表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/3

英雄の悩み事…?

※女性軽視的発言や、表現があります。御了承ください。


「とても残念だが、彼女は…セレーネは……アレは『()()()』だっ! それも正真正銘、(まご)うことなき生粋の『“()()()()”』(本当に動いてくれないマグ◯)だッ!!」




「お前が彼女を悪く言うなぁああああああああッッ!!!」




 今日一に…いや人生において過去一に、けたたましい咆哮を上げるヴィクター。


 この部屋はリオンハルトの手によって、特別製に出来ていて防音・耐衝魔法が施されている。

 もし施されていなければ今頃、その余りにも強い衝撃で屋敷全体が半壊し、屋敷中の使用人や既に就寝中であろうセレーネ達が飛び起きて来ただろう。


 それぐらいヴィクターの『残酷な(・・・)現実へ(・・・)の拒絶(・・・)』染みた怒号が轟いたのである。


 流石の『勇者(リオンハルト)』も『戦鬼(ヴィクター)』のその鬼気迫る迫力に目を見開いて驚くが、直ぐに普段の冷静(クール)な表情に戻す。


「おおっ…。その反応はやはり、お前も薄々感じていたんだなっ! 私だけの思い込みじゃなかったわけだ♪」


「違うッ!! 彼女は…セレーネは…最高で素敵で…。完璧で…俺の理想通りの……。──俺には勿体ない女性(ひと)なんだっ…。だから…だから……ッ!!」


 認めたくない“真実(・・)”から目を逸らす子供の様に頭を左右に振り、己に言い聞かせるか如く譫言を繰り返すヴィクター。

 そんな『憐れな英雄(ヴィクター)』に『残虐な悪魔(リオンハルト)』が容赦なく追撃を掛ける。


「ヴィクター…。気持ちは分かるぞっ! 心底惚れ込んだ最愛の恋人が、まさかの『アレ(・・)』だったんだからなっ! だがな、現実は受けとめるべきだぞっ! ──それに世の中、『理想通り(・・・・)の完璧な(・・・・)女性(・・)』なんて居るわけないんだ。どんな人物(ひと)にも、必ず一つや二つは欠点(・・)が存在する」


 奇跡的に英雄(ヴィクター)の絶叫にも耐えたグラス((ひび)は入っている)と(ボトル)を交互に見詰めて、再び飲みだすリオンハルト。


「無論、この【勇者(わたし)】にもだっ! 彼女は…【聖女(セレーネ)】は偶々(たまたま)それが『“アレ(・・)”』だったって言うだけだ。──まあ、お前にとってはそれが一番の『大問題(・・・)』なんだろうがなっ!」


「ううっ…。セレーネ…俺は…キミを……」


 絶望に打ち拉がれるヴィクターを余所に、気が付けばリオンハルトは(から)になった酒瓶を魔法で部屋の隅に置き、鼻歌混じりに二本目の(ボトル)を開けている。


「いやはや、ビックリしたぞっ! 最初は私への嫌がらせだと思っていたんだが…。『演技(フリ)でも良いから反応(リアクション)しろ。あと動け』って言ったら、真剣(ガチ)な表情で『演技(フリ)…? 動く…?』って聞き返された時は流石の私も度肝を抜いたぞっ! お前達は一体どんな『営み(プレイ)』を日頃しているんだ?」


 配慮(デリカシー)の欠片もない不躾な質問を、平然と投げ掛けるリオンハルト。

 ヴィクターはそれを息苦しそうに返す。


「お前…には……関係…ないっ……だろう…ッ!!」

「それもそうだな。──おっ! この酒もなかなか…♪」


 上機嫌に酒を嗜むリオンハルトを、とても怨めしそうに睨むヴィクター。

 実際、ヴィクターとセレーネの『男女の営み(・・・・・)』は少し…いや、かなり悩みがあった。

 セレーネ自身は気にしてないし、気付いてもいない。

 しかし、恋人(パートナー)のヴィクターは違った。


 最初の頃はセレーネと『結ばれた(・・・・)』嬉しさと幸福感で、全然なんとも思わなかった。

 けれどセレーネと回数を重ねる度に、その『異質で異様な違和感』にヴィクターは気付いてしまった…。


 一度気になりだしたら最後、もう頭から離れない───。


 それが先程からリオンハルトが発言・連呼している、『マグ◯』案件である。


 ヴィクターは恋人(セレーネ)行為(・・)に及ぶ時、細心の注意を払う。


 最高級の御人形(ビスクドール)を扱うように、繊細で直ぐに壊れてしまう飴細工に触れる感覚で、とても優しく(チカラ)の加減を間違えないように───。

 それぐらいヴィクターにとって彼女(セレーネ)は、大切で大事な存在だったから…。


 しかし、それがいけなかったのだろうか───。


 初めの頃は彼女(セレーネ)も、彼女なりに頑張ってくれている感が…努力が見て取れた。


 悪戦苦闘と四苦八苦を繰り返しながらも、どうにか試行錯誤を重ねて『(ヴィクター)を喜ばせてあげたい…。尽くしたいっ!』っていうのが滲み出ていて、確かに伝わってきた。


 けれど最近では全然動いてくれないし、反応も薄い(イマイチ)…。

 今では殆どヴィクターだけが頑張っている状況で、何より気になってしょうがない……一番の億劫で憂鬱な出来事は、彼女(セレーネ)の“行為中(・・・)の声(・・)”である───。





『ウー、ワー、イー、スゴイワヴィクター。アイシテルー』





 と、一切の感情が読み取れない上辺だけの『愛の囁き(・・・・)』が、ただ只管(ひたすら)に虚しく返ってくるだけなのである…。

(それも能面みたいな表情で…)


 これではまるで出来の悪い、音の鳴るだけの玩具…。

 粗悪品過ぎる(クレームレベルの)性処◯人形(ラブ◯ール)]───ゲフンゲフン。

 これなら〘(プロ)〙に“接待(サービス)”してもらう方が、まだマシ───

 ゴホンゴホンゴホン。


 それぐらい酷い有様なのである。


 正直。今迄セレーネに対して絶対的な『“不変の(・・・)()”』があったからこそ、例えどんなに萎え(・・)散らかして(・・・・・)もずっと抱き続けられたし、“昇天(・・)”も何とか出来てきたって感じだ。


 ───しかし、それもそろそろ限界が近い…。


 ヴィクターも、その不満をセレーネに何度もどうにかして伝えようとした。

 が、いざ本人を目の前にすると言葉が上手く出てこなくなり、どうしても口籠もってしまう。


 挙句の果てにセレーネ自身は、


「どうしたの、ヴィクター…? 具合でも悪いの? 何かあったら私に云ってね。私、貴方の為なら何でもするから…」


 と、憎らしくも愛らしいキョトン顔で首を傾げて、本気で心配して労ってくれるのである。

 そんな事を言われたら、彼女(セレーネ)に心底惚れ込んでいるヴィクターは、もう何も云えなくなってしまう───。



   『ああ…。色々と(きみ)の『“具合(・・)”』が悪いよっ!!』



 なんてとても残酷で失礼極まりない事を、例え口が裂けても絶対に言えなかった…。



 ここで一つ。

 (ヴィクター)が知らない真実(・・)を、彼女(セレーネ)の名誉の為に記述しておく。


 実はセレーネ的にはヴィクターとの“行為(・・)”はちゃんと『感じて(・・・)』いるのである。

快楽(・・)』に身を捩り悶え、全身全霊で最愛の男(ヴィクター)の『()』を受けとめて、想い焦がれながら反応し(こたえ)ているつもりなのだ。


 本人的には精一杯、溢れんばかりの愛と情熱を込めて、




『Oh, Yes! Oh, Yes!! Come on! Come on!!

  ……Ecstasyyyyyyyyy!!!!

My Darling!! I Love Youuuu!!』




    ──の状態なのである。


 ただ悲しいかな…。

 不運な事に…不幸な事に、第三者視点──。

 特に【最愛の恋人(ヴィクター)】目線ではそれが全く……これっぽっちも伝わっていないのである。(『ウウー、カナシイナー』)


 因みに余談だが、間男(リオンハルト)とシテいる時にはこの〘“奇声(・・)”〙すら発していない。

 なんなら最愛の彼(ヴィクター)の時と違って、更に恐怖すら覚える無の表情をしながら、無価値の物を見るような瞳で、冷徹に冷酷に見下していた。


超大大大好きな彼(ヴィクター)】だからこそ、有らん限りの想いの丈をぶつけて、善がり狂っていたのである。(本人(セレーネ)的には)


 万が一にもあり得ないが、今後もし他の誰かが…ヴィクター以外の人物がセレーネを抱いた場合、その人物はもっと恐ろしくて悲惨な目に遭うだろう……。



 ──そんな事とは露知らず、勇者(リオンハルト)戦鬼(ヴィクター)に向かって酒を呷りながら、尚も煽り続ける。


「私の語彙力(ボキャブラリー)の足りなさは認めるが、あれはマ◯ロって表現以外に難しいぞっ! 『不◯症』とはまた違う感じがするしなっ! ──私だから良かったが、他の者なら一生分の心の傷(トラウマ)を植え付けられて、二度と関わりたくないって心底思わせるぞ『“アレ(・・)”』はっ! アハハハハ♪」


「だから…お前が……彼女(セレーネ)を…悪く…言うなあ……ッ!!」


 目尻に薄っすらと涙を滲ませて、嗚咽混じりに親友を睨む英雄。

 今すぐ飛び掛かりたい衝動を無理矢理抑えて、どうにか己を落ち着かせる。


 (ヴィクター)が最愛の彼女(セレーネ)を侮辱されているのに、何故そこまで我慢するのかというと、目の前の【勇者(おとこ)】には色々と恩もあるし、まだ返しきれてない借り(・・)も沢山あるからだ。


 それに『親友(コイツ)はこういう奴だ』と理解しているし、何だかんだで結構付き合いが長いので、もう慣れた。


 勇者(リオンハルト)も、本気で聖女(セレーネ)を貶しているわけじゃない。

 ちゃんと評価もしているし、好感も持っている。

 勿論、信頼も信用もしている。

親友(ヴィクター)に寄せる程ではないが…)


 もし、最初から本当に本気で親友(リオンハルト)彼女(セレーネ)を貶す気なのであれば、もっとえげつない。


 リオンハルトは誰かを貶す・馬鹿にする・侮辱すると決めた時、一切の加減をしない。


口が(・・)悪い勇者(・・・・)】でも有名な公爵子息様(リオンハルト)


 別に罵詈雑言を浴びせるわけじゃなく、相手を言葉責めにしてイライラさせて、『向こう(・・・)から(・・)先に手(・・・)を出させる(・・・・・)』状況に上手く仕向けるのである。


 それぐらい口がとても達者なのだ。


 だからこれは親友(リオンハルト)なりの軽口…意思疎通(コミュニケーション)馴れ合い(スキンシップ)みたいなものなのだと、それが分かるからこそ(ヴィクター)は我慢出来るし、己を抑えられる。


 それに仮にもし、いま此処で【勇者】と【戦鬼】が本気で衝突すれ(ぶつかれ)ば、今度こそこの屋敷は全壊して使用人やセレーネ達にも、相当の被害がでるだろう。


 実際、過去に何度か些細な諍いから真剣(ガチ)喧嘩(やりあい)にまで発展して、【勇者(リオンハルト)】と【戦鬼(ヴィクター)】両方が瀕死の重体になる事も多々あった。

 その度にその後、ルインとセレーネにこっぴどく叱られ、アミュや周囲の者達に迷惑を掛け、酷く呆れられた程だ。


 ──だから今はどんなにイライラしようと、とにかく我慢するしかない…。


 そう自分に言い聞かせて、元凶の親友(じんぶつ)を睨むヴィクター。

 それを知ってか知らずか、リオンハルトは尚もおちゃらけ気味に話しを続ける。


「まあ、彼女(セレーネ)を擁護するわけじゃあないが、“アレ(・・)”はああなっても仕方ないと私は思うぞっ!」


「なに…? それは一体どう言う意味だ?」


 酒を酌みながら、微笑を浮かべる超絶美男子(リオンハルト)

 憎まれ口を叩くが、その動作は一つ一つがとても美しい。


「【女神の加護】を複数所持し、それを遺憾なく発揮出来る存在は極々稀だ。流石は国王から【奇跡の聖女】の称号を授かり、教会からお墨付きを貰う【稀代の聖女】様だ。この私から見ても、素直に賞賛に値する女傑(おんな)だよ…」


「そっ、そうか…。お前が言うなら間違いないんだろう…」


 頬を掻いて、自分が褒められたかの様に嬉しそうにするヴィクター。

 事実、(ヴィクター)は己が褒められるより、恋人(セレーネ)友人(ルイン)達。

 親しい者や仲間達が、称賛されたり評価されて認められる方が嬉しいのである。


 英雄(ヴィクター)とはそうゆう漢なのだ。


 特に愛する人(セレーネ)が絶讃されれば、デレ顔が止まらない有頂天になってしまう。

 そんなヴィクターにリオンハルトは、冷や水を浴びせるかの様に言葉を続ける。


「しかし、流石の聖女(セレーネ)も【女神の加護】を複数有している弊害が出ているようだ。私はそれが『アレ(・・)』だと踏んでいる」


「なに…? そうなのかっ!? だからセレーネは…」


「ああ、恐らくだがな…。じゃないと流石に『アレ(・・)』は酷すぎるだろうっ! ──『アレ(・・)』は…ホントに…ププッww」


「だからお前が彼女を悪く言うなぁあああああああッ!!」


 顔を伏せて、必死に笑いを堪える破廉恥漢(リオンハルト)


 傍若無人(リオンハルト)も“一応(・・)”、礼儀と言うのを(わきま)えているので、大親友の想い人をこれ以上貶しては…小馬鹿にしてはイケナイと思っているが、どうしても笑いが込み上げてきてしまう。


 それを見て、顔を真っ赤にしながら激昂するヴィクター。

 先程より更に目尻に涙を溜めている。


 リオンハルトは息を整えて軽く咳払いをした後、再び酒を飲みはじめて、会話を続けだす。

(いつの間にか、三本目の(ボトル)を開けていた…)


「しかしだなぁ…。あのサービス精神(・・・・・・)の無さ(・・・)は頂けないだろう? 私から言わせてもらえば、あれは怠慢や傲りだぞ! 聖女のクセに『“ご奉仕(・・・)”』すら知らんとは…。──彼女(アイツ)は人としては文字通り『聖人』なのだろう…。けどなっ! 『()』としては色々と足りない…残念だと深く私は考えるぞっ!」


「いや、だから───」


「まてっ! 最後まで言わせてくれッ!!」


 ナニカ(・・・)起爆装置(スイッチ)が入ったかのように、心友(ヴィクター)の言葉を遮ってまで、聖女(セレーネ)に対する不平不満を熱弁する勇者リオンハルト

 どこか恨み辛みの込もった、禍々しい怨念……呪詛にも聞こえてくる。


彼女(アレ)は心のどこかで、『貴重な“聖女(わたし)”を抱かせてやっているんだ。相手(そっち)が“聖女(わたし)”を悦ばせるのは同然では?』って絶対思っているぞっ! ──あの自惚れの、マ◯ロ女めッ!! 絶対にっ……絶対に許さんぞぉおおおおおおッッ!!!!」


「さっきからお前は一体、何を言っているんだっ!? とにかく一旦、落ち着けッ!!」


 何故か怒り心頭の深友(リオンハルト)を宥めるように、あやし落ち着かせるヴィクター。

 ちょっと癪に障る事を言われた気がするが、ヴィクターも彼女(セレーネ)に対して薄々思っていた事なので、ここは黙認する。


 真友(ヴィクター)に鎮められて、リオンハルトは肩で息をしながら、段々と冷静さを取り戻す。


「すまない…。少々酒に酔って、情緒不安定になってしまったようだ。もう大丈夫だ、ありがとう…」


「全く…。──お前は一体何なんだ? (ひと)の恋人を誑して…奪っておきながらっ!」


「奪ってはいないっ! 味見をしたんだ♪ ──まあ、味見(・・)から“毒味(・・)”に変わったんだがなっ!ww」


「コイツ…ッ!!」


 いつもの嫌味者(リオンハルト)に戻って、調子にノリはじめる。


『親しき仲にも礼儀あり』って言葉があるが、不躾者(リオンハルト)にそれを求めても仕方がないと分かっているので、挙げそうになった拳をどうにか下げるヴィクター。


(ホントにコイツは…ッ!! 親友(ダチ)じゃなかったら、今頃何回張り倒していたことかっ!!)


 と思いながらヴィクターは、いつの間にかリオンハルトが注いでくれた酒を漢らしく、一気に呑み干す。

 それを見たリオンハルトは「おおっ…!」と感嘆の声を出して、美しく口角を上げる。


「これでも私なりに、お前には色々と悪い事…酷い事をしたと思っているし、ちゃんと反省もしているつもりだ…。だから何か償いを…罪滅ぼしをと考えているっ! ──そこでだ。幾つかお前に提案があるっ!」


「げふっ…。──提案…? 何だそれは? 俺は別に……」


「良いから聞けっ! お前にとっても、決して悪い話ではないからなっ♪」


 そう言って、笑みを浮かべる勇者(リオンハルト)


 その笑みはいつもの『美しい笑み』とは違い、どこか妖艶さと官能的な雰囲気を纏った、とても妖しい微笑みだった。



 そして、その口から放たれた言葉は余りにも突拍子もなく、奇天烈過ぎた提案(コトバ)だった───。











「お詫びに私の幼馴染…。【ミルティ】をお前にやろう♪」










「──────は?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ