23 『神様はすごい人』
誰から聞いたかは覚えてないけど、この森のどこかに神様の姿をかたどった像があると聞いたことがある。
目の前にある像がそれだと少女は思った。
「あ、あのぉ……??」
女の子は何も答えない。
そのかわり……。
「えっ!? なな、なんですかッ!?」
手が伸びてきて、少女の胸のあたりをそっと触れてきた。
びっくりして声を上げる。
「あ、あのッ…………ぇ……」
……なにか……ながれて、くる……??
女の子の手から、ほんのりと温かいものが流れてくる気がした。
全身がポカポカする。少しだけ、頬と腕と膝がくすぐったい。
「あっ……」
女の子の手が離れていき、おもわず声が漏れた。
胸の奥がキュッとなる。
少女は無意識に腕を抱いて……
「あ、あれ?」
咄嗟にぺたぺたと腕と頬を触る。
…………い、いたく、ない……??
さっきまでヒリヒリしていたのに、何も感じない。
……もしかしてッ……。
少女は膝下まであるスカートの裾を掴んで、少しだけ捲り上げる。
「ッ!?」
息を呑んだ。
血が出ていると思っていた膝には、傷ひとつない。
少女はガバッと顔を上げて、問いかける。
「な、なおしてくれたんですか!?」
目の前の女の子は、こちらを見つめたまま何も答えない。
それでも少女は話しかける。
「あ、ありがとうございますッ!」
人に良くしてもらったときは、ちゃんとお礼を言うようにと先生に教わっているからだ。
「もうッ、ぜんぜんいたくないですッ!」
……やっぱりッ、このこはかみさまなんだッ! だって、かいふくまほうをこんなにじょうずにッ!
少女は驚きと同時に興奮した。
人を癒す回復魔法はとても難しいと聞いたことがある。一緒に暮らしている先生も、使えるようになるまでかなりの時間がかかったと言っていた。
……それなのに、わたしとおなじくらいのこがつかえるなんて、すごいッ! このこはぜったいにかみさまですッ!
神様はすごい人。
世界を作ったり、人を導いたり、いろんなことができたり。……人を導くっていうのが、いまいちよくわからないけど、とにかくすごい人。
「あのッ、えっと——…………」
そんなすごい人と、いろんな話がしたい。
その思いを抑えられずにどんどん話しかけようとして、おもわず言葉を止めた。
目の前の女の子が、小首を傾げたからだ。
『どうしてこんな遅い時間に、こんな所にいるの?』
そう聞かれた気がした。
「ぁ…………」
ここに来た理由を思い出して、少女の目から涙が溢れる。
目の前の女の子……神様が、困った顔をした気がした。




