パトロンになりたい
2012/11/08
これはある意味私信。だけど、読まれたいのか読まれたくないのか、正直に言って分からない。
ミザリーという小説がある。S・キング氏が書いた本だ。映画になったこともあるし、読んだことは無くても本の名前だけは知っている人も多いんじゃないだろうか。
まあ実は僕も初めのほうしか読んでいないのだけれど。
だってあれは怖い。すごい本なのは確かだ、引きずりこまれる。なんというか、僕はとてもチキンなので、心の準備をきちんとしないといけない話。そしてそうまでして読みたいわけではないから後回しになっている。
だから、知っている内容を一行で説明しようとすると、「完結した作品の続きが読みたい読者が作者を監禁しちゃいました」というところだろうか。
その読者、アニーという元看護士なのだけれど──僕は多分、彼女の同族だ。
続きを読みたい、完結していない物語がある。それが市販の物だったら、購入できる。売れたら、次の物語が読める確率が上がる。出版社に手紙を送れば、作者に届くかもしれない。生死程度は、分かるかもしれない。
Web小説だと、そうはいかない。ふらりと消えてしまったら、言葉を届ける術もない。多忙なのか、やる気を失ったのか、それとも──亡くなってしまったのか。それすら分からないままになってしまう。
でも、読みたい。物語の続きを書いてほしい。
そんな状態でその物語の作者に会ったら、拉致監禁してしまいたくなる気持ちは分からないでもない。閉じこめて、脅迫して、それで続きが読めるなら、そうしたくなる。
けれど僕は知っている。それでは、作者から言葉は生み出されない。強要は反発を生むだけだと。面白い物がほしいのに、そうでないものができてしまう。
だから、しない。
でも、時々思うんだ。僕はあなたのパトロンになりたい。仕事なんてしなくていい。ご飯作ったり掃除したり、そんなすべての雑務から解放したい。僕が代わりにやるから──不器用かつ無精だから上手にはできないのだけれど。考え込んでいるならあったかいお茶とちょっとしたおやつを用意する。見たい物があれば連れていく。吐き出したい思いがあるならそばで聞く。
だからどうか、続きを書いてほしい。生憎僕は可愛いメイドロボではないので、押し掛けてもご迷惑だろうから、しないけれど。
作品だけ書いていてほしいんだ。あなたの言葉はとても嬉しい。尊敬している人から優しい言葉をもらうのは本当に嬉しい。ファイルに落として、何度も読み返しているよ。でも僕のたわごとに付き合う必要なんて無い。その時間が惜しい。そんな時間があるなら、書いてほしい。
優しい読者のままでいたらよかった。書き手としての僕など知られたくなかった。あんなものを見せたくなかった。あなたが優しいと、僕はすがりついてしまう。
あなたが思っている以上にあなたの「作品」が好きだ。極論すれば、僕はあなたの才能にしか興味がなくて、あなた自身はその付属品の方に考えている輩だ。だから優しい言葉をもらう資格は無いんだ。
だからありがとうとなどと言わないでほしい。
その言葉が、とても、心苦しいです。