匠さんの領土
次は匠さんの領土へ行くために塔から出発塔の門の場所を南として考えると所謂東側(ちゃんとした方角は知らないけど擬似的に分かりやすく例えた、先程まで開拓していた場所はこの言い方にすると北側になる)の街を抜けた先の森を突っ切る必要があるので、先程と同じように道を作りながら進んで行く、その作業中で何人かの人とすれ違う、結構往来があるみたい
「彼らは塔へ稼ぎに行っている人達です、やはり生活の中心は塔なのです」
「匠さんはすごく良い領主さんなんですね、会う人の殆どが匠さんに挨拶していきますよ?」
「領主は創造神様の言いつけ通り、しっかりと領民に施し、仕事の斡旋、雇用をしていますからね、私が特別に良い領主という訳では無いですよ」
「え?でも門の反対側の街は?」
「あれは、但の怠け者です、施し分で満足してしまい働かない、動かない問題児です」
「なんで働かないのですか?」
「スキルが不遇でやる気ないとか、生きるのがしんどいとか、言ってるらしいです」
それ、ニート…こちらにもいるんだ
「ところであっちに村っぽい所がありますよ?」
塔中心付近の街と同じ石で出来た家が十数軒集まっていた
「あれが私の領民達が住む村ですよ」
そう言うわけでその村まで道を作って行った
「これはこれは領主様、ご機嫌麗しゅう、今日は如何致しましたでしょうか?このような所まで」
村の代表者っぽい人が匠さんに話し掛けて来た
「ご機嫌よう、今日は開拓の下見にきたよ」
「『かいたく』ですか?」
開拓を理解してなさそうな反応をしている、王様と同じだ
「そうだ村長、少し話が変わるが、ここに来るまでに塔までの道を作ったんだ、今度からみんな利用してくれ」
寧ろ土を踏み固めて欲しいからじゃんじゃ利用して欲しい
「先程から何か音がしているなと思っておりましたが、道を作っていたのですか、それは有難い」
「開拓についてだが、ここで農作をしようと思っていましてな」
「『のうさく』とはなんですか?」
「米や麦野菜などを育てて増やす事ですよ」
「ええ!?増えるのですか?」
これ以降は王様と話した時と同じような反応が返ってくる
塔が当たり前で生きてきた人ならこの反応は仕方ないかな、そういうわけで田んぼ予定地の開墾準備、木を切り根を焼き玄武に土壌の確認もして貰う平らな辺り一帯を手当たり次第やっていく、合計で1町分ほどになった、匠さんの土地は高低差があまり無くやりやすかった、そして水源の川はすぐ傍にある、ここなら簡単に開墾出来ると思う
「後は区画整理だけですから、リアに頼まないといけませんな、そうだ、揖保川さん味噌醤油桶用の木が欲しいので、ここに先程から回収していた木を何本か置いて貰えませんか?」
匠さんが村の端の石畳の上を指定する
「分かりました、置きますね」
ズシンズシン、置けるだけ置いてみた
「あ、白虎、枝を切ってね」
「分かりました」
スパンスパンスパン、この枝どうしようかな、一旦アイテムボックスに入れておこう邪魔だし
「桶作りで問題なのが竹が無い事なんですよね~」
匠さんが渋い顔で悩んでいる
「竹ですか?」
「はい、桶を縛り付けるのに要るんです」
どうやら桶の外に縛っているのは竹で出来ているらしい
『竹なら、40から50階層の間で手に入りますよ』
創造神様が良いことを教えてくれる
「匠さん、塔はまだまだ上がありますから竹だってあるかもしれませんよ?」
「確かにそうですね、早く見付かって欲しいです」
創造神様が宝箱を置いたらしいし竹があるし、早く塔のダンジョン攻略しないとね、開拓もあるし、騎士の成長も待たないと駄目だし、あ~どうしよう、先に何をするべきか…
私としては後先考えず早く500階層に行って、お父さんに会いたい
「もしもの時は縄で代用するべきか、まぁ、木の水気を飛ばす為、すぐに造れる訳では無いのですけどね」
あれ?そこまで竹は急ぎではない?
「あら、それならば、私が水気を吸い取れますよ?」
青龍が簡単な事の様に言う
「それは素晴らしいですな、もしもの時は宜しくお願いいたします」
「はい、承りました」
やっぱり竹は早く手に入れてきた方が良いかも