17 『見た』
カサネは、ラキシアの言葉が心の底から嬉しかった。今にも泣き出してしまいそうなくらいに。……もちろん、神としての威厳があるので、そんなことは絶対にしないのだが。
「カサネちゃん、私と、その……お友達に、なりませんか?」
言葉に詰まってしまう。
嬉しい、凄く嬉しいのだ。
だが、こういうときになんと答えればいいのか、カサネにはさっぱりわからない。
そうこうしていると、アサヒが背中を押してきた。
ここは神としてビシッと言わなくては。
神の威厳を保ちつつ、堂々と……。
「本当ですか!?」
……よ、よし! これでバッチリじゃ!
カサネの言葉を聞いて、ラキシアは満面の笑顔になる。
「よろしくお願いします! カサネちゃん!」
少し……ほんの少〜し小恥ずかしくて、なおかつ口にすると神の威厳が損なわれるので、心の底から喜んでるなどと、絶対に!誰にも!言うわけにはいかないが……。
カサネに初めての『友達』ができた。
そのことが本当に嬉しい。
そして、心がすごく温かくなった。
……それにしても、因果なものじゃのぅ。
まさか、以前に助けた相手がこうして目の前に現れて、初めての友達になるとは……カサネにはまったく想像できなかったことだ。
……『運命』とは、神にもわからぬものなのじゃな。
そんなことを考えていると、ラキシアがカサネの頭を撫でようと笑顔で手を伸ばしてくる。
最初は、何を子供扱いを!と思ったが、意外と頭を撫でられるのは心地良くて悪くなかった。
なので、ラキシアが望むのであれば……ほんのちょっとだけなら撫でるのを許可してやってもいいかもと考え……。
どろり。
体中にまとわりつくような嫌な気配を感じた。
まるで、どろっとした粘性の液体の中に飛び込んだような嫌悪感。
………………。
目の前の時間が酷くゆっくりに思えた。
「ふふ。私、凄く嬉しいです!」
そして、カサネは見た。
……ぇ…………。
ラキシアの手が真っ赤に染まっていた。
「カサネちゃんみたいな」
あれほどまでに美しかった撫子色の髪は血や泥で汚れ、目は生気がないかわりに目と鼻と口から血が滴っていた。
「可愛らしい女の子と」
体はもっと酷かった。
服はボロボロに裂け、手を伸ばしていない方の腕は本来ではありえない方向に曲がり、胴体はへちゃげて骨が何本か体から突き出し、下半身は大量の血で赤一色だった。
「お友達になれ……」
そんな状態なのに、手を伸ばしながら明るい声で話しかけてくるラキシアに、カサネはおもわず恐怖した。
「ひっ!!?」
ドンッ!!
そして、ラキシアを突き飛ばしていた。




