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「涼香……!」


「陸さん、大丈夫ですか?」


 僕はティファに体を揺さぶられて目を覚ました。


 これは現実の目覚めであると、鮮明な視界を見てわかった。そんな中、ティファは酷く心配そうに僕の顔を見つめていた。


「そんなに焦ってどうしたの?」


 ぼさぼさの頭を掻いて欠伸をしながら言った。


「すごくうなされていましたので。それに……」


 ティファは僕だけを見つめている。この目つきは真剣だ。


「それに?」


「……名前を呼んでいましたね……」


 ワントーン下げてティファは言う。


「名前?」


「はい、涼香――と」


 寝ている間、僕は「涼香」と寝言を言っていたようだ。だが、ティファには関係のない事だろうし、僕は話を逸らそうとした。


「ああ、それは気にしないでくれ」


 だが、ティファは、


「いいえ、それについてなんですけど……、私には謝らなければならないことがあります」


 と、真剣な面付きで言った。


「謝る?」


 悪い事なんてしていないと思うが、ティファは何に謝ることがあるっていうんだ?


 僕はティファをじっと見つめる。


 すると、ティファはその視線を避けるように俯いてしまった。


「本当にすみません」


「待ってくれ、急に謝られても訳が分からないよ。一体どうして謝るのさ」


 僕は謝る理由を聞いた。


「隠していたんです。涼香の存在を。思い出したのはロックが解除された時でした。それに、例の本を読んで更に気付いたのです。けれども、愚かながら陸さんをコントロールでもしようとしたのか、涼香の存在を伝えることをためらっていました。それも、陸さんの隣に私なんかがいるべきではないのは承知の上でした。その謎の感情の末が読めなくなり、私は隠すのをやめ伝えることを決心しました。本当に、おかしいとはわかっています。こんなアンドロイド如きがそんな感情を抱いてしまっていること、涼香の存在を危うくしてしまっていることを私は本当に申し訳ないと思っています」


 ティファの言葉に僕は混乱した。


 ティファは涼香の存在を知っていたというのか?それならもっと早く知りたかったところだ。今までどうして言ってくれなかったのだろう。


「そもそも、どうしてティファが涼香のことを知っているのさ。やっぱり見た目がそっくりっていうのもあるし、実際に何か関係があったりするの?」


 僕の言葉でティファは再び言葉を詰まらせた。


「……それは……」


「それは?」


 畳みかけるように聞く僕。


「……やっぱり言いづらいです。でも本当にすみません……、すみません」


 ティファはまた謝りだした。


「謝って誤魔化されても困るなぁ。正直に言ってくれないと何も進まない気がしてならない。これまでの調査を放棄しかねなくなるかもしれないし、隠さず話してくれないか」


 僕の言い方は少しきつかったかもしれないが、そうでもしないとティファはずっと悩んで話してくれなかったはずだ。


 ティファはようやく話してくれるようで、


「……わかりました、話します」


 と静かに言ってくれた。



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