28 『いま、あいにいきます』
「…………」
少女が静かに森を見つめている。
今日は朝早くに家を出てきた。
この前と違って、姉と先生には出かけてくるとちゃんと伝えてある。なので、今回は二人に心配をかけることはないはずだ。
まぁ、森に入ることは伝えてはいないけれど……。
……おねえちゃん、ごめんなさい。
心の中で姉に謝る。
森の中は危険だと、姉に言われていたのだが……。
……もどってきたら、おねえちゃんのだいこうぶつをつくりますね。
そう心に誓った。
「…………」
カチャ。
腰に下げている剣の柄に触れる。
乾いた金属音が、やけに心地よく響いた。
「あとは……」
そして、肩にかけているカバンにも触れる。
カバンの中身は、少し多めに作ったお弁当だ。
森で迷子になったときに、お腹が空いて困ったことを思い出す。
……でも、おべんとうがあればだいじょうぶですッ! それに……。
このお弁当は早起きをして、頑張って作った。美味しくできたと思う。
そして、神様とまた会って、今度は一緒にお弁当を食べる。
これで、神様とは仲良しだ。
「…………」
不安があるとすれば……。
……かみさまのだいこうぶつがわかればよかったのですが……。
「……ッッ」
ブンブンブン。
一瞬、神様に食べてもらえなかったらどうしようと嫌な想像をしてしまうが、音を立てながら頭を振って掻き消す。
今日は、みんなが好きそうなものをお弁当に詰めてきた。
なので、大好物じゃなかったとしても、大嫌いということはないはず。
……だから、だいじょうぶですッ…………き、きっと……。
「…………」
お弁当が入ったカバンから視線を逸らし、もう一度森を見る。
今度は迷わないように、ちゃんと目印を付けていこうと思う。
そうすれば、きっと大丈夫だ。
「すっ、ふぅーー」
息を吸って、ゆっくりと吐く。
いろいろ不安はあるけれど、きっとなんとかなる。
道に迷わないようにするための方法も、魔物が出てきたときの対処も、神様と会ったらどんな話をするかも、しっかりと考えてきた。
「よしッ」
だから、もう大丈夫。
「いま、あいにいきますね。かみさま」
少女は森に入っていく。
木々を吹き抜ける風が、なんだか心地よく感じた。




