で見られていたりする。
「ああ、分かっているよ。ほどほどにはしとくぜ。オラ!ゴミクズが、さっさと立てよ。お前みたいな無能なやつは、俺のサンドバックとしてくらいしか役にたたないんだからよ!」
ドス!ドス!ドス!
「うっ、グフ。もっもうやめてくれよ」
「ああ?なに口答えしてんだよ!!いいからお前は黙ってサンドバックになってろよ!!」
そう言いながら、正はまた楠雄を殴り続けた。大体、楠雄の毎日はこうやってこの三人に殴られるところから始まる。
それを助けるものは誰もいない。正のことが怖いというのもあるが、楠雄のことも才能がまるでないこともありどこか皆馬鹿にしていた為、下手に庇って自分がイジメられるよりは居ても居なくてもどうでもいいと思っている楠雄がイジメられていてくれる方が助かるからだ。
そんな中、正に声を掛ける者がいた。
「辞めろ佐藤!!」
「ああっ!誰だよ?・・・チッ武藤かよ」
彼の名前は『武藤俊』といい、文武両道であり格闘技もなぜかカポエラというマニアックなものを習っていたが、その強さは正を超えていた。
また、顔は美形で背丈もスラっとしておりモデル体型で女子からは圧倒的な人気を誇っていた。
さらに、この男正義感も抜群で困っている人は見過ごせない性格でもある。まるで、物語の主人公みたいな少年でありそんな主人公にありがちな、鈍感と難聴スキルも持っているため女子の好意には一切気づいていないと、どこまでもテンプレ通りの男でもあった。
「またお前は五味のことをイジメているのか。いい加減くだらないことはやめないか!!」
「チッ、うるせえ奴が来やがった。あーあと、なんか冷めちまったな。おい、もう行こうぜ」
「ええ、そうですね正さん」
「なによー、もう辞めちゃうの?」
「うるせえ!行くぞ」
そう言うと、正たちは楠雄から離れていった。正たちも、俊には暴力を振るっても勝てないことは分かっているので、面と向かっては歯向かうことはしないのだった。
その変わり、俊が見ていないところでは楠雄を殴ったりしていたのだが。
「五味大丈夫かい?」
「ああ、大丈夫だよ。ありがとう」
そう言って立ち上がった楠雄に向かって俊は言葉をかけた。
「全く、佐藤達にも困ったものだな。弱いものイジメなんて。しかし、五味も悪いんだぞ」
「はっ?」
ヤレヤレといった感じで、いきなり自分も悪いと言ってくる俊に対して楠雄はビックリして顔を上げる。
「いいかい、いじめられる方にも原因があるとよく言うだろう。君は何をやってもまるでできないみたいだが努力が足りないんじゃないかい?努力しないからスポーツも勉強も満足にできないのではないのかい?
佐藤たちも、君が努力をしないからムカついてイジメているのではないか?あれでも、佐藤は空手だけは真面目に努力して続けているみたいだしね。
努力している佐藤からすれば、まるで努力しているところが見れない君のことがイラつくのではないかい?」
こいつは何を言っているのだろうと楠雄は思った。努力なら死ぬほどしている。確かに、人が見ているところではしていない。
それは、単純に人に努力をしているところを見られるのが恥ずかしかったからだ。
だが、努力は人一倍しているという自負はある。でも、その努力がまるで身を結ばないのだ。いくら筋トレをやっても、筋肉は付かないし足も早くはならない。
いくら勉強をしても点数が上がらない。人の倍努力して、ようやく普通の人に少し劣る程度なのだ。
しかし、俊はそれを理解しない。彼は、やればやっただけ筋肉が付くし勉強は授業を聞いただけで理解しテストでは平均以上の点をとる。
そんな彼には、努力してもそれが身につかないということが理解できなかった。その為、何もできない楠雄は努力が足りないと勝手に思ったが故の言葉だった。
それを言われた楠雄は、頭に血が上っていた。ふざけるなと、努力しても身につかないのにどうすればいいのだと。
俊に向かって怒鳴ってやろうとした声を出そうとしたその時、楠雄は声を出せななかった。
なぜなら、急に教室全体が発光しだしたからだ。
それは、よく見ると六芒星の形をしていた。楠雄はそれを見た瞬間、魔法陣かと思った。そして、教室、魔法陣と来たと言うことは、今流行りの勇者召喚かと思ってちょっと期待した。
そんなことを、楠雄が考えていると魔法陣の光はだんだん激しくなり目も開けてられないと思ったら楠雄たちはそのまま気絶してしまった。
後には、誰もいなくなった教室だけが残っていた。
活動報告で予告した新作とまるで別の物を投稿することにしました。
楽しみにしていた方、もしいたらどうもすみません。
こっちのほうが書きたくなったので書いちゃいました。
いつまで、投稿できるかわかりませんが楽しんでいただければ嬉しいです。