表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

プロローグ 『叫び』




 一人の()()が歩いている。

 辺りは緑一色。地面はデコボコで歩きにくい。そして、人の気配もない。……当然だ。今、少年が歩いている場所は森の中なのだから。


「ぅ、うぅ…………」


 歩き始めて、どれくらいの時間が経過しただろうか。森から出ることを目的に休憩も取らずに歩き続けているのだが、一向に出られる気配がない。少年の心を焦りの感情が支配していく。


「……く…………ぅ……」


「…………」


 幸い、息切れや疲労感などはほとんどない。そのおかげで、こうやって歩き続けることができる。あとは……


「……う、うぅ……」


「大丈夫か!?」


 背中におぶっている()()()()()()()()を助けることができれば。

 苦しそうな息づかいが聞こえてくる。少年は背中に向かって呼びかけた。返事はすぐに返ってきた。


「……すまん」


「…………」


 今にも消え入りそうな声。よっぽど苦しいのか、話す言葉は途切れ途切れで、全部を聞き取ることができなかった。


「……苦労を、かけて…………」


「……ッ!!」


 少年は大声で背中に話しかける。もはや、叫んでると言い換えてもいい。その大声に対して、背中から聞こえてくる声の大きさはあまりにも小さい。

 そして……。


「あっ!?」


 少年の首元に回していた両腕がダラリと下にたれる。そのせいでバランスを崩し、危うく背中から落としそうになった。急いで体を支えて、近くにある木の根元に寝かせる。……苦しそうな表情を浮かべていた。


「俺の声が聞こえるか!?」


「うぅ……く、苦しぃ…………」


 少年は咄嗟に手を握り声をかけ続ける。気休めだとわかっていても、そうすることしかできなかった。


「…………」


「おいッ! 返事しろよッ!」


 少年の声だけが森の中で響く。


「…………ぁ…………あれは…………」


 そのとき、目の前の木が目に入った。


「嘘、だろ……」


 見覚えのある木……少年たちは同じ場所に戻ってきていた。


「はっ…………」


 目の前の木がこちらを嘲笑ってるように思えた。少年は体から力が抜けたように息を吐き、恨み言のように呟く。


「ふざけんな……ふざけんなッ……」


 目の前には今にも死んでしまいそうに浅い呼吸を繰り返す少女。

 今からこの森を抜けるのも、この子を助けるのも無理だと、そう思った。


「ふざけんなーーーッッ!!!」


 少年は叫んだ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ