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この異世界転生はベタばかり  作者: 龍神慈樹
第一章

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30 『神として』




『かみさまといろんなおはなししたり、いろんなところへあそびにいったり、いっしょにごはんをたべたりしたいんです』


 声が聞こえる。


『こんにちは。またあそびにきました』


 雨粒のように降り注ぐ、たくさんの声。


『さいきん、新しいおりょうりにちょうせんしてるんです。今日はそれをおべんとうにいれてきました。おくちに合えばいいのですが』


 そのどれもが、カサネを想う声だった。


『こんにちは。お元気ですか? かみさま。今日はとてもひえますね。かぜをひかないように気をつけてくださいね』


『こんにちは。神様。今日はすごく暑いですね。ばてないように、しっかりと水分ほきゅうしてくださいね』


 カサネの体調を気遣う声もあれば……


『最近、こんなまほうを覚えたんです。これで、像の上のほうもそうじができます。今まで下のほうしかできなかったから』


『神様は、やっぱりすごいですね。私のケガを治してくれたみたいに、私もだれかのケガを治せるまほうを覚えたいんですが……なかなかうまくいかなくって』


『剣のうでがかなり上達したって、先生にほめられました。すごくうれしいですッ。やっぱり、体をうごかすのは楽しいですねッ』


 日々の出来事を語る声もあった。


『神様は、今何をされてますか? 寂しい思いはしていませんか?』


 ……ッッ……。


『お元気ですか? 風邪などは引いてませんか?』


 …………なぜ、じゃ……?


『いけないッ……私、質問ばっかりですね』


 ……なぜ……こんなにも、妾のことを…………。


『私、あのときの神様の顔…………は、思い出せないんですけど……』


 ……あのとき、待てと言われたのに…………待たなかったのに……。


『あのときの表情は、しっかりと覚えてて』


 …………なのに……。


『とても寂しそうに見えたんです』


 ……こんな、妾の、ことを……。


『だから、ひとりにしたくないなって、思っちゃいました』


 ……想って、くれるんじゃ……?


『少し強引かな?とは思ったんですが……でもやっぱり、ほっとけなくて』


 …………。


『神様がしてくれたみたいに、私も手を握ってあげられたらなって』


 ……ッッ……。


『あのとき、凄く嬉しかったから』


 …………ラキシ、ァ……。


『またお会いできるのを楽しみにしています。そして、そのときは…………え、えっと……』


 ……うぅぅ…………。


『そ、そのときはッ、お友だ…………い、いえ……こ、これは、会ったときに直接言いますねッ』


 ……らぎ、じぁぁ…………。


『また会いにきますね。神様』


 ぽたり。


『こんにちは。神様』


『今日はいい天気ですね』


 ぽたり。


『神様はお好きな食べ物はありますか?』


『もしまた会えたら、一緒にお弁当食べましょう』


 ぽたり。


 …………。


 カサネの頬から涙が伝って落ちていく。

 この言葉たちは、カサネの像に向けられた想い……祈りだ。

 きっと何年ものあいだ、ラキシアはカサネに会いにきていたのだろう。


 ……妾を……ひとりに、しないため、に……。


 また会えると信じて、ずっと話しかけてくれていたのだ。

 ラキシアの声が、言葉が、想いが、祈りが、カサネの心を満たしていく。


 ……わ、妾は……大馬鹿者じゃッ……。


 そして、同時に恥じた。


 ……ラキシアがこれほどまでに、妾を想ってくれていたというのに…………妾は、いったい何をしておるのじゃッ!!


 体が熱くなる。

 ギュッと握り拳を作った。


 ……ラキシアは妾たちを守るために戦いッ、そして傷ついておるのじゃッ! そんなラキシアを見殺しにすることなど、断じて許されぬッ!!


 カサネは見た。

 ()()()()()()()()

 そして、絶望した。

 また失うのかと。


 ……じゃが、違うッ!! まだ確定しておらんッ!!


 まだ救える。

 絶望するのはまだ早い。

 なぜなら……。


 ……妾は神じゃッ! ラキシアを必ず救うッ!! それこそがッ、神としての妾の使命じゃッ!!


「んんッ!」


 ゴシッ! ゴシッ! ゴシッ!


 乱暴に服の袖で涙を拭う。

 そして……


「アサヒッ」


 自分の眷属に呼びかける。


「…………カ、サネ……?」


 …………。


 こちらを見るアサヒの顔は、とてもひどい顔をしていた。

 絶望なのか、悲しみなのか。今にも泣き出しそうなその顔は、なんとも……。


 ……情けないのぅ……それで神の眷属が務まるのか?…………まぁ……。


 醜態を晒したのはカサネも同じ。


 ……お互い様じゃッ!!


 アサヒの顔を真っ直ぐに見つめる。


 ……神としてッ、妾がお主らを導くッ!!


「ラキシアを助けるぞッ」


 そして告げた。




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