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 冷や汗と共にハッと目を覚ました。


「大丈夫ですか?」


 直ぐに駆けつけて僕を心配そうに覗き込む涼香の影が見える。


 その影の既視感に安心して僕は思わず声を上げて泣きそうになった。


「具合が悪いのですか」


 だが、アンドロイド特有の機械的な台詞を聞いて僕はそこにいる影が涼香でなくアンドロイドのティファであることにようやく気が付いた。


「夢を見ていたようだ」


 僕はまだぼうっとしていた。


「どんな夢だったのですか?」


 ティファの質問に僕は、


「苦しいほど切ない夢だった」と答えた。


「顔も青ざめていますし、まだもう少し眠りますか?」


 僕は置かれた時計を確認する。十五時を回っていた。


「いや、大丈夫。もう起きるから」


 言いながら、布団を整えて落ち着きを取り戻していく。


 少しだけ一人になろうと僕は喫煙室へ逃げた。


喫煙室に籠り考え込んでいると、僕は夢の中で涼香が言っていた貴重な台詞を思い出した。




 ――私の瞳が潤むのは、限りなく切ない愛の証……。




 涼香の言った抽象的すぎる台詞が僕は気になって仕方がなかった。


 よく考えると、ティファも似たような台詞を言っていたなぁ……。




 ――涙は時に、心が話せない言葉となり……。




 二人は思考まで似ているというのだろうか。暫く二人の台詞について考えていると、僕は小鳩老人を思い出して、咄嗟に一本電話を入れてみることにした。


 四コールで小鳩老人は電話に出てくれた。


「今夜空いてます? ええと、少しお話を聞きたくて……ええ、それじゃあホテルのバーの右から三番目と四番目のカウンター席を二十一時から空けておきますので、よろしくお願いします」


 僕は今夜、小鳩老人と会う約束をして、再びタバコを吸い、気分を落ち着かせようとした。然し、僕の頭の中は涼香とティファの謎の台詞がどういった内容を示すのかが気になって仕方がなかった。



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