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エピソード1 旅立ち

「は?・・アースグランド??」

聞きなれない地名だった

「あぁ・・・君は、ここ以外知らないんだったね」

まるで他の世界があるかのような言い回しだった

「エトピタート以外に、なにがあるんだよ?」

顔が笑ってしまう


シェードは、暇な毎日に退屈していた

いわゆる平和ボケだ


「来ればわかるさ・・・では行こうか」

急に視線をはるか彼方に向けた

「ちょ・・・ちょっと待った!!」

あわてて云った

「まだ支度ができてねぇーよ・・・・明日じゃ、ダメなのか?」

突然、男は真剣な顔になる

「ダメだ、私がここに一日いるだけで、ここの時間軸に巻き込まれる」

さっぱり意味がわからなかった

「いいか?信じがたいことかも知れんが、君達エトピタートそのものは、何日も同じことを繰り返している・・・」

「は?そんなわけねーだろ??」

反射的に否定する

「では聞くが・・・君は昨日何をしていた?」

念入りに昨日を思い出す

「え〜と・・・確か・・・この時間まで学校で補修だったかな・・・」

男は目を閉じた

そして

「君は、昨日のこの時間

友達とさっきと同じ会話をしていた・・・私は一週間前からここで君らを見てきた」

何を云っているのか

一日も居れないと云っておきながら

一週間も居たというのか?

「一週間も見ててどうして声をかけなかったんだよ?」

「この永遠に繰り返されている日々に

突然変化が来ると

その変化を飲み込むように時間軸がずれるんだ

私が、君に話しかけることで

君と私は時間軸に飲み込まれ

狂った時間を修正される」

「狂った時間の修正ってなんだよ・・?」

真剣な顔を変えることなく男は云った

「存在が無かったことになる」

「なっ!!?」

この男の云っていること一つ一つが理解不能だ

「時間軸は深夜0時にリセットされる

それまでに、決意を固めるんだ

このまま消えるか、アースグランドへ行くか

時間はたっぷりあるぞ?後6時間だ」

後半はいたずらっぽく言う

「行くよ・・・その代わり一つ教えてくれ

なぜオレなんだ?」

男は、方向を変え

進むべき方角を見つめて云った

「君が、紋章を刻む者だからだ」







光の柱の中でシェードは考えていた

それは、エトピタート以外に世界があるということが

今まさに自分の中で常識になろうとしていることを


いきなり知らないオッサンについてきてしまった自分を不甲斐なく思う


「なぁ・・・あんたの名前は?」

「ん?おぉ!!まだ云ってなかったか?

私はクルート=アーヴァン=レイドだ

呼び方は君の呼びやすい呼び方でいいよ」

変わった名前だ

やはり異世界の人間だからかもしれない

「なぁ・・・エトピタートはいつから時間が止まったんだ?」

「・・・君は何歳だ?」

「17だけど?」

「ふむ・・・と、いうことは

君が17歳のあの日にエトピタートは止まったんだ」

「いや・・・そういうことじゃなくて

何年前に止まったかってことを聞いたんだよ」

クルートは考え込むように喉を鳴らした

「実際、何年前に止まったかはわからない・・・

一応、全ての世界の中心となっているのはアースグランドだ」


突然、光の柱の周りが蒼くなった

エトピタートのとある遺跡から

この光の柱に乗ったわけだが

その時は、周りが白かった

クルーとは、それは雲のせいだと云った

つまり、周りが蒼くなったということは

雲から出たということだ


「さぁ・・・ようこそ!アースグランドへ!!」

下には広大な景色が広がっていた

「あの茶色の気色悪いのはなんだ?」

気味が悪そうに聞いた

「あれは土だ・・・」

「じゃああっちの緑の固まりは?」

「あれは山だな・・・ほら!あそこに小さな村が見えるだろ?

あそこに向かうぞ」

指を刺してクルートは云った


見るもののほとんどが初めてだ

いろんな歪な色をしたものが

あちこちにある

しかし

その全てが

なぜか無性に落ち着く


大地に降り立った

エトピタートの地面は石だ

ゆえに、とても硬い

しかし、ここの<土>と呼ばれる

茶色い粒は、とてもやわらかい

意を決して触ってみた

とても、暖かい

冷たい石の地面に比べたら

ここはまるで天国のように癒される

さらさらした土は手に取ると風に飛ばされる


「ごほっ!げほっ!!こ・・・コラ!!土を飛ばすな!!」

「ご・・・ごめん」


降り立った場所は

鎧を着けた兵士達で囲まれていた

何か云われるかと思ったが

兵士達は気持ちのいい挨拶をしてきただけだった


そこへ、数匹の犬のような生き物が走ってきた

「ん?なんだこいつら?」

「シェード!!離れろ!!」

突然、犬のような生き物が喉を噛み切ろうと

飛び掛ってきた


「うわ!!」

とっさに避ける


兵士達は剣を構え

犬のような生き物に立ち向かった


「こいつらは怪物ゼスだ!!

この犬は<マナウルフ>といって

人間なんかを喰う

たちの悪い奴らだ」

云うなりクルートは武器を構える


それは特殊な形をしている

手に、はめ込んで装備する

それは、<爪>のようだ


クルートは次々とマナウルフを蹴散らしていく


シェードはただ見ているしかできなかった


「ぐあぁ!!」

数人の兵士が吹き飛ばされる

そこには、親玉らしきマナウルフ

別名<ボスウルフ>が立っていた


「ちっ!」

クルートは、ザコに囲まれていて

ボスウルフと対峙できない


「オレがやる!」

吹き飛ばされた二本の剣を取る

シェードは、真剣を持つのは初めてだ

ましてや、手に持ったのは両手持剣だ

ずっしりした剣は、構えるので精一杯だろう

「よせ!シェード!そいつは相手が悪い!!」

しかし、自分がここを離れれば

吹き飛ばされた兵士達が殺られるのは、目に見えていた


ゆっくりと深呼吸をし

腕を前に真っ直ぐ突き出して、剣を十字に合わせる

脚を縦にそろえて右足を半歩前にだす


「?」

クルートはその構えに驚いた

一見すれば

突き出された剣は振るには適さない

縦にそろえた脚はバランスが悪く

とてもじゃないが戦闘型の構えには見えない


ボスウルフが飛び掛る

自分と身長があまり変わらない生き物が

飛び掛ってくる

しかし、やけに冷静で居られる


鋭い爪が上から振り下ろされた

剣が爪に当たり

バランスが崩れ

倒れそうになる

「シェード!!!」

クルートが叫んだ


シェードは倒れることもなく

身体を回転させ立ち直り

そのままの勢いで斬る


あの構えは

わざとバランスを崩すことによって

戦うものだ

バランス感覚と反射神経がものをいうバトルスタイルだ


なんども、バランスを崩しながら

流れるように斬る

敵の重たい一撃は舞うような動きにより

全て流される


しかし、なれない重たい剣のせいで

決定打にいたらない

どれも表面しか切れていない


横から、クルートが必殺の一撃で喉を引き裂いた

ボスウルフは砂煙を上げて倒れた


「ア・・ありがとう少年・・」

吹き飛ばされていた兵士が起き上がって

申し訳なさそうに云う

剣を返して

その場を立ち去った


あのウルフたちから取れた毛皮は

それなりの値段で売れるらしい

倒したボスウルフの毛皮は特に重たい




「さ・・・ついたぞ・・・ここが、イズモ村だ」

簡単な木の壁に覆われたその村は

質素な雰囲気だ

しかし、活気に満ち溢れている

門には兵士達が鎧を着て

村を護っている


「まずは、お前の武器を買おうか・・・さっきの戦い方からすると

片手剣を二つもったほうがいいみたいだな」


繁華街をしばらく行くと

武器屋があった

剣や槍、それに弓や爪といった刃物が

何のためらいもなしに売られている


「いらっしゃい!!うちのは質素なものだが、日持ちは抜群だ!!」

今はそれほど金がない

さっきの毛皮は全部で1200ジムだった

この国の金の価値は良くわからない

しかし、一番安い片手剣が500ジムという値段から察するに

結構な値段なんだろう


残った金は200ジム

クルートが持っていた金を合わせると

2500ジムほどだ

宿と食料ぐらいは買えるらしい


「ここの、食材は鮮度がいいんだ」

クルートは、武器屋の反対側の店を指差した

結構な品揃えだ

色とりどりの野菜・・・しかない

「野菜は苦手なんだが・・・」

「じゃあ飯は抜きになるぞ?

安心しろ、私はこう見えても結構料理はできるほうだからな」


云うなり満面の笑みで店に向かった

「おばさん!これください!!」

そこには一人の少女が居た

決して贅沢とはいえない服を着ている

しかし、伸ばした髪や服が

とても華奢な雰囲気を出している


振り返った少女と目が合った

歳は自分とほぼ同じくらいだろうか


一瞬、少女の目がさっき買ったばかりの

剣に向けられた


少女は気を悪くしたように

目をそらし

立ち去っていった


「いらっしゃい」

「これを貰おうか」

食材屋という名の八百屋のおばさんが,クルートと会話している

「あの、さっきの娘はどうかしたんですか?」

クルートは買うだけ買うと、おばさんに尋ねた

「いやねぇ・・・あの子の親父さんは村の兵士だったんだよ

それが、何年か前にちょっとした賊がこの村を襲ってきてね

あの子の親父さんは一生懸命戦ったんだが

何分この村の装備じゃあ限界がある

しかし、応援はこなかったんだ

あの子の親父さんはこの村を護りきったが

その時の傷で逝っちまったんだよ・・・

その後も母親が倒れちまってねぇ・・・

一人で働いているんだよ」

悲しそうに、まるで肉親を心配するように話した

「ま、しかたないがそれ以来あの子は兵士嫌いになってね

一人で服屋をやってるよ

ここの値段は安くしとくから

あの子の店に立ち寄ってやってくれんかね?」

「ちょうど、服がほしかったところですよ

そうさせていただきます。

ところで、母親が倒れたのは

疲労ですかな?」

「いや・・・どうやら時間症候群タイムシンドロームらしいよ・・・」

それは、聞きなれない病名だった

クルートは腕いっぱいに荷物を抱えている

その半分を持ちながら聞いた

時間症候群タイムシンドロームってなんだ?」

「ん?・・・あぁ・・・世の中にはな、物質を構成する<原子>ってものがあるんだが

その原子も2種類ある

一つは人や石なんかを構成する<物理原子>

もう一つは魔術なんかを構成する<魔法粒子>だ

その魔法粒子の一つ<時間粒子タイムパーティクル>によって

発病する病気だ」

若干、云っていることが理解できなかった

まず、魔術がよくわからない



色々考えていると服屋についた

中はけっこう綺麗に掃除されていた

「いらっしゃいませ。

どんな服をおさがしでしょうか?」

少女は明るい口調で云った

しかし、こちらの姿を見ると

急に表情が変わる

「こいつの服を買いたいんだ

サイズはあるかな?」

「・・・・・えっ!?あっ!!!!はい!!」

何かを考えていたのだろう

上の空だった

この地域の服は

軽い生地のものが多いようだ


「ありがとうございました」

入ってきた時とは、あきらかにテンションが違った

「ところで・・・母方は元気でいらっしゃるかな?」

「・・・なぜ、あなたが母を?」

注意深く聞いてくる

「いや!風の噂でこちらのご婦人が、私の探していた方だと耳にしましてな

その方には昔世話になったもので、挨拶にとおもいましてな!」

「母は今、病にかかっていて奥で休んでいます」

「存じております

なぁに、まだ、その方だと決まったわけじゃない

少しお話を聞かせてくれるだけでいいのです」

「・・・・・・・わかりました・・・・でも・・」

「わかっております」

みなまで言わさず

クルートは答えた

少女は奥へ通してくれた

「あなたは、ここに居てください」

シェードを除いて



「あら?お客様かしら?」

弱弱しい声で女性は喋った

「ふむ・・・はじめまして

私はクルートと申します」

「はじめまして?

じゃあ、母はアナタが捜している方ではないのですね?」

「はい、そのようです。

しかし、なにやら思い病気のようですな」

「えぇ・・・」

女性は答えた

「私の病気は、どうやら治らない不治の病だそうなんです」

「奥様、この世に治らない病気はありませぬぞ?

我々は、その不治の病<時間症候群>をこの世から

なくすために旅をしています」

その言葉に少女は表情を変えた

「そぅですか・・・なぜ?そのような旅を?」

「はい、私は実はこの世界の住人ではありません

私の世界では、時間症候群を回避する

手段が発見されようとしています

そこで、私がこの世界に派遣されたのです」

「なにやら、それ以外にも

辛いものをお持ちのように見えますが」

「・・・・・」

「それ以上は聞かないことにします」

「いやはや・・・やはり、母親というものに嘘はできませんな」

「えぇ・・・・道中お気をつけて」

「ありがとうございます」

クルートが背を向けた

その時女性は起き上がり

「いつまでこちらにとどまっていられますか?」

「・・・3日といったところでしょうか・・・」

「そうですか・・・」










宿に着くと

クルートはなにやら、窓をのぞいている

「どうした?」

「いや・・・あの人は末恐ろしい方だ・・・」

笑いながら云う

ちょっと不気味だ

「何はなしてたんだよ?」

「ん?」

振り返らずに答える

「いや・・・世間話のつもり・・だったんだがな・・・本命を当てられてしまった・・・」

宿の主人達が食事を運んでくれる

ここの宿代は、2人で800ジムだ

完全に金が底をついた









その日の夜

突然鐘が鳴った

その音にたたき起こされ

外を見る

火がところどころについている

宿の中に騒々しい足音がなる


突如、扉が破壊され武装した男が剣を持って襲い掛かってきた

クルートは爪で弾き返し

男を無傷で捕らえる

「貴様らは何者だ?」

「あ・・・たのむ命だけは助けてくれ!!

俺達は、そこの山で陣を張ってる<キリリマス>っていう

ギルドのメンバーだ!!」

それだけ言わせると

平手打ちで失神させ

縄で腕を縛った

「あの子が心配だ・・・行くぞ」



外に出ると

いくつもの悲鳴と

建物が崩れる音が響き渡る

賊はいたるところから金品を盗み出していた

村の兵士は全員応戦状態にある


服屋の前に行くと

数人の賊が襲いかかってきた

「ここは私が受け持つ!お前はあの娘のところへ!!」

「わかった!!」





闇夜に怪しく光る刃を向け

男は少女に近づく

「譲ちゃん・・・おとなしく金目の物をよこしな」

「渡したら・・・ここから出て行ってくれますか?」

恐怖で泣きそうになるのを押さえ

精一杯に強がる

「ん〜・・・やっぱ・・・金目の物と錠ちゃんをもらっていくかな!!」

瞬間的に後ろから飛び蹴りをかました

「黙れ変体」

少女の前にでて剣を構える

「てんめ・・・クソガキがぁぁぁ!!!!!」

大げさなアクションで振りかぶる剣を

振り下ろす前に腹に剣の鞘を入れる

「ぐふぁああ!!」

男はその場にうずくまった

そこへ、後頭部にかかと落としで止めを刺す

男は、失神する

「あ・・・・あの・・・」

「母親は無事なのか?」

「え・・・あっ」

少女は奥へと走っていった

「!!!」

少女は絶句する

母親が金色に輝く粉に包まれている

「お母さん!!お母さん!!!」

泣きながら少女はたった一人の母親を呼んだ

しかし、母親は返事をしない

「あれが・・・時間症候群の症状だ」

クルートは、落ち着いた物腰で入ってきた

「時間症候群は、体内に異常な量の時間粒子が入ってくる

そして、もともと体内にある時間粒子と結合する

その後、時間と共に分解され

人が持つべき時間粒子も気化する

あの粉は時間粒子の気化したものだ」

「時間粒子がなくなるとどうなるんだよ?」

「寿命が尽きる」

静かに答えた

「そして、身体は原子レベルで分解され

肉体は気化する」

女性は見る見るうちに消えていく

少女は、ただただ母親を呼び続けた




夜が明けると賊は全て撤退していた

あの夜襲で何人もの命が奪われた


シェード達は少女が気がかりで

一晩中つきっきりでいた


「あの・・・助けてくれて・・・ありがとう」

「え?」

「まだ・・・云ってなかったから・・・」

少女は、疲れきった声でそういった

「でも・・・母親のは・・」

「それは・・・こうなることは、わかっていたから・・・」

少女はまた泣きそうになる

「あなた達・・・・時間症候群をなくすために旅をしているのよね?」

「へ??」

「あぁそうだ」

クルートは宿屋から荷物を取ってきていた

「私も、その旅に同行させてもらえない?」

「ああ・・・大歓迎だ」

荷物を半分持つ

「私はミリィ・ネット」

「オレはシェード・リリア・フォンド」

「私はクルート=アーヴェン=レイドだ

よろしく」

服屋の外に出る


朝日がまぶしすぎる

村は、あちこちが壊れている

「では行くぞ・・・次の目的地はヴァリスマリネリスを超えた先にある」


感想宜しくお願いしますm(__)m


時の流れる世界 地上世界アースグランド

全ての時間軸の中心がある世界

この世界を中心に時間はズレている


時間粒子

時間経過を司る原子

この時間粒子は全てのものに存在し

時間と共に気化する

この原子がなくなると寿命尽きる

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