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◇はじかれちまった悲しみに

2013/08/05

 書きたい物を書くというのが、創作の基本で原点だと思っている。趣味で書いているというのならなおさらだ。

 だから、ここにある小説を読んで、その物語と波長が合わなかったからといって、それをとやかく感想欄に書くのはどうにも無粋に感じる。特にここの感想欄は、書き手へのメッセージという側面が強い。このサイト自体が書き手のためのシステムだから仕方がないとは思うけれど。

 決してつまらない訳ではなかったのだ。なめらかにつづられる文章は読みやすくて、20万文字以上の長さだけれど、読み飽きるということはなかった。個性的なキャラクターたちが、にぎやかに、時には真面目に繰り広げるストーリーは、波瀾万丈というわけではないけれど、単調ではない。つーか別チームのくせにF氏キャラ立ちすぎてっぞ。好きだけど。

 なのに物足りないと感じてしまうのは何故なのかと考えて、自分の感性に問題ありという結論に至ったのがなんとも。どうでもいいようなものなら記憶からさっさと打ち捨てればいいのだが、そうではないからおさまりが悪い。のめりこみきれなかったのが悔しいし、読者としての対象からはじかれてしまったような気がして寂しい。だから負け惜しみ? を書き連ねてみることにした。


 件の作品は、イコさんという方が書いていらっしゃる「アンダードッグ(Nコード:N3214V)」だ。資金面で解散の危機にあるサッカーのJ2クラブを立て直そうとする少女社長と、その周囲の面々の群像劇である。

 そもそも読もうと思ったのは、Jリーグサポーターの心理を知りたかったからだ。僕はスポーツ観戦にあまり興味がない。けれど、それを楽しむ人たちはたくさんいる。自分でプレイするわけでもないのに、何故そこまで熱中できるのだろうという疑問が常々あった。

 忌憚なく言うのなら、サッカーで前半後半合わせて90分、あるいはそれ以上の時間をかけるほどの魅力ある試合というのを、日本のチームがからんだ試合でほとんど見たことがない。だいたい10分以上もすると飽きる。体力温存とかいって走らないじゃないか。

 もともと見る数自体が少ないというのは確かにある。でも、少し前にやっていた、ドルトムントVSバイエルンの試合は見ていてとても面白かった。激しいせめぎ合いに、防御から一転攻勢に移った時の速度、駆け上がる追い縋る振り切る遮る回避してシュート! ──前半45分飽きることが無かった。だから、根本的にサッカーを楽しめない脳というわけではないはずなのだ。

 素人目には、あれがプロの領域なら、日本の場合はたとえ代表でもプロとは呼べないように映っている。J1にすら届かない、J2という場所ならなおさら。見たことがないけれど、きっと大したことがない、そんな先入観があるのは確かだ。だからスタジアムに行く気すら起きない。


 あと僕はどうも地元愛というものが薄いのか、地元チームだから応援するという心理がよく分からない。タイトルのunderdogは、負け犬とか勝ち目の薄い方という意味なのだけれど、僕は弱っちい主人公側よりも強い敵スキーだ。そこからしてアウトなんじゃないかという気はするんだが……いや、弱い奴が頑張って成長して最終的に勝利! というのが嫌いなわけじゃない。ダイの大冒険のダイもポップもとても良いキャラクターだ。でもあの話には、大魔王バーン様を筆頭にすごく沢山の魅力的なキャラクターがいるからこそ、今でも心に残る物語足り得てるんだろうと思う。


 話がずれた。戻そう。

 結論から言うと、僕の疑問は解消されなかった。作者さんがサッカーを好きなのはよく分かった。だから物語には、サッカーに対してマイナスから接する人は今のところ出てこない。主人公の美少女社長さんが一番ゼロに近いところからスタートしたけれど、サッカーはちょう面白いんだから、それに惹かれるハードルなんて無いよ! とばかりにするりと彼女はサッカーに対してなじんでしまう。

 僕としては、もう少し理由がほしかった。主人公の美少女社長は可愛くて理知的で仕事もできる女の子なんだ。そんな彼女が熱意を傾けるだけのものであると、ちょっと納得できないでいるものだからさ。これが一個目に引っかかっている点。熱心なサポーターの女の子──名前が拙作のキャラと同じなものだから実は勝手に親近感を覚えている──がいるのだけれど、その子がそこまで好きになった理由みたいなものでもあれば良かったのかな。贔屓チームがあるという人に、なにをきっかけにサポーターになったのか、あと生観戦の魅力とか、お聞きしてみたいよ。

 もう一つ、美少女社長のものわかりが良すぎるのが、共感を妨げている部分はあると思う。良い子だよ。でも一緒に悩ませてくれないんだ。一緒に仕事をする分には気持ちのいい相手だと思うのだけれど、ラブには向かない性格です。可愛いんだけど。あと8年もしたらとても素敵な女王様になってくれそうな気がするので、正直S君とくっつかなくても(ry)。

 そして三つ目は、謎の不足。地に足がついている物語のために、否応無くそこには「現実リアル」が見え隠れしていて、堅実なんだけれど、その分劇的でなくなってしまっているように思う。この物語はどうなってしまうのだろうという部分において、最終結末がなんとなく透けて見えてしまうんだ。

 以前に僕が考える面白さの三要素を挙げたけれど、僕自身の面白さの評価軸は、「未知」の部分に比重が大きい。だからファンタジーやSFなどの、現在ではない世界を描いた物語が好きだし、何をやらかしてくれるのかわからないキャラクターが出てくるものが好きだ。

 それを補うハードルになりそうな敵役が、今のところ出てきていないのが、ドラマとして少し弱く感じたところだ。


 かといって、僕は彼女の性格を変えてほしいと思わないし、劇的狙いでまさかの死亡エンドとかありえんしF氏が最後にかっさらっていく姿なんて見たくないし、フィジカルコーチには諦めてほしくないし、アウェイの女神には愛想尽かしてほしくないし、あんまり悪辣な奴に出てきてほしいとも思わないのだ。この物語はこれでいい。嫌な奴が出てこないお話が一般的に「弱い」と評されるとしても、書きたい物を最優先にしてほしいのだ。

 じゃあ何がしてほしいんだといったら──単純だ。このお話を読んだ人の感想が見たい。何をこの物語に期待しているのか、どんなところが好きなのか、僕の狭い了見ではできなかった、別の角度からの読み方を示してほしい。そういうのは理屈じゃないんだと言われるかもしれないけれど、僕の考えは違う。それは言葉で表現することを怠っているだけだろう。

 好きだということすら誰にも知られたくない、自分だけの宝物にしたい物語というのもあるだろうから、そこまで晒せとは言わないけれど、誰が何と言おうと君の感じた「面白い」は間違っていないんだからさ。


 先日お見かけした、はのじさんという方の「『ふりちりすべる』を読もう」(Nコード:N9072BD)はとても熱くて素敵なレビューだった。400字だけじゃ収まらない感情がガンガン伝わってきた。もっとこういうのが増えてくれるといいなと思うんだ。その他ジャンルはあまりにも雑多すぎるから、できればエッセイジャンルをちょっと拡張して、「エッセイ・評論」にしてもらえたらいいのになとちらっと思ってる。


 新たな見方を手に入れたら、僕は──僕たちはもっと面白いものに出会えると思う。それができるツールがインターネットだ。人間が作り出したうちで三番目にすばらしい道具だ。適切に使おうじゃないか。

 


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