表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

次の予約

作者: ジェン・プル・ヨウ
掲載日:2026/08/12

「恋愛に正解があるなら、私はもう知っているはずだった」


私は32歳の女性。過去に何人かの男性とも付き合ったことはあるし、失恋も経験した。


だからこそ、もう恋そのものに夢を見るお年頃ではないのかもしれないとおのぼり発言をしたい。


却って「もう無理して恋愛しなくてもいいかな」と思い始めている。


そんなことを考えながら友人にぼやいてみるとマッチングアプリを勧められた。


このアプリ内なら対面することなく気兼ねなく話せるでしょ?と友人は言うのだから半ば強制的にスマホにインストされてしまった。


このまま友人の勧めを無碍にすることはできなかったので、少しだけ試してみてダメだったらそのままアプリを消してしまおう。


と、最初はやる気もなかったのだが、とある男性が私のプロフィールに反応してくれたので、初めてメッセージを送ってみた。


彼は25歳で、仕事もしていて、子供っぽさがあるタイプではない。年相応に恋愛経験もしているようだ。


そこから何気ない会話をチャット越しに重ねていく。


最初にプロフィールや趣味の話。映画、休日、仕事、食べ物--。


特別な会話は至ってなくて、何気ない日常会話を毎晩少しずつ続けていった。そして、次の休日で彼から


「会えませんか?」のメッセージが届いた。私は意を決して承諾するメッセージを送った。


初対面は近くにあるカフェ。着飾った彼が自己紹介をして、私も自己紹介をする。私が座るのを見て、彼も座り直した。


そこで初めてプロフィールにも書いた年齢を直接確認された。


「……32歳って、本当ですか?」


「それ、今言う?」


少し笑いながら会話が始まった。彼は7歳差をさほど気にしてないようで会話も結構弾んだ。


と、私は少し後ずさりしてしまった。


「25歳……か」


7歳差の数字ばかりを意識してしまう。それでも会話は楽しく、別れ際に彼から


「また会ってもいいですか?」


と言われ、私は少し迷い


「……うん」


とだけ答えた。


しばらく彼とのデートは続いた。


1度目は気軽に定食屋。彼が「こういう店でも大丈夫ですか?」と気遣ってくれた。「むしろ、こういうとこが好き」


と答えた。彼との価値観が徐々に合うのを感じる。


2度目は少しだけお高いレストランだった。彼は


「2回目くらいは、ちゃんとしたところにつれていきたくて」


その気遣いに面映ゆい気持ちが乗り私は少し照れながら舌鼓を打った。


3度目は互いの仕事が終わった帰り。予定していたお店が定休日だったのを知って、近くの適当に入ったお店。


予定外のお店に入っても彼となら楽しく感じられた。


ふと、そこで私は気付き始めた。


「私、この人といるときは年齢とか気にしてない」


いつの間にか、彼と会うことが楽しみになっているのだ。


しかし、楽しみが突然崩壊してしまった。


きっかけは、何気なく尋ねられた一言。


「将来、結婚とか考えます?」


目を少し伏せがちで逆に質問で返してしまった。


「……あなたは?」


「いつかはしたいです」


と彼は答える。私は少し微笑んで


「そう」


彼と別れて帰宅する。ふと考える。


彼にとっての「いつか」と、自分にとっての「いつか」は同じなのだろうか。


彼はまだ25歳。これから仕事も変わるかもしれない。住む場所も変わるかもしれない。


もっとたくさんの人と出会うかもしれない。そんな彼を私が


「この人の時間を、自分が縛ってしまうんじゃないか」


と考える。でも、実際には、彼は年齢差を理由にしていない。


こんなこと考えてる自分は最低だ。


何度目かの食事デート。これきりで終わらせたい。


「私たち、ここで終わりにしたほうがいいと思う」


彼はこう切り出した私に驚いている。


「どうして?」


年齢差を理由に彼に話を続ける。彼なら他に素敵な人に恵まれるだろう。私のような恋愛を諦めきったようなやつより。


そんな話をつらつらと話している時に彼は口を挟んだ。


「それって、僕が決めることじゃないですか?」


と返される。だから私も少し考えて。


「あなたはまだ25歳だよ。これからもっと--」


「これからのことを考えてるから、あなたと一緒にいたいんです」


語気を強めた彼がはっきりと言う。その時、初めて気づいた。


年齢差を理由にして逃げていたのは、自分だった。


納得した私と彼はお店を出る。


ふとスマホが目にはいる。画面にはあのマッチングアプリが残っている。私と彼をつないでくれたアプリ。


でも、もう画面の向こうに相手を探す必要はない。


スマホの画面を閉じる。


彼が尋ねる。


「次、いつ会います?」


少し考えて私から彼に切り出す。


「……次のお店、私が決めてもいい?」


「もちろん」


にこやかに彼が応えて互いに歩み始める。


あの日、画面の向こうにいた人は、もう画面の中にはいない。


今は、私の隣を歩いている。


次の予約は、まだ決まっていない。


だから私は、少しだけ楽しみにしている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ