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夕涼み
さらさらと小川が流れる川べりで、浴衣を着て夕涼みする。団扇であおげば、近づいてきた小さな羽虫が吹き飛ばされる。
吸血鬼の血を吸う蚊はしぬにしねなくて、蜜も飲めずにかわいそう。だから私が対応してあげようね。
「また天狗になってる」
隣で友達が飲み物をあおりながら言う。天狗だよ、偉そうなせいでそうなった。応えながら、羽虫をあの世に送ってあげる。
「あれ、可愛かったのに」
友達は優しく呟く。自分を慕う蚊を怪物に変えるくせに。
吸血鬼の気まぐれで不死に固定される蚊も哀れでしょう。
そよさやと小川の上を風が渡る。
あるかなしかの声が聞こえてきて、それらは夕涼みの者達の気まぐれをおそれていた。