31 『醜悪な自分』
「……か、み…………」
「やめろォォーーーーーーッッ!!!」
「さ…………ま……」
叫んだあと、目をつぶった。
目の前でラキシアが殺される瞬間など、見たくなかったから。
「くそッ……なんでだよ……」
おもわず呟く。
だが、その呟きへの答えは誰も返してくれなかった。
「ラキ、シア……」
今度は少女の名前を呟く。
「ッッ」
そして、呟いた自分を呪った。
アサヒに、ラキシアの名前を口にする資格などない。
見殺しにしたからだ。
あれだけ良くしてくれた、心優しい少女を。
ぎりり……。
アサヒたちを守るようにそびえ立つ木の根を、強く強く握りしめた。
「…………ッ……」
アサヒが殺したようなものだ。
ラキシアは、アサヒたちを守るために戦って……そして死んだ。
自分がいなければ、きっと死なずにすんだはずだ。
……こんなことなら……トラックに轢かれたときに、おとなしく死んでいれば…………。
そうすれば、ラキシアも生きていられた。
こんな生きがいのないオッサンなんかよりも、ラキシアが生きていてくれた方が、きっと世の中のためになる。
……だってそうだろ? 見ず知らずの他人を助けてくれるような優しい少女よりも、何もできない役立たずの俺が…………。
「はは…………死ねよ、お前……」
口の中だけで呟く。
誰かに向けた言葉ではない。
ラキシアを殺した醜悪な自分への言葉だ。
おもわず乾いた笑いが出る。
「ほんと……とっとと死ん——」
「アサヒッ」
「ッッ!?」
不意に呼びかけられ、ガバッと声のした方を向く。
「…………カ、サネ……?」
カサネがこちらを見つめている。
その視線は、アサヒの醜いところを全て見透かすかのように真っ直ぐで……。
…………俺を、見ないで、くれ……。
どうしようもなく今の醜態を見られたくなくて、目を逸らしたかった。
でも、逸らせなかった……逸らしてはいけないと思ってしまった。
そして……
「ラキシアを助けるぞッ」
そんな情けないアサヒに、カサネは告げた。




