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週末の夕暮れ、薄暗い森の中を二人の少年が駆けていた。
「遅くなっちまったな。早く帰らねぇと寮監に殺されちまうぞ」
赤髪の少年が走りながらもう一人の少年を急かす。
「分かっているさ」
青髪の少年は余裕そうにそう答える。
「相変わらずムカつく野郎だな」
赤髪の少年は皮肉っぽく笑う。
とはいえ、彼らに残された時間は刻一刻と過ぎ去っていく。
ここは彼らの暮らす帝都アドミアからおよそ十キロ離れた森の中。週末に仕事として行なっている冒険者の任務の帰りの途中だった。
しかし、その依頼が想定より長引き彼らの住む寮の門限が迫っていた。
彼らの入った寮には恐ろしい寮監がいると有名だった。
一秒でも遅れでもすれば、それはそれは恐ろしい折檻が待っていた。
棒で打ち叩かれるのはまだ優しい方だった。
そんな恐ろしい寮監の下で育った生徒たちは統率の取れた優秀な者へと成長していった。
とはいえ、誰も拷問のような折檻をされたい者などいない。
優秀と言われる二人も同じ気持ちだ。
だからこそ、血相を変え疲労困憊の身体に鞭を打ち、間に合うよう全力で走っている。
「さすがにまずいぞ!」
赤髪の少年は沈み行く太陽を背に焦りを隠せなかった。
「ハハハ!そうだね〜!いっそのこと明日まで帰らないってのはどうだ!」
青髪の少年は楽しそうに頭のおかしいことを言う。
焦り過ぎて思考回路が変になってしまっているのかもしれない。
「テメェーはアホなのか!半殺しが全殺しになっちまうじゃねぇか!」
「それは傑作だね!ミカの血塗れの死体を見るのが楽しみだよ!」
「黙れ!クソイカれ野郎!テメェも漏れなくぶっ殺されるんだよ!」
「それはどうかな〜?僕は、公爵の嫡男だからねぇ~」
「テメェ、ズリぃぞ!貴族特権を使うんじゃねぇよ!」
「これが持つ者と持たざる者の差だよ」
「うぜぇ!」
「すまないね。でも仕方ないよ。これが世の常だからさ」
「ぜってぇ殺す!つか、今から殺す!」
二人はお互いを煽って棒のようになった足を動かす。
道なき道を最短距離で最悪のシナリオを回避するために。
しかし、二人にそこで想定外の出来事が起こった。
森をあと少しで抜けるかという所で彼らは出会った。
自分の運命を人生を変える――いや、狂わせる彼女に。