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エピソード3 それは失った希望を取り戻す力

イズホ村を出ると

そこには白い小さな花だ咲き乱れていた


その花畑を進んでいく



何匹ものマナウルフとボスウルフが襲い掛かってくる

渓谷までの道のりは長い


「なぁ・・・ヴァリスマリネリスの向こうには何があるんだ?」

歩きながらクルートに聞いた

「この国の首都だ

城下町ロビー

そして、王城ノースファルナ城だ」

「ノースファルナ?

それって1110年前の国だろ?」

その言葉にクルートは笑った

「な・・・なんだよ、違うのかよ!?」

シェードはあせった

「いや・・・合っているとは思うんだが・・・」

笑いながら答える

「シェード、偉大な発見だぞ!」

「へ?」

頭がやられたのかもしれない

なぜか渓谷に近づくにつれ寒くなってくる

「あの・・・ノースファルナって確か1550年前じゃ・・・」

ミリィが云う

「ま・・・まじか・・・」

急に恥ずかしくなって

シェードは赤くなった

「いやいや、シェードもミリィも正解だ」

「「?」」

「シェードの居た世界は時間が止まっている

その止まった世界から見て

ノースファルナは1110年のものだろう?

そして、時が進んだこの世界では1550年前のものだ」

それがどうしたのか

しかし、ミリィはわかったかのように頷いた

「つまりだ、エトピタートが止まったのは1550−1110年前ってことだ」

「なるほど・・・じゃあ440年前か・・・」

ことの重大さがわかっていなかった

クルートはあきれるようにため息をついた

「な・・・なんだよ?」

「いいか?エトピタートがいつ止まったかは誰も知らなかったんだ

それが今、解明されたんだぞ?

これは<セブンス賞>ものだ」

「せぶんすしょう?」

「セブンス賞っていうのわね

100年ぐらい前に2つの世界が共同で決めた賞で

どんな賞よりも価値があるのよ」

ミリィも若干笑っている

こっちの笑いは蔑んでいる笑いだ



「さて、そろそろ渓谷に近くなるな

防寒具の用意だ必要だ」

確かに、ものすごく寒い

「なぁ・・・なんでこんなに寒いんだ?」

「ああ・・・・この渓谷は凍ってるんだ」

「凍ってる!!?」

驚いた

さっきまでは猛暑の荒野が続いていたのに

なぜいきなりこんなところで凍るのか

しかし、さっき見た白い花

確かにアレは、寒いところに咲く花の一種だ

「昔、英雄が通るときに壁を凍らせたらしい」

「なんで?」

英雄なら何をしてもいいというのか?

「あの渓谷には有毒ガスが噴出していたらしい

それを抑えるために、いてつかせたようだ」

ミリィが袋から厚い布を出した

店のダメになった衣服を縫い直したらしい


渓谷の前まできた

そこには氷に覆われた岩肌が、奥に続いていた

一本道なのに、向こう側が見えない

「この渓谷の真ん中付近に小屋があるんだ

今日はそこを目指すぞ」


渓谷に入ると

見たことのない怪物ゼスが襲い掛かってくる

一体ずつ蹴散らしながら

進んでいく

使うにつれて、ミリィの弓の命中率は上がっていった

「やっと、身の危険を感じないくらいになってきたな」

皮肉った

「次は外さずに心臓を狙ってあげる」

冗談に聞こえない低い声で言った


「そら・・・団体客だ」

そこには、蜘蛛のような怪物ゼスと何匹かの鳥のような怪物ゼスが居た

しかし、あきらかに他のとは違う個体が一匹混じっている

「蜘蛛はアイスパイダー、鳥はケネオスバドだ」

「あの黒いコートみたいなのを着たやつは?」

剣を構えながら聞いた

「あれは魔物ゲルといって、名はヘルコートだ」

クルートは真っ先にヘルコートめがけて走っていった

魔物ゲルは魔術を使ってきたりと特殊攻撃を主体に戦ってくる

見つけたら真っ先に狙え!!」

つまり、怪物ゼスは接近物理攻撃型

魔物ゲルは遠距離特殊攻撃型ということだ

魔物ゲルはクルートに任せて

シェードは蜘蛛を狙った

「ミリィ!!鳥を頼む!」

「わかった!」

ミリィは矢を装填し

一番近いケネオスバドに撃った

しかし、矢はかすめただけだった

運がいいことに、別の個体に当たった

しかし、そのせいでケネオスバドは一斉にミリィを狙った

「きゃあ!!」

「ちっ!!」

間に合わない

ケネオスバドは猛スピードで突っ込んでいく


(紋章発動!!)


心のなかで念じる


頭上に紋章が描き出され

それがシェードを包み込む


ケネオスバドを追い抜かすスピードで走り

ミリィの前に出た


円光翔砲斬えんこうしょうほうざん!!」

半円の風の刃が、一蹴で平面状にいるケネオスバドを蹴散らした

しかし、全てを倒したわけではない

そこへ、ヘルコートを倒したクルートが

遠くから魔術を放った

「包みこめ豪火・・・フレイムカーテン!!」

炎の膜が

ケネオスバドの群を包み

燃やした

残るは蜘蛛一匹だ

両方から一気に斬りかかり

真っ二つに切り裂いた


「ふぅ・・・あぶね〜」

「・・・・・・」

ミリィは俯いて

なにやら浮かない顔をしている

「どうしたんだよ?

まさか、どっか打った?」

「ううん・・・あの・・・さっきはありがとう」

暗い声でそういった

「そういうのは、明るく云ったほうがいいぜ?」

励ますつもりで云ったが

「うん・・・・」

ミリィの表情は変わらなかった


(どうして・・・私はなにもできないの・・・?)

歩きながらそんなことを考えた

クルートは文武両道で、いつも自分達に教授してくれる

シェードは、以外に家事全般はなんでもできる

それに比べて自分はどうだ?

それなりに勉強はしていたが

できるのは、計算と英雄伝説、救世主伝説、勇者伝説、賢者伝説といった

いわゆる歴史の一部だけ、クルートには及ばない

洗濯、裁縫は仕事柄かなりうまいが、料理はからっきしだ。シェードほどではない

人と比べるのはよくないことだとわかっているが

戦闘でも二人の足を引っ張っているようにしか感じない

そんなことを考えてくると、自然と涙が出てくる

「おい?マジでどっか怪我したのか?」

シェードが心配そうに聞いてくる

「怪我したくらいで泣かないをよ」

半分怒って云う


「ほら、アレが小屋だ

夕方前につけたな」


中に入ると、そこは風が入ってこないだけで

とても寒い

「火がたければいいんだが」

火自体はクルートがだせる

あとは燃やすものだ

「布切れならありますよ」

袋から長細い布を出そうとするのをクルートがとめた

「それを燃やすのは勿体無いな、ここは氷ばかりと言っても

木無いわけじゃない

その辺で集めてくればいいさ」

「おーい、こっちに薪が大分あるぞ?」

奥の倉庫らしき場所から薪を持ってきた

「あと、こんなものも」

それは、古びた本だった

「古文書だな・・・とりあえず持っておこう」

暖炉に火を起す

ミリィはユラユラと燃える火を見つめながら

自分」にできることを探した

そうしているうちに

夜が来た



小屋の屋根にすわり

シェードは光の柱をみていた

ここはヴァリスマリネリスの最も高い場所だ

細い線くらいにしか見えない光の柱は、夜の景色から浮いていて

よく見える

「家が恋しいの?」

ミリィは皮肉って云った

「いや・・・別に・・・」

それは本当にどうでもいいといった感じだった


「ねぇ・・・気を悪くするなら答えなくていいから

一つ聞いてもいい?」

「あぁ・・・」

「両親とか、家とかが恋しくなったりしないの?

友達とか・・・心配にならない?」

しばらく間があいた

失言だったとミリィが思っていると

突然、語りだした


「物心ついた時には、目の前には誰も居なかった

今でもはっきり覚えてる

あったのは、誇りまみれのテーブルと

布にかけられた食材・・・数万ケイムの金に

整えられたベッドだ

両親とか親戚はいなかったよ」

「さびしくなかったの?」

「あぁ・・・失うものは何も無い、空っぽだったからな」

やはり失言だったようだ

明らかに、シェードは気落ちしている

「ごめんなさい・・・」

「ん?・・・別に謝らなくてもいいよ」

「・・・でも・・・・気に障ったんじゃ・・・」

「落ち込んでるのはおまえだろ?」

「へ?」

突然言い当てられて

屋根から落ちそうになる

「べ・・・別に落ち込んでなんかないもん・・・もぅ寝る・・・オヤスミ」


「ふっ・・・青春だねぇ・・・」

屋根の下でクルートは笑っていた




朝日がまた昇る

正直、シェードはまた同じ毎日が繰り返されているんじゃないかと毎朝不安になる


「さて、今日は渓谷攻略後半戦だ・・・」

朝食を準備していると

クルートは念入りに武器を手入れし始めた

「どうしたんだよ?」

野菜を切りながら聞いた

「あぁ、この渓谷には<鹿>がいてな

そいつがこの渓谷の一番の砦なんだ

出くわさなければいいんだが・・・」




ミリィはまだ俯いている

氷の道は滑りやすいので

ボーっと歩いていると転んでしまう

案外、転ばずに進む


「ん?」

クルートが爪を装備した

「鹿か!!?」

シェードもあわてて剣を抜く

ミリィも気が乗らないまま弓を構えた


突然、氷の山が割れる

そこから出てきたのは2匹の巨大蜘蛛

ボスパイダーだ


「こいつらを倒せば出口はすぐそこだ」


二人が紋章を発動する

それを後ろからミリィは見ているしかできない

2匹の蜘蛛が、硬い糸のような針を飛ばしてくる


爪で弾き返し

前進する


ミリィは矢を蜘蛛の目に放つ

しかし、矢は弾かれた

予想以上に硬いようだ


無限に吐き出される糸針のせいで

二人は動けない

防ぐのでやっとだ


「くっ・・・このままの状況はまずいな・・・」

「紋章を使う暇さえあれば・・・」


矢を何本も何回も撃つ

しかし、全て弾かれる


(私は何もできないの?・・・また私は・・・・)

涙が出てきて目標がうまく定まらない

拭いても拭いても出てくる


(あなたが望む力はなに?)

「誰?」

突然、頭に声が響く

とても優しげな女性の声だ

(あなたが望むのは護る力?それとも砕く力?)

「違う・・・」

反射的にそう答えた

「私の望む力は・・・」

ふと、母親の死んでいく姿が目にうつる

耳にシェードのあの言葉が響く

「私の望む力は・・・」



失った全てを取り戻す・・・失った希望を取り戻す力!!!


(承知しました)


体中にあらゆる光の粒が舞う

それは頭上で円を描きながら

紋章へと姿を変えた


力がみなぎってくる

頭のなかに直接

自分が扱うべき力の全てが響き渡る


矢を持ち、目標へ向けた

「万物を貫く光の裁きを・・・・レイディアント・ランス!!」

光の結晶体が矢の先端に新たな矢を作り

放たれた

光は蜘蛛の口に当たり

激痛で糸針は打てなくなった


「星の下に築かれた嘆きの声よ、我が意図に遵いその姿を現せ・・・ブラッディーサークル」

怪しげな紫の魔法陣が蜘蛛の足元に描かれ

赤く光った

その瞬間、上に居た蜘蛛にものすごい量の力がかかり

外傷を追うことなく一瞬で絶命した


残りの一匹がクルートにのしかかろうとする

避けきれない

風波ふうは!!」

蜘蛛は(多分)横っ腹に風の塊を受け

氷の岩肌にぶつかった

「刹那に散り行くミコトの加護を受け、断罪の針となり罪深き者へ降り注げ・・・・・・ラストトーメント!!」

嫌な空気が充満する

上空に赤紫の雲が現れ

無数の黒い針が降り注いだ

一つも外れることもなく

ボスパイダーに命中し

絶命した



紋章の力をフルに使い

ミリィはその場に倒れるように座った

「ふぅ・・・」

「す・・・すごいな・・・」

シェードは死んだボスパイダーを見て云った

顔が若干引きつっている

(これで、少しは役にたつのかな・・・・)

「ミリィ、紋章がどこに刻まれてるかわかるか?」

「え?・・・えぇと・・・・どこだろう・・・」

「ま、わからないならいいんだ」

「え?何??」

「いや、何の紋章か確かめようと思っただけだ

なぁに、また使えば頭上に描かれるさ」

云うとクルートは出口を向いた

「どうやら鹿に出会わずにすんだようだな」




渓谷を抜けると遠くの方に城と街が見えた

「あと少しだ、行くぞ」


今回は現在3人のキャラ設定をご覧ください

キャラ設定[1]

シェード・リリア。フォンド 推定17歳

出身 エトピタート

クラス 双剣士


ミリィ・ネット 16歳

出身 アースグランド

クラス 魔法弓士


クルート=アーヴァン=レイド 推定35歳

出身 イル・シェル・レープ

クラス 魔法爪士

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