表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この異世界転生はベタばかり  作者: 龍神慈樹
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/33

29 『声』




 目を閉じてしまいたかった。耳を塞いでしまいたかった。

 何も見たくない。何も聞きたくない。

 いや……いっそのこと自分の目を抉り、耳を潰して、何も見ることも聞くこともできないようになってしまいたかった。


「いやじゃ……」


 そんな簡単なことすらできないまま、ただ見ていることしかできなかった。


「もう、いやじゃ……」


 おもわず声が漏れる。

 こんなことなら、何もしなければよかった。何も望まなければよかった。おとなしく消えてしまえばよかった。

 人間と、関わろうとしなければよかった。

 誰かに、そばにいてほしいと……ひとりぼっちは嫌だと、思わなければ……。


「……か…………」


 目の前で、心優しき娘が魔物に喰われようとしている。


 ……なぜじゃ……。


 なぜ、こんな仕打ちを受けねばならないのか。

 あの娘……ラキシアは、なんの罪も犯していない。

 むしろ、カサネたちにあれほどまでに良くしてくれた心優しき娘なのだ。

 こんな仕打ちを受けていいはずがない。

 それなのに……。


「らきしぁ…………」


 何もできないまま、見ていることしかできない。

 

「……か、み…………」


 魔物がその口を閉じようとしている。

 そして、ラキシアは死ぬ。

 また、自分の目の前から命が失われる。

 カサネに友達になろうと言ってきた、ラキシアの命が……。


 ……奪わないでくれ……もう、妾から、なにも……うばわないでくれッ……。


「らきしあぁぁーーーーーッッ!!!」

 

「さ…………ま……」


『こんにちは、かみさま』


「えっ」


 おもわず間の抜けた声が出る。

 誰かに呼ばれた気がして……。


『おげんきですか?』


「ッッ!?」


 ……な、なん、じゃ……?


『きょうはおべんとうをもってきたんです。いっしょにたべませんか?』


 心に言葉が響いてくる。


 ……こ、れは…………ラキシアの、声……? じゃ、じゃが……。


 さっきまで聞いていた声とは、少し違う。

 まるで幼い少女のような……。


 ……まさかッ!!


『わたし、かみさまとなかよしになりたいんです』


 その声は、カサネと仲良くなりたいと願う、とても優しい声だった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ