16 『宙を舞う』
「えっ」
まったく想像もできなかったカサネの行動に、アサヒは気の抜けた声が出た。
それはラキシアも同じらしく、尻餅をついたまま呆然としている。
そして、徐々に頭が冷静さを取り戻していき、アサヒはラキシアに駆け寄る。
「ラ、ラキシア! 大丈夫か!?」
「え、えぇ……わ、私は、大丈夫……です」
「おい、カサネ! なんてことするんだよッ!?…………ッ!?」
「カ、カサネちゃん……ごめんなさい。やっぱり、嫌……でしたか?…………ッ!?」
アサヒは振り返りながら怒鳴り。
ラキシアはカサネに拒絶されたと思ったのか、俯きながら悲しそうな声で問いかける。
そして、カサネの顔を見る。
二人は絶句した。
「な……なぜ、じゃ……? らき、しあ……なぜ? なんで? どうして?」
まるでこの世の終わりのような絶望した顔で、うわごとのように呟いていた。
足元はおぼつかず、ふらふらと体を揺らしながら少しづつ少しずつラキシアに近づこうとしている。
かと思えば、ラキシアの方に伸ばしていた両手を震えながらおもむろに頭へ……。
「……ぃ、ぃやじゃ…………」
何かに取り憑かれたかのように頭を抱え、首を横に振りながら叫んだ。
「いやじゃ……いやじゃ、いやじゃいやじゃいやじゃいやじゃ! らきしあッ!!」
「「!!?」」
何の前触れもなかった、カサネの狂気に満ちた行動。
……い、いったい、何が……!?
アサヒはいきなり豹変したカサネを、ただただ怖いと思った。
「「…………」」
アサヒは立ち尽くし、ラキシアは尻餅をついたまま。
二人して叫び続けるカサネを呆然と見つめていた。
そして……
「ッ!? あぶないッ!!」
ドンッ!!
「がっ!!?」
「ッッ!!?」
ドサッ!
「「うぐッ!?」」
ラキシアは尻餅をついた状態から飛び上がり、アサヒを思いっきり突き飛ばす。その衝撃で、体内の空気が全て押し出されたかのような錯覚をした。
そのまま近くにいたカサネにぶつかり二人して横倒しになる。
「な、にがッ!? ぁ、え……??」
おもわず間の抜けた声が出た。
それは、理由もわからずにラキシアに突き飛ばされたからでも、受け身も取れずにカサネごと地面に激突した痛みからでもない。
アサヒは見てしまったのだ。
まるで、子供が小さな人形のおもちゃを乱暴に手で払いのけるかのように、巨大な何かがラキシアにぶつかり、そして、その体が宙を舞ったところを。




