エピソード16 鍛錬<虐殺?
シェードは新しく買った剣の手入れ中だった
「ん?やけに慎重にやっているな・・・どうかしたのか?」
クルートが紅茶を飲みながら聞いてきた
「え?あぁ、いや・・・最近さマトモに敵倒せてないだろ?」
「ふむ・・・確かに、カエルと犬とザコぐらいだな」
「あのルーンとか云うやつのニセモノはもちろんだけどさ、
なんか紋章が覚醒してからは、ケルビンすら倒せなかったろ?」
「まぁ、あれは倒せるものでもないがな・・・
それで?敗因の目星はついているのか?」
「・・・・最近・・・紋章に頼ってばかりで、全然剣を振ってないんだよな」
「なるほど」
「だから、ちょっと素振りでもしてフォームを調整してくるよ」
「精進はよし
剣を海に落とすなよ?」
「落とさねーよ!!」
シェードは調整器具を片付けると、外へ出た
「さて・・・・ミリィはどこいったかな・・・・」
クルートはしばらくして外にでた
「・・・・・・」
ライラがはじめて見る果ての無い地平線を眺めている
隣でミリィとセリアが野外席でくつろいでいる
「ライラはこういうの初めてなんだよね?」
「うん・・・ずっと・・・・あの部屋に居たから・・・」
「まったく!小さい女の子を閉じ込めるなんて、どいつの趣味だろうね?」
「ハックシュン!!」
「どうしたクライン?風邪か?」
「いや・・・」
「でも、閉じ込められてたから・・・・出会えた・・・」
「く〜!!その前向きな姿勢!お姉さん気に入った!!」
セリアが激しく頭を撫でた
ライラも嫌ではないらしい
「ところで・・・」
「ん?」
「どうして旅をしているの・・・?」
「あ〜確かに!あたしも聞いてなかったね!」
「え?ライラはともかく、セリアさん、知らずについてきたの?」
ミリィは呆れたように云った
「まぁまぁ、いいじゃない?っで、旅の理由は何?」
「えと・・・時間症候群って知ってる?
それをこの世から無くすために旅をしてるの」
「へ〜、そうだったんだ・・・」
「おーい!ミリィ居るか?」
クルートが下から呼んでいる
「はい?なんですか?クルートさん」
「いやちょっと来てくれないか?」
「はい?」
ミリィは云われるがままにクルートについていった
「どうしたの?」
「さぁ・・・」
鋼鉄の刃が空を斬る
灰色の線がいくつも描き出され
太陽の光で白い閃光が放たれる
「はっ!」
声を出して斬れば自ずと剣に力が入る
自分が剣の師匠に教わった最初のことばだ
「てやっ!」
風を斬る音だけが響く
「熱心にやってるじゃん」
「ん?ミリィ?
危ないから下がってろよ」
ミリィがシェードの前に出た
「・・・なに?」
「いや・・・ただ剣を振ってるだけじゃあ意味ないんじゃない?」
「そんなことねぇよ
・・・って、そう云うってことは何かあるな?」
「そそ♪
私の撃つ魔法矢を斬ってみない?
そうすれば一石二鳥でしょ?」
「ん〜・・・確かに・・・」
ミリィは弓を取り出した
「大丈夫、当たっても死なないように手加減してあげるから」
云うと、ミリィは矢を放った
青白い光の矢だ
「はっ!」
シェードは簡単に弾き返した
「へ!この程度か?」
「じゃあ本番ね・・・・♪」
瞬間的に何本もの矢が形成され、飛んできた
「うぇぁ!何!!」
飛んでくる無数の矢を無我夢中で弾く
「ハァハァ・・・こんの程度・・・余裕・・・!」
「じゃあLvUPね」
「待った!・・・ちょいタイム・・・」
シェードは肩で息をしている
しばらくして、呼吸が整ってきた
「よし、いいぜ・・・っておぉ!!!」
見ると、すでに何百という数の矢が形成されていた
「いいんだね?
連矢!!」
「ぎゃーーーー!!」
悲鳴は断末魔となって船内に響いた
「いてててて・・・」
「ふっ、鍛えられたようだな」
「いや、あれは虐殺だ・・・」
すでに外は夕日が見えている状態だった
「あれ?ミリィは?
船室を見渡したが
女性陣の姿がない
「ミリィならセリアとライラを呼びに行ったが・・・どうした?」
「いや・・・なんか、変な違和感が・・・」
「ふむ・・・」
「セリアさん?ライラ?」
「ん?どうしたの?」
昼間に居たデッキに二人はいた
結局一日中海を眺めていたようだ
「クルートさんが金網焼の準備するから
戻ってくれ・・・って」
「お!今日は豪勢だね
行こうかライラ」
「うん・・・」
ミリィが振り返り歩き出した
「きゃっ!」
突然、他の乗客の男とぶつかってしまった
「ご、ごめんなさい・・・」
「こちらこそ、申し訳けなかった」
手が差し出された
その手をとって助け起される
「怪我はありませんか?」
「えと・・・はい、大丈夫です」
「それはよかった」
見ると、どこかで会った様な感じがする
「あの・・・どこかでお会いしましたか?」
「さぁ、どうでしょうか?
私も旅をしている者でね
もしかしたら、どこかで会っているかもね
しかし、話をしたのは初めてだよ」
「そうですか・・・私、ミリィって云います
あなたは?」
「これはご丁寧に・・・
私はクーロン・ウルド・バンシャク
少し長いので他のものは短くして呼びますね
クロウ・・・・と」
ここで重要人物登場です
みなさん、このクーロン・ウルド・バンシャクの正体にはお気づきのはず(わからない方はエピソード15参照)
次回をお楽しみに
感想・評価お待ちしております